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30話 出発進行!

お願いですから読んでみて下さい(涙目)!


『いいだろう。実技演習だ。その娘を救うためにサンハーラの大陸とやらに行って来い。被術師であるその娘も連れていけ。どんな術式かわからんからな。あと、俺は行かんぞ』


 ネズミ姿の武神の言葉に弟子のルァが冷やかす。

「師範は船酔いでもするの? ずいぶん薄情ですね」

『馬鹿抜かせ、お前ら猫飼ってるだろ。寝てる間に食われたらどうする。それに俺もこの呪いを解術するために行く所がある。俺は俺でシュナを仕留める準備をしておく』

 デーヴァが呟く。

「あの仮面の方が所有していたモノはコード515、その能力なら大陸間航海も問題ありません。ただ海域のデータをインプットする必要があります。さらに海路図があれば有効と判断します」

 イズモが鞄から大きな紙を取り出す。

 それはここ、ルシア帝国から東の果ての大瀑布までの道のりが描かれた航海地図であった。

 イズモがニヤリと笑う。

 ルァはシウランに決意を確認をとる。

「見つかるかどうかわからない未知の大陸への船旅になるわよ? それにそこに辿り着いてもネムが助かるとは限らないのよ?」

 シウランはルァの肩に手を置き、耳元で囁く。

「大事な妹分が苦しんでるんだ。姉貴分としてほっとけねーよ。可能性がゼロじゃない限り、やるべきことはやってみようぜ、相棒」

 ルァも返すようにシウランの肩を叩く。

「仕方ないわね。長い付き合いなんだし、海の果てまで付き合って上げるわよ。あんたは本当に世話がやけるわね」


「キューン」

 デーヴァの手の平に乗っていたセーラー服を着たキアがシウランに呼びかけるように鳴く。

 シウランはウィンクをしてそれに応える。

 デーヴァが案内を申し出る。

「僕はコード515のナビゲーションロイドです。快適な船旅へと皆様をご案内いたします。先程シウランさんが膝枕していたオペレーションロイドより権限は上ですので、すぐにシステムの上書きを実行します。」

 武神は一人呆れる。

『全く。馬鹿げた旅なのに、反対する奴がいないとは……。これも特異点の流れというのか……。カインやミュラーの奴らは何を企んでいやがる……』



 シュナが残した金色の船、そこにシウラン一向が向かう。

 港の桟橋にそれは寄せられていた。

 前へと進むデーヴァにシウランは並びかける。

「そもそもオメーは何もんなんだよ? この船のことを知ってるみたいだし。どっからきたんだよ?」

「複数の質問に返答は僕には困難です。まず僕は自分を記憶しておりません。何もわからないままに、知らない人達に追われていました。ただこのコード515のナビゲーションロイドということは認識しています。このコード515のために僕はあります」

