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70話 闇オークション

 

 ボンベイの首都、その賑わう街の中央にそびえる巨大な建物、それは王宮であった。


 巨大な城、絢爛豪華というより、質実剛健な建造物である。

 他の城と違い、守衛は兵士ではなく、黒服のマフィアではあるが。


 その王宮の中に入ったシウランは戸惑いを隠せなかった。

「ここって、この国の城だよな!? なんでマフィアがうじゃうじゃいるんだ?」

 先頭で案内するクロエが答える。

「この国はもう裏社会の組織の手中にあるの。王様なんてお飾りに過ぎないわ。実権はマフィア達のものよ。この城もマフィア達の根城ね」

 ルァが不思議そうな顔で尋ねる。

「身体検査とかなかったけど、大丈夫なの!? これじゃ襲って下さいって言ってるものじゃない?」

「だから私達のような護衛が必要なのよ。この場で武器は手放せないわ。力の誇示が連中の美意識なの。それにもしもの時に身を守れなくなるわ。まぁ一応ここでは争いごとは御法度になってるわ。暗黙のルールね」

 シウランが不満そうにぼやく。

「マフィアの見栄のために俺達は雇われたのかよ……。てかなんでライエルがここにいるんだ? お前、弱っちい癖に」

 シウランの言葉にルァも同調する。

「そこまで上司にゴマすりしたいの? ライエルなんて、ネムみたいなそこらのガキんちょより、喧嘩弱いんだから、帰った方がいいわよ」

 存在を否定されたライエルは硬直する。

 代わりに溜息をついたクロエが答えた。

「貴方たちね……。仕方ないわね、ライエル。貴方の力見せてあげなさい」

「え、ここでやるんですか? 仕方ないな、先輩の頼みだ。僕の得意魔法の能力を見せてあげますよ!」


 ライエルに能力?


 そうシウランとルァが興味を持った時、ライエルの頭上にゴキブリが飛来し、ライエルの指先に止まる。

 ルァはその光景に戦慄し、シウランがそれを見て、呆れる。

「……ゴキブリに好かれてるな、ライエル……」

 ライエルが得意気に指を左右に振る。

「違いますよ、これが僕の能力です。虫を操作して、五感を共有できるんです! 数だってほら!」

 するとライエルの背後から無数のゴキブリが湧くように現れる。

 ルァは絶叫を抑えて、絞るような声で慄く。

「……!! 気持ち悪い、気持ち悪いわ……!!」

 一匹ならまだしも群がるゴキブリの数に流石のシウランもたじろいだ。

「ちょっとお前、それ以上近づくんじゃねぇ……!」

 それを傍目で見ていたクロエは嘆息する。

「ライエル、魔法陣は展開済みね。効果範囲を教えてくれるかしら?」

「この街全域です! 凄いでしょ!?」

 街中のゴキブリがライエルと一体化している事実に、シウランとルァはドン引きした。

「なんて気持ち悪い魔法なの……」

「あぁ、ゴキブリライエルだな……」

 ライエルは今になって、二人が自分の能力に嫌悪していることに気付き、弁解した。

「私の能力は原生林や未踏の遺跡探しとかで発揮するんです。大きな虫なんてこの街にはいないでしょ!? ゴキブリかハエぐらいしかこの街にはいませんよ! 航海している時だって虫さえいれば僕は役に立てたんですよ!」

 クロエは、こほんと咳をして、説明する。

「ライエルにはこの能力で周辺の警戒をお願いするわ。それにしても五感の共有って、頭は大丈夫なの?」

 ライエルは自信満々に答える。

「頑張りました! 先輩の指導の賜物です!」

 クロエは顔を引き攣らせ、苦笑いをした。


 そんなこと教えたこと一度もないんだけど……。


 シウラン、ルァ、ライエルの三人を引き連れたクロエは城内の通路の先を歩く。

 そしてしばらく歩いた後、スウィートルームをノックし、許可を得て入った。

 部屋には、今回の件の護衛対象のマフィアがソファで寛いでいる。

 若いが貫禄のある男だった。

 礼服を着こなし、顔つきからは知的さを感じる。

 男はクロエを一瞥し、シウラン達を見て眉を顰めた。

「子供が来るところじゃない……」

 その言葉に怒りを覚えたシウランが顔を真っ赤にするが、ルァが制止し、棘のある言葉を放つ。

「強面の顔して、人魚集めが趣味なんてずいぶんメルヘンチックなマフィアね」

 男はルァの挑発を流し、仕方のないように説明した。

「俺はオヤジの代理で来た。オークションは俺の趣味じゃない。だがここには俺の力を示しに来た」

 男が指をパチンと鳴らすと、部屋の影から七人のハンター達が姿を現す。

 中年のハンターがクロエに一礼した。

「久しぶりだな、クロエ。特殺部隊を連れてきたぞ。警護は任せろ。しかし、お前の方は大丈夫なのか? 腕利きの助っ人を連れて来たと聞いたが……」

 中年のハンターがシウラン達を不安そうに眺める。

 その視線が不快だったシウランは不貞腐れた顔をした。

 クロエが中年のハンターに言葉を返す。

「ガイウス、心配いらないわ。彼女達は燕の海賊……、刻の刃の連中を何人も撃退した実績があるわ。連中の顔を知ってる貴重な存在よ」

 その言葉にガイウスは驚きを隠せなかった。

「刻の刃と渡り合ったのか!? 人相を知ってるのは有り難いな! 連中は神出鬼没。姿どころか、影も形も見せない奴等だぞ!」

 すると、茶髪を逆立てた青年が水を差す。

「けど殺ってねーんだろ? だから俺達がわざわざ出張ることになったんだよ。こっからは大人の仕事だから、お子様は家で留守番でもしてろや」

 その軽口に他のハンター連中も笑みを上げた。

 せせら笑いながら茶髪の青年が酒の入ったグラスを持ち、飲もうとすると、グラスが粉砕された。


 シウランがコインで指弾を放ったのだ。


「勤務中に飲酒は厳禁だぜ」

 シウランの挑発的警告に、青年は激昂しようとしたが、ガイウスがそれを制する。

「やめんか、フラム! これから任務なんだぞ。しかし、フラムが反応できなかった所を見ると腕はなかなかのようだ。自己紹介をしよう。こいつがフラム。向こうのベッドで寛いでる若い女達がエタールにマイヤ。椅子に座ってる奴がマリヌス。部屋の隅にいるのがハデスだ。皆、ネームドのハンターだ」

 クロエが自慢の槍で部屋の天井を叩き、呟く。

「上で覗き見してるのも?」

 天井から声が響きだす。

「……ネロだ。しがない傭兵だ。儂はハンターじゃないしな」

 マフィアの強面の男が嘆息する。

「歓談中悪いが、そろそろオークションの時間だ。ビジネスで来たんだ。しっかり働いてもらう。これだけのメンツが入れば、他の組織の奴等にも力を誇示できる。まぁ揉めごとにはならんさ。この国では不戦協定があるんだからな。お前らはお飾りだ。せいぜい派手に目立ってくれ」

 

 そしてシウラン達は最上階のオークション会場へと足を運ぶことになる。

 

 裏の組織の魔窟の奥、それが今日の舞台。


 闇オークションの開催である。

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