26話 再会ライエル
ライエルはシウラン達を探していた。
本来ならもう二度と会うことはないだろうと思っていた。
しかし、異常事態が発生した。
遺跡で発掘した魔法道具が昨日、何者かに盗まれたのだ。
帝国軍の見立てでは海賊の容疑が極めて高い。
まだこの街に潜伏している可能性がある。
当然、ハンターであるライエルにも捜索依頼がきた。
ライエルは途方に暮れた。
こないだ海賊連中に追いかけられるハメになったのに、何でこっちが追いかけなきゃいけないんだ。
そもそもこの街で頼れる人間なんて……。
そう思っていたら、二人組の少女の悪い笑顔を思い出した。
彼女達なら何とかしてくれるかもしれない。
遺跡発掘に夢中だったいたから、気付くことができなかったが、この街は変化していた。
ずいぶん外国人が増えた。
彼女達がいるだろうと思われるスラムに足を運ぶと、さらに驚いた。
あの殺風景なスラム街が、今や歓楽街になっている。
道を間違えたかとも思った。
しかし、その街を数歩歩くと、紛れもなくこの街だと気付かされた。
街の往来で人混みができていたのだ。
人混みの正体は彼女達だった。
以前と変わらず仲良く仲間同士で喧嘩をしていた。
あの甲高く、大きく、男のような口調で、怒鳴り声を上げていた。
「ルァ! 海に行くんだ! 肝心の船はどうするんだよ!?」
シウランは馬車から降りて、ルァの胸ぐらを掴む。
「その手を離して! 服が伸びるでしょ! 船なら買えばいいじゃない!」
イズモは頭を掻きながら、深く溜息をつく。
「帆船がいくらすると思ってんだ? そこらの釣り船なら買えるかもしれないが、そんな船で、遠くは行けんぞ。荒波に飲まれて沈没がオチだ。もう帰っていいか?」
デーヴァが忠告する。
「ここでの騒ぎは問題です。現在私達は追跡されている状況です。人気が少ない所に移動することを提案します」
ルァがデーヴァに突っかかる。
「んなことわかってるわよ! その前に貴方、一人称変えてくれるかしら!? 私と被るのよ! これから貴方は僕って一人称にしなさい! 僕っ娘よ、貴方みたいに可愛い子で僕っ娘なんて人気出るわよ!」
「了解致しました。これより一人称を僕に変更します。僕の提案は承諾して頂けますか?」
ネムはデーヴァが素直に応じたことに呆れる。
「本当に変えちゃった……。ねぇシウラン、ルァ、デーヴァの言う通り、ここじゃ目立つから場所変えようよ。港の方でも行こう。あそこなら静かだよ」
「わぁーたよ、ったく! 港なら船がいくらでもあるからな。こうなりゃ海賊船でもかっぱらうか!」
そこで、ルァに天啓が落ちる。
港、船、かっぱらう!?
「ねぇ、シウラン! 今朝賢者様が言ったこと覚えてる? 港に船を停泊してあるって!」
「そういや、ナイトミュージックがどうとか言ってたな……」
「ナイトクルージングよ! 港には賢者様の船があるわ! それでこの街から逃げましょう」
「伝説の賢者の船をかっぱらうって、お前正気か?」
「港まで行けばマグレで海賊船が停まってるかもしれないわ! とにかくなりふり構ってられないわ! あの地獄の修行生活を送りたいの!?」
二人の物騒なやり取りを見ながら、呆れたライエルが声をかける。
「やぁ。なんか物騒な話してるね。相変わらず元気そうだ。新しい友達も増えてるね。」
シウランとルァはライエルに目を向けて、渋そうな顔をして声を揃える。
「「なんだライエルか……」」
その落胆の言葉と態度にライエルは深く傷ついた。
ニューク港街。
馬車に乗ったシウラン達はさっそくライエルに詰問する。
「どうせ、お前、厄介ごと持ってきたんだろ? あいにくこっちは厄介ごとを沢山抱えてお前どころじゃねーんだよ」
「師範に追われ、海賊に狙われ、今度は何よ? 軍にでも追われてるの?」
シウランとルァの指摘にライエルは両手を上げて答える。
「僕は善良なハンターだ。君らのように追われるような生き方はしていない。それに僕は追っている立場だ」
ネムが不思議そうな顔で尋ねる。
「ライエルって遺跡発掘してたんだよね? 何でこんな街中にいるの?」
「いやぁ、肝心の遺跡の発掘品を盗まれちゃってね。どうも相手は海賊らしくて、僕一人じゃどうしょうもないから、助けて貰おうと……」
シウランが手を払い、告げる。
「その海賊に追っかけられてんだよ。一昨日来やがれ」
するとデーヴァが美しい声音でシウランに語りかける。
「提案します。僕達を追っているのは海賊。ライエルさんが追跡しているのも海賊。利害が一致します」
ルァが溜息をついて、デーヴァに尋ねる。
「そもそも何で貴方が海賊なんかに狙われてるのよ。そもそも貴方誰なのよ? 勝手に私達の家に上がり込んでドンパチ起こして……」
デーヴァが沈み込んだ顔をして俯く。
「わかりません。目が覚めたら、あの氷の男の人達に追われてしまいました。ただ僕のハードウェア……姉妹のような存在はこの近くにいるとシステムが反応しています」
シウランが眉を上げて、デーヴァに尋ねる。
「お前にも家族なんているんだな。せっかく港に来たんだ。ついでに探してやるよ」
ネムが無邪気に声を上げる。
「さっすがシウラン! 漢前!」
先ほどから沈黙を守っていたイズモが口を開く。
「よくわからんが、お前らは海賊に狙われて、この港で賢者が所有する船を強奪することを企んでるんだよな?」
ルァが吹っ切れたように答える。
「ええ、そうよ!」
「冗談じゃねぇ! ここから降ろせ! やろうとしてることが海賊と変わらねぇ! その海賊にも追われてるなんてマジでシャレにならん! やっぱり平穏な日常が一番だ!」
暴れるイズモをシウランが取り押さえる。
「諦めろ! あのブタ野朗にお前はハメられたんだよ! この街にお前の居場所は無い!」
ルァも告げる。
「むしろ喜びなさい! 新しい飼い主が美少女達なのよ! 社畜の癖に生意気言うじゃないわよ!」
その光景を見て、ライエルは呆れる。
「全くこの二人は……」
密集して列なし、停泊する船達。殆どが帆船だ。
シウラン達が船を見渡し、品定めしていると、デーヴァが指を差す。
「ありました」
その方角を見ると、大型の船がある。
確かに大型だが、帆船より小型で、帆もなく、釣り船としては大型であった。
形状も木製では無く、特別な鉱物で加工されたようなものだ。
船の知識が無かったシウランはそのサイズと形状に大きく落胆したが、この中で驚愕した者がいた。
ライエルだ。
この船こそ昨日、盗まれた遺跡の遺物であり、ライエルが探索していたものだったのだ。




