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51話 対決! ジーク②

 

 この世界では体術は未成熟である。



 現実世界のようにボクシング、空手、柔道、柔術、ジークンドのような洗練された格闘技は存在しない。


 素手で戦うよりも武器を取って戦う方が効果的だからである。


 だが、その発想を覆した者がいた。

 創世の魔術士カインである。


 彼は元来の魔法士は遠距離で魔法を放つという固定概念を破壊した。

 無詠唱魔術を使用しながらの接近戦の格闘術、魔術を生み出した。

 これにより剣士一強の時代は崩れ去った。


 剣に限らず、武器を用いる者は両手を使い、その武器の間合いで戦うことになる。

 もしも接近されれば防御手段を失ってしまう。

 また、両手を使用した状態では魔法陣の印は結べない。

 魔術士は魔法を駆使した体術により、剣士の間合いを殺したのだ。


 だがこの戦法の歴史はまだ三十年という浅い年月しか経ていなかった。


 体術も洗練された格闘技と呼べるものではなく。

 打、投、極においては現実世界の格闘技の技術には及ばない。


 全てにおいて発展途上であり、武の極みである武神すらも自身の体術を未完成と謳う。

 体術の流派もまだ少なく、その技術の使い手は個人の力によるものが大きい。


 まだこの世界の体術は強者による手探りの状態が続いているのであった。


 そして未知の技術が互いにぶつかり合う時、その先を予想できる者などいない。


 奇しくもシウランと対峙するジークも我流で格闘術を磨いてきた者である。

 自身が磨いた技で数々の剣士や戦士を屠ってきた。


 しかし目の前の赤髪の少女、シウランは(タオ)を巧みに使い、自身が昇華した必殺の一撃を耐え抜いた。

 今膝から崩れている姿勢で、痛めた心臓を押さえていても、その瞳は闘志が宿っていた。

 それをジークは見抜いた。 


 まだ闘える顔をしているな……。


 秘技を見せても、ジークは柳のような、受け流す構えをしていた。


 深手を負ったシウランは乱れた心拍と呼吸を整えるため、肺の中の空気を全身の力を込めて吐き、そして全力で息を吸い込む。

 その繰り返しにより、呼吸を無理矢理整え、乱れた心拍を復活させた。  

 倒れ崩れ落ちる直前に、野生の本能でそれを行ったことにより、なんとか失神は免れた。


 ダメージはある。

 事実、意識はあるものの、心臓の痙攣により、身体の自由は奪われていた。

 しかし、意識があるということは脳が動いていることを意味する。

 その事実がシウランを窮地から救った。


 意識を集中させ、全身の(タオ)を漲らせる。


 シウランは魔法が使えない。

 単純に魔導書を読まなかったせいであるが、師である武神から師事は仕込まれていた。

 故に魔法は使えないが、魔術師の素養はあり、魔力も練れる。

 シウランは今、自身に宿る先天魔法術式を解放させようとしていた。

 その術技には縛りがある。

 シウランの技量では一日一回が限度であること。

 発動後は後遺症により、(タオ)が枯渇してしまうこと。

 

 今のシウランにとっては致命的だ。

 つまりその一撃で目の前の男を仕留めなければならない。

 だが、このまま戦っても勝敗は見えている。

 この一撃に賭けるしかない。


 シウランは覚悟を決めた。

 刹那、シウランの全身に稲光が走る。


 シウランの先天魔法術式は雷魔法だ。

 シウランは体内にある電気信号を魔力の練った雷により、限界まで高める。

 全身に電流が張り巡らされる。

 痙攣した心臓もこの電気により、正常の働きを戻し、身体の自由を解く。

 全身に宿った(タオ)を雷へと変換させ、それを解き放つ。


 紅い閃光がジークの元へ襲いかかる。

 シウランは宿った雷により、身体を限界領域まで高めて、稲妻のような蹴りを放つ。


 シウランの必殺奥義、『瞬雷』である。


 疾風の雷撃がジークの、人体の急所である脊髄に目掛けてひた走る。


 それは避けることの出来ない一撃であった。

 

 倒れていたルァやナレスもあまりの一瞬の出来事に目を奪われた。

 ただシウランが消えたと思ったら、紅い閃光がジークに向かって行った。

 これで勝負は決まったと思った。

 予め攻撃が来ると想定したジーク以外は。

 シウランも、魔術の使い手であるルァも相手を見誤っていた。


 ジークは武術家ではない。

 ルァやシウランと同じ魔術士なのだということを。


 そして奇しくもその魔法の系統はシウランと同じものだった。

 ジークも雷魔法術式の魔術士であった。

 シウランの背水の陣の覚悟を持って放った必殺の奥義は、ジークの長年の歳月をかけて鍛えた受け流しによって捌かれてしまった。

 ただジークの技量がシウランを上回っていたからではない。

 ジークもシウランと同じ雷魔法の使い手であり、同系統の攻撃による対策を立てていたこと、シウランが放つ雷光を見て、瞬時に自身も雷を体内に宿らせていたこと。

 稲妻のような一撃は豪雷のような捌きで封じられてしまった。


 ただ運が悪かった。

 しかし不運は続く。

 満身創痍のシウランに、ジークは感銘を受けた。


 ああ、強い、強い娘だ。

 強い奴は好きだ、大好きだ。

 俺の全霊の力を持って応えなけば、この強者には失礼だ。

 俺の全てを受け止めてくれ。


 疲労困憊のシウランの瞳に映ったのは全身に稲光が走るジークだった。

 そして驚愕した。


 雷を宿すジークの身体が五体に増えていたのだ。


 五体のジークが同時に言い放つ。

「俺はこれから必殺の奥義を放つ。俺は強い奴が好きだ、お前のようにな。シウランと言ったか。お願いだから生きててくれ。できればまた闘いたい……」


 万事休すのシウランに絶命の一撃が放たれようとしていた。

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