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惑星記  作者: フランクなカイザーフランク
第一章 結末へ向けて
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共和国侵攻

 帝国軍参謀本部より共和国へ侵攻せよとの命令が下った。

 バカラシントシの空に六大航空艦隊のうち第一艦隊、第二艦隊、第六艦隊が集結した。地上は鋼鉄の龍の影になり昼間でも真っ暗である。


 セイツェマンは出撃準備を行なう傍ら、甲板に出てその光景を眺めていた。帝国の技術力が空を飛ぶ光景は未来永劫なる帝国の勝利を暗示しているようだった。


「我々機動爆撃隊は艦内勤務となった。上層部は艦隊による爆撃で共和国に侵攻するらしい」


 ジェルソン機長がそう告げると仲間は顔をしかめた。


「爆撃機が爆撃できないんじゃやることなんて無いじゃないですか」


 爆撃手のキースが反論する。セイツェマンを含めた他の者もうんうんと頷く。


「第三爆撃中隊三番機の任務は弾薬補給だ!諸君らに拒否権はない!健闘を祈る!」


 機長はこの前のアナウンスの真似をしながら高らかに宣言するとどこかへ行ってしまった。残された者たちはこんなひどい話があるものかと口々に話していたが、文句だけではどうしようもないことを悟ると皆思い思いの場所へと去って行った。


 セイツェマンも甲板に出て外を眺めていた。補給を行なうたくさんの艦艇が浮かんでいた。


「上層部の奴らは爆撃機なんていらないのかな」


 驚いて横を見ると声の主はアモス少尉だった。


「そんなこと話してたら叱られるぞ」


「別に叱られたって良い。俺は悔しいんだ。元々海軍の爆撃機乗りに憧れてたのに、現場に来てみれば航空艦隊勤務でしかも爆撃任務は母艦に取られる始末だ。航空艦隊は強くて、帝国をここまで押し上げた立役者ってこともわかってる。でもそのせいでやりたい仕事ができないのは嫌だ。…俺、この任務が終わったら軍辞めるわ」


 衝撃的な告白であったが納得がいかないわけでは無かった。セイツェマンも作戦内容に思うところはある。しばらく沈黙が続いた後、発進準備のブザーが鳴った。


「艦隊内にいる全ての帝国軍人に告ぐ。今日我々は歴史の主人公となるだろう。目標はただ一つ、共和国首都への攻撃である。敵の戦意をくじき、帝国への勝利をもたらすのだ!諸君らの健闘を祈る」


 いつも通り勇猛な艦内放送があった後、艦は動き始めた。小さな窓からは外の景色がだんだんと変わり、砂漠地帯へ入ったのがわかった。砂漠地帯に集落らしき跡があったが、おそらく共和国の侵略によって破壊されてしまったのだろう。共和国国境は近い。


 ある程度進んだ後、対空戦闘配置のサイレンが鳴った。


「迎撃隊は発進せよ。各員、対空戦闘準備」


 アナウンスが流れると轟音と共に戦闘機隊が発進するのが見えた。おそらく敵航空機が来たのだろう。艦内が慌ただしくなる中、セイツェマンも急いで砲弾を運ぶ。


 迎撃隊接敵のアナウンスが流れると艦内は湧き立った。皆、早く戦いたいとうずうずしているようだ。

 しばらくすると衝撃に備えよの警報が鳴り、艦が大きく揺れた。


 爆発音と共に副砲の射撃が始まった。敵は思っていたよりも近くにいるらしい。敵機をこの目で見たいという気持ちを抑えながら、艦内で砲弾を運んでいた。


「まもなく敵機射程圏内。高角砲、機銃は射撃準備」


 敵機接近のサイレンが艦内でけたたましく鳴る。


「砲撃戦開始!」


 合図と同時に百数十門もの対空砲が火を吹いた。これまでに感じたことのない振動が体に伝わってくる。

 外にある高角砲へと弾薬を運ぶ最中、敵機が艦をかすめて行った。近くでは大砲が大きな機械音を奏でながら薬莢を転がし、遠くでは駆逐艦が炎をあげているのが見える。

 しかし、炎をあげているのはその駆逐艦だけで、それよりも被害が深刻そうなのは敵の方であった。敵機は次々と落とされ、流れ星のように地上へと堕ちていく。艦隊中央まで辿り着く敵機は少なく、艦隊前縁部にいる駆逐艦や巡洋艦に攻撃が集中している。稀にここまで突入してくる敵機がいるがすぐに撃ち落とされていく。


 敵の攻撃が終了し、後片付けが始まった。

 甲板に出ると異様な光景が広がっていた。腕のない者、足のない者が救護室へと運ばれていく。砲弾を運んでいる時は気づかなかったが、船首付近では被害が出ていたようだ。甲板には血がベッタリとついている。

 運ばれていく怪我人の中に、アモスの姿があった。


「おいアモス!大丈夫か?」

 出血はしていたものの、重傷ではなさそうだ。


「ああ、セイツェマンか。飛んできた破片が腕に当たってしまったんだ。軽傷だから心配しないでくれ」


 そう言うとアモスはそのまま運ばれていった。


 被害を確認せよとの命令で、爆撃機の搭乗員は格納庫に集まることとなった。アモス以外は全員無事で、アモスも腕に包帯を巻いていたが大丈夫そうだった。


「艦橋によると先ほどの襲撃は共和国軍の攻撃隊によるものだそうだ。迎撃隊や対空砲のおかげで大きな被害は出なかったらしい。この艦内でも怪我人は出たものの死者はまだいないらしい。まだ攻撃は続くかもしれないが敵の首都に行くまでの辛抱だ。頑張ろう」


 機長がそう言い終わると、しばしの休憩が訪れた。アモスは救護室に用事があると言って出て行ったし、先ほどの光景が蘇り甲板に出る気にはなれなかったので仕方なく格納庫にいることにした。するとランドル少尉が本を読んでいるのが見えた。


「こんな時に何を読んでるんだ?」

 そう聞くとランドルは咄嗟に本を閉じてこちらを向いた。


「何も隠す必要はないじゃないか。教えてくれよ」

 そうするとランドルはゆっくり本の表紙を見せてくれた。そこには距離の近い男女の絵が描かれていた。


「恋愛小説だよ。士官学校時代にバカにされたから見せたくなかったんだ」

 ランドルは照れくさそうに言った。軍を目指す者にとって恋愛などは遠い存在だ。セイツェマンの出身校でも恋愛への憧れから隠れて恋愛小説を読んでるやつが多くいた。


「そんなもの、読んでる途中で死んじまったら意味ないじゃないか」


「君、面白いことを言うね」

 そう言うとランドルは笑いながら本を差し出した。


「君も読んでみると良いよ。何冊か貸してあげるからさ」


 ランドルとはあまり話したことがなかったが案外良いやつだった。この日からセイツェマンは恋愛小説を読むようになった。

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