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俺、リナース・ジガは名前はそこそこかっこいいのに、種族、役職は「人間」「農民」だ。ださい。
近頃は農民も大変だ。魔族の影響で農作物がとても取れにくく生活が安定しない。
そんな魔物を討伐するのが役職「冒険者」だ。「冒険者」になるためには才能がいる。5歳で才能は発現するが、俺にはなかった。つまり冒険者試験を受ける資格すら持っていない。そんな俺には一生農民としてやっていくしかないのだ。
数年に1度程度の頻度で、魔物の大規模襲撃がある。ある年には厄災級の魔物の襲撃に、より、街1つ壊滅することもあった。俺が暮らす村はすごく小さな村で魔物の襲撃などほとんどない。そんな平和な村で暮らしている俺。まだ歳は22だ。彼女もいない。仕事もうまくいかない。
そんな時、俺は思った。
「そういえば、今年は大規模災害の年だな」
今朝の新聞で、今年の災害は厄災級の魔物がたくさんいると言う話だ。今年こそは俺の街を襲撃されるかもしれない。俺にできる事はない。
毎日お風呂に入って寝る。ご飯を食べて仕事をし、またお風呂に入って寝る。そんな日々を繰り返しているとなんだか退屈に感じてきた。俺は心の中で少し俺の村に魔物が来ないかななんて考えた。
ー2ヶ月後
今朝の新聞で、この辺で1番大きな都市が一瞬にして壊滅したと情報を手に入れた。どうやら今回は厄災級の魔物がとてもたくさんいるようだ。
なんだか遠くから叫び声が聞こえる。
「早く逃げろ!魔物が来るぞ!」
その声の正体は白翼騎士団だった。これは凄腕の冒険者が集められた騎士団だ。
俺が翼竜などの魔物に気をとられている隙に、俺は逃げ遅れた。
逃げようとした瞬間、翼を持った上級魔族にとらわれてしまった。
彼らは口を揃えて言う。
「お待たせして申し訳ありません」
俺は何のことかわからないが、恐怖でいっぱいだった。そして気絶してしまった。
目を覚ますと、そこはおそらく魔王城であった。俺はなぜ今生きているのか、なぜ連れてこられたのか全くわからなかった。そんなことを考えていると、奥から俺を連れ去った翼を持った上級魔族がやってきて、
「大変お待たせして申し訳ございません。ギルア魔王様」
俺は全くわからなかった。ギルア魔王と言えば、これまで続いてきた歴史の中で、最も強い魔王の名前だ。
俺が訳がわからない顔をしていると、その魔族は
「転生前の記憶が戻っていらっしゃらないのですね」
と言った。
俺は尋ねる。
「なぜ俺を連れ去ったのですか、俺は殺されるんですか」
「そんな事はいたしません。魔王様。私たちはあなた様の復活を待ちに待っていました」
俺は訳がわからないが、とにかく生き延びたい一心で魔王になりきった。
「疲れたので寝たいのですが」
敬語なんてなりきれてない。
「でしたら寝室へご案内いたします」
と魔族は言い、俺を寝室まで運び、
「どうぞごゆっくり」
と言って出て行った。
ー次の日
「おはようございます。魔王さま」
そんな言葉と同時に俺は目を覚ました。そして状況を思い出し、俺は尋ねる。
「今日は何をするんですか」
魔族はニヤリと笑い、
「本日はあなた様の記憶を蘇らせます」
俺は何をされるのか怖くだが、逃げれない状況だったためにその言葉を受け入れるしかなかった。
俺は椅子に座らせられ、その周りに魔方陣のようなものを書かれ、何かを飲まされた。そして魔族は
「リメム、マリハ、バー、ゼセン、モセドトリ」
と、唱えた。
俺は脳内に流れ込んでくる莫大な量の情報を処理することができず気絶した。
起きると前世の記憶が戻っていた。思い出した中には、俺が魔王としてしたことや、あった出来事を全て思い出した。そして俺がギルア魔王だと言うことも。