第10話:研究所
クロハはあの後、白衣の男の荷馬車に乗せられて、レオナと行くはずであったアズラ王国に来ていた。
アズラ王国の南西に位置するロナール伯爵領。その一部のディプロという町の外れに、民家より少し大きめの白い建物があった。オークションから数日の時を経て、クロハを乗せた馬車はそこで止まり、彼女は白衣の男に連れられてその建物へと入っていく。
建物内の内装は目に見える範囲では普通の家のように見える、しかし薬品のような臭いが部屋中に充満しており、明らかに普通の家ではないとクロハは感じていた。
(まあ……もうどうでも良いけど)
レオナを失った日、天賦によって狂うことはなかったクロハだが、彼女は気力を失い、現状に対して諦めていた。
「ここは私の住む家であると同時に研究所でもあるのですよ……あ、そうですね私のことは博士と呼んでください」
白衣の男、博士と名乗る男はそうクロハに微笑んで告げる、しかしその微笑みは誰から見ても純粋な笑みには見えないだろう。
「こちらです」
少し入り口から歩いたところで、博士はそう言って何の変哲もない壁を押し始めた。するとその壁が回転し地下への階段が姿を現した。隠し扉である。
「さあ、この階段を下っていってください」
彼はクロハに階段を下るよう促す。
「……」
クロハは今更逃げることはできないと分かっているため、博士の言葉を聞いて大人しく階段を下っていく。
その様子を確認した博士も後に続いて階段を下っていった。
地下には広々とした空間が広がっており、白衣を着た者が数人居る。全員何かを研究しているようだ。
「どうですか? あの建物の見た目からは想像できない程の広さでしょう?」
地下には至る所に様々な本や生き物、謎の液体が入ったフラスコなどが置かれており、一目で研究所だとわかる内装であった。
「博士殿帰ってきたのですね、さっそく実験の結果を……」
博士が帰ってきたのを確認した一人の研究員がそう言って近寄る。
「おっと、すみません、私は先にこのモルモットを奥の檻に入れてくるのでまた後で確認させて頂きます」
博士は近くに寄ってきた研究員にそう告げる。
「おお、これが例の」
「ええそうです! ああ、早く実験を進めたいものですねぇ……っと、それと究極複合生命体制作の件について引き続き進めておいてください」
「わかりましたぞ、ではまた後程」
その研究員はクロハに対して興味を示していたが、博士の言葉を聞くとそう言ってそそくさと元いた場所へ戻っていった。
「ではついてきてください」
「……」
博士はクロハを連れ、地下室の更に奥へ進んでいく。
「今日からここがあなたの部屋ですよ……基本は実験室で過ごすと思いますが」
しばらく歩き、クロハは部屋という名の檻に案内された。
「……」
(奴隷組織の檻より広くて汚れてない……モルモットって言ってたからやっぱり実験体なんだ)
案内された檻を見て、彼女はそんなことを考えていた。
「では私は色々とやることがあるので、ここで失礼しますよ」
そうして博士はクロハを檻へ入れ、檻の鍵を閉めた後、彼はクロハの前から去っていった。
◇
「究極複合生命体制作の材料はある程度集まりましたねぇ、明日から本格的に取り掛かるとしましょうか、興奮が抑えきれません!」
クロハの地獄の日々はまだ終わらない。
【あとがき】
空葉です。
はい尺稼ぎです。
嘘です半分冗談ですごめんなさい。
とまあそんなことは置いといて、最近クオリティーの低下が激しい気がするんですよねぇ、というか三人称の文が難しい。
黒葉
「あなたの小説最近出来が悪い」
ぬい葉
「わかってる! どうにかしようとしてます!」
そうそう、クロハの天賦について、どうせならここで説明します。
超再生:肉体の再生力がなんかすごくなる。この天賦によって肉体が再生すればするほど、天賦の再生速度が増す。ただ不死身ではなく、首を飛ばせば死ぬ。でも再生速度が速くなりすぎたら死ぬ前に首も再生するかも? 常時発動天賦。
精神保護:狂うことを防止してくれる天賦。精神が狂いそうになると発動し、強制的に落ち着かせる。ただ落ち着かせるだけで負の感情を消し去る天賦ではない……となると狂えずに行き場を失ったそれらはどうなっているんでしょうね?
といった感じですね。
黒葉
「すごい苦しめようとしてるのが伝わってくる」
ぬい葉
「それはそういう世界に文句を言ってよね!」
記念すべき十話なのにこんなで申し訳ないです。暖かい目でこれからも見守ってくれたらありがたいです。
あと完結はさせるので是非最後まで読んでいって欲しいです、今後とも『その先は朱か黒か……』をよろしくお願いします!