31話 アルテミス発動!
甲板に出たシウラン達は望遠鏡で迫り来る海賊船を確認する。
イズモが敵船の掲げる旗を見ると、鷹の紋様が刻まれていた。
「シウラン、ありゃ燕の海賊船だ。あの連中に追われてるのか? 五隻はあるぞ、おいおい、帝国海軍は何やってんだよ、ここは帝国の領海だぞ!」
狼狽えるイズモを無視し、シウランは望遠鏡を覗きながらぼやく。
「こっからじゃ人影は見えねぇな……。今朝の氷を使うロン毛は来てるのか?」
海賊が迫ってくることに取り乱したライエルは悲鳴を上げる。
「と、とにかく、迂回しましょう! こんな小型船じゃ大型帆船に勝てる訳がない! 相手は燕の海賊ですよ」
すると船内にいたデーヴァの声が外の看板に響く。
「この船の性能と火力ならあの程度の障害物は問題ありません。許可があれば障害を殲滅し、直線進行を敢行することを提案します」
シウランは耳を疑った。
こんなチンケな船であの海賊船に勝てるだと!?
相手は五隻もいるんだぞ!?
そもそもこっちは弓矢もねーんだぞ!?
困惑するシウランに、航行経験豊富なイズモが疑問を口にする。
「デーヴァ、相手は海賊だ。弓兵が大量に配置されている。火矢だって飛んでくるかもしれない。下手すりゃ大砲だってある。そもそも直進しても、五隻が列を成している海賊船だ。おそらくベテランの船乗りが操舵しているだろう。避けることはできんだろう」
すると今度はシャインの声が響いてきた。
「私もデーヴァのナビゲーションに賛成です。乗組員の皆様は船内に避難して下さい。これより迎撃システムを起動させます。遠距離誘導起爆貫通型魔法の射程距離まで20秒です。艦長、迎撃の許可を頂けませんか?」
ルァが首を傾げる。
「艦長? 誰?」
デーヴァが答える。
「ユーザー登録者であるシウランさんが艦長となります。この船の指揮権はシウランさんに委ねられています。シャインに指示を出してもらえませんか?」
シウランがニヤリと笑う。
「いいぜ、デーヴァとシャインを信じてみるぜ。ただ俺は看板に残る。いざとなれば海賊共を追っ払ってやる」
シャインが忠告する。
「やれやれ、確かに発動の許可を受諾。すぐに起動させます。シウラン、せめて身を伏せて下さい。爆破物の破片が衝突する可能性が有ります」
ルァがキアを摘み、船内へと戻る。
「何が起きるかわからないから、私は避難するわよ。大事なお姫様も連れてったげるわ」
シウランを残して、皆は船内へと身を守る。
そしてシウランはデーヴァに大きく呼びかける。
「古代の遺物とやらの力を海賊共に見せつけてやれ!」
素早い動作で両手の指を動かしながら、デーヴァが頷く。
「迎撃システム、アルテミス、発動!」
すると金色の船が光りだし、閃光に包まれる。
船の胴体から白い魔法陣が浮かび上がってきた。
魔法陣から白色の光りが収束され、大きな球体となる。
それが複数に分裂し、白い光りの弾となり、眩い閃光を放つ。
五隻の海賊船はシウランが目視できる距離まで近づいていた。
その海賊船に向かって白い光線が放たれた。
シウラン達は雷が起きたかのような激しい光に驚く。
その光は大海原を裂き、海賊船に直撃した。
いや、正確には海賊船は光りの藻屑として、跡形もなく散っていった。
五隻同時に白い光線に飲まれ、焼かれるように爆散した。
衝撃波がシウランの赤い長髪を靡かせる。
シウランは我が目を疑った。
城のように巨大な帆船が一瞬で跡形もなく、巨大な白い光りの前に消えていったのだ。
シウランだけではない、デーヴァ以外の他のみんなも驚愕していた。
この船の恐ろしさに。
デーヴァは何事もなかったかのように黙々と手を動かしながら囁く。
「目標の撃破を確認。速度60ノットまで加速させ、直進していきます」
同じくシャインも淡々とシウランに尋ねる。
「シウラン、予定通り、航路はこの海域を離脱し、シンドリア海に入り、南東へ進路を取ります。宜しいでしょうか?」
あまりの光景に腰を抜かしたシウランが呆然とした顔をして、震えた首を縦に振る。
「……ああ……た、頼む……」
シウラン達を乗せた金色の船は海に飲まれる海賊船の残骸に目もくれず、非情にも大海原を駆け出していった。
何事もなかったかのように水平線の先へと進み出した。
今の攻撃で何人もの命を奪ったのかと思ったシウランは堪らず、煌めく青い海に向かって嘔吐せずにはいられなかった。
身をガクガクと震わせるシウランの肩にルァが手を置く。
「またやってしまったわね……。たまに貴方が怖くなるわ……」
狼狽えるシウランは必死に弁明する。
「まさかあんな威力とは思わなかったんだよ! せいぜい船に風穴開けるぐらいかと思ってたのに……。……まさか一発で沈むなんて……」
具合が悪そうにしていたシウランを心配したのか、デーヴァが看板に出て、小鳥のような綺麗な声音で声をかける。
「シウランさん、大丈夫ですか? 衝撃片に当たってしまいましたか?」
海の藻屑、光の中に消し炭になった海賊のことなぞ微塵も同情せず、ただシウランの容体だけを案じるデーヴァの表情にシウランは恐怖した。
堪らず、シウランは尋ねる。
「お、俺は大丈夫だ。……お前はなんともないのかよ?」
デーヴァはシウランの言葉にキョトンとした顔をして答える。
「? ええ、安全な船内にいたので。目標は完全にクリアしました。周辺を警戒しながら現在運行しています」
シウランとルァが身を寄せて囁き合う。
「今、この娘。クリアって言ったわ。あの凄まじい光景を見て何事もなかったかのように、涼しい顔しているわよ……」
「ま、まるで部屋の掃除は済ませました、みたいな感じで話してくる……。ルァ……、コイツもヤベェよ……」
二人は戦慄していた。
虫も殺さない顔をした少女が海賊達を皆殺しにして、平然としているデーヴァが急に恐ろしくなったのだ。
鴎の鳴き声がこだまする。
まるでシウラン達の船出を祝うかのように鴎達が鳴いていた。
その鳴き声を聴きながらシウランは海賊船の残骸を眺めながら思う。
ああ、そうか……。
鴎の餌になるのか……。
なんて酷い死に方なんだ……。
シウランはこの船旅に大きな不安を感じた。
鴎の鳴き声が不穏な予感を感じさせていた。
海面で九死に一生を得たルーファウスは浮かぶ木片にしがみつきながら、群がる鴎を追い払う。
「あのクソガキども! 必ず殺してやる! この屈辱、忘れんぞ!」
シウラン達の船旅の始まりです!
派手なスタートになりましたねww
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