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惑星記  作者: フランクなカイザーフランク
第三章 対帝国秘密同盟
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持久戦

 補給路遮断作戦の成功から数日が経った。地上の敵の攻勢は明らかに弱まっており、場所によっては帝国が反撃を始めている。しかしシクス将軍の元に届いた報告はそれまでの戦場とは違う、不気味なものであった。


「将軍様。敵拠点を制圧した部隊からの報告です。『ミニーム軍は補給が行き届いておらず食糧も武器弾薬も不足状態で、部隊は1日足らずで制圧を完了した』とのことです。他の報告によると敵には餓死者や病死者が多くみられ、作戦の効果が出始めているものと思われます。また戦況とは関係ありませんが、死んでいたミニーム兵士は似たような顔が多いそうです」


「多民族国家ミニームで似た顔が多いのは珍しいな。同郷の者や兄弟で組織して統率をとりやすくしているのだろうか」


 将校は一枚の写真を差し出した。そこにはほとんど同じ顔をしたミニーム兵士の死体が山積みにされているのが写っていた。


「これは加工写真なのか?」


「いえ。実際に同じ顔の兵士がまとまって死んでいたようです」


 シクスは黙って写真を見つめていた。人工的としか思えない情景が写っていたが、そんな小さな嘘のためにここまでの労力を払うだろうか。考えてもキリがなさそうだと思い、シクスは次の行動を起こすことにした。


「よし。幹部を集めてくれ。攻勢計画を練るぞ」


 会議で帝国軍は山越え攻撃作戦について議論することになった。主な賛成派は第六艦隊で、反対派は地上軍だった。


「最近地上軍の兵士の間では、地面の揺れはミニームの超兵器や塹壕の下に爆薬を仕掛ける工事の揺れだという噂が流れています。そんな揺れが1日に何回も起こるおかげで兵の精神は疲弊し切っています。今すぐ攻勢に出るのではなく少し休息をいただきたい」


「ですが、せっかく断った補給路が生き返っては意味がありません。ここは今すぐにでも山間部まで掌握すべきです」


 結果、妥協案として山越えは延期とし今は山の麓にある敵の本拠地となった村を奪還することが決まった。その作戦後に地上軍は新たに後方から来た師団と交代し、山越えに向けて空中輸送船団による武器弾薬と食糧の補給も行うことになった。


 そして数日後、奪還作戦の決行日が来た。


「対地上砲撃開始。当該空域に展開中の部隊は退避せよ」


 弾丸は遠く離れた敵拠点に向けて放たれた。轟音が空に響き渡る。偵察部隊から送信される映像や地上部隊からの情報からは続々と命中の報が入ってきた。砲撃は地形が変わるまで行われ、地上の建造物は跡形もなくなっていた。


「地上に展開している全部隊は突撃を開始せよ」


 戦車は煙を上げて燃料を燃やし、歩兵は塹壕から飛び出すと敵めがけて駆け出した。砲撃を免れたミニーム軍の火器は火を吹き、突撃を敢行する帝国軍を襲った。帝国軍は戦車を盾にしながら応戦し、航空支援や艦隊からの精密射撃により脅威を排除した。


「全軍、敵の一つ目の防衛線を突破しました。今のところ問題ありません」


 弾薬の消費が予定していた半分ほどになると帝国軍は最後の拠点攻略に乗り出していた。しかし山肌を掘りコンクリートで固められた要塞は砲撃をものともせず、帝国軍の進軍を止めた。想定以上の堅牢さに帝国軍は攻めあぐねることとなり、そのまま戦場は夜を迎えた。


 その晩、帝国軍は戦況を整理するために一部の指揮官が集まった


「敵の要塞は堅牢であり、予定していた明日中の攻略は厳しいかもしれません。敵は弾薬や食糧の備蓄も十分あるようであり、このまま持久戦となればこちらが不利となるでしょう」


 帝国軍は攻略作戦の開始前に一時的な補給を行なっていたが、それでも十分な量を補給できていたわけではなかっった。鉄道の敷設など大量補給の準備が急ピッチで進められていたが、山がちなこの地域では難工事となっていたのだ。


「将軍様、今我々の手元にある兵器だけであの要塞を攻略するとなると、A-1の使用も考えていただきたいのです」


 地上軍指揮官の意見に、他の将校が反応した。


「ですが、一度展開した部隊を引き上げさせてからでないとA-1は使えません。成功するかもわからないのに敵に隙を与えるのであれば、予定を超過しても確実に要塞を攻略すべきです」