「要するにデーヴァ、お前は記憶喪失ってヤツなのか?」

「イエスです」

 ルァが横槍を入れる。

「よくわかんないわね。記憶はないのに、こんなチンケな船のことだけは知ってるって」

 難しいことは考えないことにしてるシウランは割り切ってデーヴァの背中を叩く。


「まぁいいじゃねぇか。デーヴァがいればこの船は動く。早く賢者の船を掻っ攫って、ネムを救うための船旅だ。……で、どうやって乗るんだ? 梯子もねーぞ」

 デーヴァは囁く。

「コード515、アップデートを行います。船体へのエスコートを要求します」

 すると、金色の船は光の階段を出現させ、シウラン達を中へ誘う。

 唐突なことに戸惑いを隠せなかったが、船に乗らないわけにはいかない。

 シウラン、ルァ、デーヴァ、イズモ、ライエル、そしてシウランの腕に抱えられたネムが船内へと入っていく。


 船内の様子にシウランは驚く。

「すげぇな! 豪華な椅子が何個もある! なんか宙に薄っぺらい板が並んで浮かんでるぞ。なんか古代の遺物って感じだな!」

 ライエルは驚愕していた。

「伝承通りだ……。古代文明は机を使わず、空中の板に言霊を送り、生活していた……! 古代の文献は本物だったんだ!」

 頭を掻いたイズモが呟く。

「それがどうやって動くかが問題だろうが……。シウラン、ネムは預かる。どうやら奥にベッドやソファが置かれている。しばらくそこで休ませておこう。ルァは看病を頼む」


 デーヴァが船室の前列にある椅子に座る。

 シウランも釣られてその隣に座った。

 デーヴァは小さく、繊細な手を宙に浮く板に添える。

「アップデート開始……。コード515、システムを起動して下さい」

 すると、船内から妙な声が響き渡る。

「おかえりなさい。デーヴァ。アップデートを遂行中です。おや、ユーザー名が不登録ですね。ただちに入力して下さい」


 訳がわからない、という顔をしているシウランにデーヴァが囁く。

「この船の所有者名の登録です。つまりは船長を誰にするかということですが……」

「よく、わかんねー。とりあえず俺はシウランだ。俺達を船旅に連れて行ってくれ!」

「ユーザー名、シウランですね。私はコード515、アップデート完了次第、船体のシステムを稼働させます。船体操作のチュートリアルを推奨します」

「難しいことや船のことなら、デーヴァやイズモに任せた。それよりお前、そのコード515ってヤツ辞めろよ。呼び難いんだよ。 俺が名前を付けてやるよ。色が金色なんだから、シャインだ。輝く船旅にしてくれよ!」

 安易すぎると頭を抱えるライエルとイズモは溜息をついて座席に座った。

「えっと私達はどうすればいいのでしょう? デーヴァ、この船にオールとかあるんですか?」

 困った顔をしたライエルが尋ねた。


 しかしデーヴァは首を振り、両手の指で素早く、宙に浮かぶ板を、まるでピアノの奏者のように指を動かす。

「不要です。船体コントロールはこちらで行います。イズモさん、航路図を板の前に掲げて頂けますか?」

 イズモが持っていた地図を言われた通りに掲げる。

 すると船内からシャインの声が響く。

「目的地をインストールしました。アップデートも完了。いつでも出航できます。準備は宜しいですか?」

 シウランに肩にキアを乗せて、腕を組んで威勢の良い掛け声を出す。

「よし、全速力でかっ飛ばせ! ソッコーでネムを救けるぞ!」

 シウランの合図と同時に、金色の船は動いた。


 しかもなんの予備動作も無く、もう速力で大海原を駆け出す。


 いきなりの急発進にシウラン達は蹌踉めく、そして奥の船室でネムの看病をしていたルァは派手にすっ転び、シウランを怒鳴る。

「いきなり何すんのよ! この脳筋!」

 すかさず反論しようとしたシウランをイズモは静かに制する。

「確かに初速こそ派手だったが今は安定して速度を維持してる。波による揺れも殆どない。どうなってる。この船……」 

 また船内に声が響き渡る。

「この船ではありません。マスターからシャインと名前を与えられました。シャインと呼んで下さい。現在、船体状況を慣らすために速度40ノットを維持しています。お望みなら、60ノットまで加速させますが?」

 イズモが驚愕する。

「40ノットだと!? 早馬より早いじゃないか!? 帆船でもそんな速度は出ないぞ!」

 するとデーヴァの顔が険しくなり、声を張り上げる。

「モニターから複数の艦影を確認。海賊旗を掲げています」

 その言葉を聞いたシウランは怯むことなく、肩に抱いたキアに呼びかける。

「キア、海賊どもに目にモノを見せてやる。お前はここの特等席で観戦してろよ!」



 かくしてシウランの波瀾万丈の船旅の幕は上がった。


 彼女はまだこの時知らない。


 この先に待ち受ける運命を。


お読み頂きありがとうございます。


ここまできてやっとシウラン達は船を手に入れ、船旅が始まろうとします。


冒険はこれからです。楽しみにして下さい!


お読み頂いた方、是非ブックマークと評価をお願いします!


作者は埋もれすぎてて心が折れかけてます。




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