13話 対決! アレンティ兄弟
「お礼をするのはこっちだ。散々俺達の名前を使ってヤンチャしてくれたみたいだな、お嬢様方。はじめまして、アレンティ兄弟だ」
微塵も感謝の心がこもって無い皮肉をシウラン達に告げたアレンティ兄弟。
堪らずシウランとルァは顔を見合わせて、気まずそうにする。
「……何を言ってる……。……俺達が本物のアレンティ兄弟だ……」
この期に及んで、未だにしらばっくれようとするシウラン達にアレンティ兄弟達は激昂した。
「せめて変装しろ! この人族が!! そもそも俺達はそんな喋り方はしない! ここが墓地で良かった。お前らを始末する手間が省ける」
アレンティ兄弟は丸腰で構えているシウランを見て、悟った。
コイツはかなりの体術の達人だ。
だが所詮体術、近接格闘に持ち込まなければいい。
まずは距離をとる。
アレンティ兄弟は身構えながら、魔法の詠唱を始めた。
そして標的である四人に向かって手をかざそうする。
しかし、予期せぬことが起きた。
墓石が眼前に迫ってきたのだ。
咄嗟に魔法の発動を中断し、アレンティ兄弟は間一髪で巨石から身を躱す。
崩した姿勢から、よく観察するとシウランが周囲にあった墓石を次々に投石しようとしていた。
何だ!?
あの怪力女は!??
そしてよく見ると四人の中の青髪の女がいないことに気付く。
逃げたか!?
その考え方はハナから間違っていた。
シウラン達に逃げるという選択肢は無かった。
本物のアレンティ兄弟に出会ってしまったら、バレないように始末しようと固く誓っていたのだ。
「シウラン、魔法を詠唱するなんて大した使い手じゃないわ。ホントにここが墓場でよかったわ。地下にいる鼠の餌にしてあげるわ」
アレンティ兄弟は声の方角に顔を向ける。
ルァは上空に浮遊していた。
アレンティ兄弟は目を疑う。
浮遊魔法!?
しかも無詠唱だと!??
何者なんだ!?
あの青髪の女は!?
だが、アレンティ兄弟も歴戦の猛者だ。
多少予想外のことが起きても、セオリー通り対処する。
距離は確保してある。
クロスボウで射抜きさえすればいい。
あの赤髪の怪力女も、不気味な女も相手ではない。
所詮人間だ。
二人のアレンティ兄弟は同時にクロスボウの引き金を引く。
瞬時に矢が射出される。
しかしそれがシウランとルァに届くことは無かった。
そのニ本の矢は空中で生成された水の塊に行手を阻まれ、静止する。
ルァは呆れた声で手をかざす。
「まだ抵抗する気らしいわよ。魔術士相手にいい根性ね。食らいなさい、水柱」
すると高圧力の水の柱がアレンティ兄弟に直撃する。
吹っ飛ばされた先にはシウランが放った墓石があり、アレンティ兄弟の身体の衝撃は墓碑にダイレクトに当たってしまい。
その衝動のあまり墓石が粉々に砕ける。
しまった!
あの赤髪の女、始めからこの為に墓石を……。
アレンティ兄弟の身体中の骨が粉々に砕けた。
苦痛にもがくアレンティ兄弟を見て、上空にいるルァがシウランに指示を出す。
「あら、まだ生きてるわ。シウラン、トドメよ。息の根を止めに行きなさい」
するとシウランは不満そうに上空にいるルァに声をかける。
「……俺にまた汚れ仕事しろってか? たまにはお前がやれよ! ルァ!」
「何言ってるの!? 貴方の手はとっくに血に染まってるのよ! 今更二人増えたって変わりはしないわ!」
「いや、なんか不公平だ。お前が殺すべきだ!」
「私はまだ綺麗な手でいたいの!」
「ほら、本音が出たぜ! 汚れ仕事押し付ける気だったんだな!」
「今更何よ! 人殺し!!」
「何だとこの守銭奴のハーブジャンキーが!!」
シウランとルァが口喧嘩してる最中、申し訳なさそうに、ライエルが話しかける。
「熱くなってる所、申し訳ないんだけど……。さっきのダークエルフの二人組ならとっくに逃げちゃいましたよ……」
シウランとルァがしまったという顔して、目を合わせる。
そして終わりの見えない口喧嘩を再び始めた。
気まずそうなライエルの肩を小さい手でネムが叩く。
「諦めよう……。あの馬鹿二人はこうなったら止まらないよ……」
ライエルの目には口喧嘩に明け暮れる二人より、幼いネムの方が大人に見えた。