 そのまま議論は白熱した。現状、作戦を遂行できる備蓄の限りとミニーム軍が山を越えてくるまでの時間は刻一刻と迫っており、早急な作戦の完遂が求められる。しかしA-1の投下のために敵への攻撃の手を緩めることは敵に脱出の機会を与えるだろう。議論を交わす将校たちの前でシクスは考えていた。すると、ある1人の指揮官が言った。


「この前の補給路遮断作戦の時のように、敵の要塞を埋めることはできないのでしょうか」


「だがA-1を使うとなると友軍の一時撤退は避けられないわけで…」


 議論はまた再開されるかに思われたが、また別の将校が言った。


「要塞の出入り口のみを塞げば良いのではないでしょうか。敵を要塞に閉じ込めればあとは兵糧攻めにできます。それだけで兵や弾薬の損失は十分抑えられるかと思います」


 その後、陣地設営のために持ってきていたコンクリートなどの建材は急いで前線まで輸送された。夜が明けると帝国軍はミニーム軍の封じ込め作戦を開始し、ミニーム兵を要塞へと追い込み、出入り口を発見すると全てにコンクリートを流し込んだ。山にいくつもあった出入り口はほとんど塞がれ、要塞の奥深くにあった出入り口やミニーム軍の抵抗が激しいところには砲爆撃が降り注いだ。その結果ミニーム軍は要塞の外に出る手段を失い籠城を余儀なくされることとなった。


「将軍様、一定時間に砲撃を加えるようにしましょう。そうすれば要塞内の兵士は精神的な苦痛に耐えられなくなるでしょう」


 それから数日間、要塞の兵糧攻めが続いた。1日に数回、昼夜を問わず要塞には砲弾が直撃し、銃をかついで外に出てきたミニーム兵は容赦なく射殺された。戦場には弾除けとして同じ顔をしたミニーム兵が積み上げられた。


「将軍様、敵は一向に降伏する気配を見せません。我々が砲台を壊せば敵は新たに横穴を開け、我々がそこに出来た新たな砲台を壊すというようなことが連日繰り返されています。こちらの兵士にも疲労がみられるので早期の作戦完遂が求められます」


「あと数日すれば後方から交代の師団と輸送船団がくる。それまで持ち堪えられないか」


「あと数日なら大丈夫だと思いますが…。結構ギリギリになるかと」


「ギリギリでも持ち堪えられるなら十分だ。なんとかやってくれ」


 すると将校が紙切れを持って急いでやってきた。


「将軍様!敵の要塞が崩壊したとのことです!」


 渡された紙には要塞を包囲していた地上軍からの報告が書かれていた。それは『大きな地響きとともに山が崩れ始め、それに伴って要塞も崩壊。要塞内にいたミニーム軍や付近に展開していた帝国軍部隊の安否は不明』と告げていた。


「すぐに救出部隊を向かわせろ!戦闘機隊はこの空域にミニーム軍を近づけるな!」


 その後、偵察写真が送られてきた。要塞があった部分は完全に崩落しており、山はスプーンで削り取られたようになっていた。


 帝国軍の救助活動でミニーム軍兵士の捕虜が数名収容された。最初こそ抵抗を見せたものの、栄養不足でその場で倒れ込んだということだった。捕虜の表情には血の気が通っておらず、それを見た帝国軍兵士は不気味さを覚えた。捕虜は第六艦隊へと連れられ、尋問を受けることになった。


「この前収容した捕虜から何か情報は得られたか」


「いえ。どの捕虜も言うことが同じというか、ほとんど何も知らないようなんです」


「どういうことだ?」


「全員、軍隊に入る前の記憶がないんです」


「記憶がないはずないだろう」


「これを読んでください」


 シクスは尋問の聴取内容が書かれた紙を渡された。尋問には自白剤が使用されたことも書かれていたが、捕虜は入隊以前の記憶を話せず、口調も全員同じだったということだった。


「全員が何らかの記憶操作と再教育を受けているものかと思われます」


「ミニーム国内の状況を知る必要があるな。帝都の本部に伝えておいてくれ」


 ミニーム共和国は帝国本土への侵攻とラース地域の早期占領という目標に失敗し、無駄に戦力を浪費してしまう結果となった。この結果に大統領は憤慨し、作戦を指揮していた人物の一部が不審死を遂げることとなった。一方で帝国はミニーム共和国を小国であると軽視していた結果、ミニーム国内の情報不足により領内への侵攻を許してしまった。しかし徹底的に管理されたミニーム国内に潜入することはもはや困難であり、情報を得られるまでしばらくの間、帝国軍はミニームへの侵攻を中止せざるを得なくなったのだった。

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