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惑星記  作者: フランクなカイザーフランク
第三章 対帝国秘密同盟
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作戦準備

 敵拠点への攻撃が始まってから1週間。帝国軍による連日の砲爆撃で地形は歪み、地上は泥と肉片に覆われていた。しかし敵の数は減る気配を見せず、昼夜問わず大軍が谷から押し寄せてくる。地上に加えて空からもミニーム共和国軍は襲来し、毎度空を埋め尽くすほどの規模で来ては艦隊に突っ込んで散っていた。息継ぎのない戦場に帝国軍兵士は疲弊していたが、自動化が進んだ兵器を配備していたことと敵が航空戦艦のような主力を投入していなかったことで戦線の維持には成功していた。シクス将軍は旗艦に地上防衛軍の指揮官と第六艦隊の将校を集めて今後の作戦計画を練っていた。


「我々地上軍は敵の突撃を食い止めてはいますが、弾薬は尽きつつある状況です。築いた防衛線も出来て数日で破壊され、この状況が続けば地上からの反撃はおろか戦線を維持することも難しいです。さらなる航空支援と後方からの補給を求めます」


 地上軍総司令官に続いて第六艦隊の将校が言った。


「現状、断続的な敵の航空攻撃を防ぐので手一杯で、地上への攻撃は戦艦からの砲撃と敵の攻撃が止んだ時に出撃させる爆撃隊のみになっています。弾薬や食糧は当分の間保ちますが、制空権を確保しない限りは反撃に出れません。また、偵察によると敵航空艦隊が山の裏に潜んでおり、山脈を越えたとしても集中砲火を浴びる恐れがあります」


 艦内にサイレンが鳴り響いた。地上軍の指揮官は慌てるが、第六艦隊の将校たちは驚くほど落ち着いていた。


「対空戦闘配置。対空戦闘配置」


 立ちあがって避難しようとする地上軍の指揮官を見て、シクスは言った。


「大丈夫だ。座ってくれ。この規模なら十分に対処可能だろう。会議を続けよう」


 指揮官は戸惑いながら座り、シクスは続けた。


「敵がこれまでに投入した兵力は推定でも20万だそうだ。これは侵攻前に確認されたミニーム共和国軍の10%にあたる。だからこのまま防衛すれば敵の力も尽きるはずだ。他の航空艦隊は修復とオトシュの治安維持で出払っているから援軍は期待できないと思ってくれ」


 全員が沈黙する中、地上軍の指揮官が言った。


「シクス将軍様、兵士から一つ奇妙な話を聞きました。死んでいた敵兵はどれもひどく痩せていたそうなんです。もしかすると敵は大軍を送りすぎて補給が追いついていないのかもしれません」


「敵の補給路を断てればいいが、何か案はないか?」


 シクスがそう言うと地上軍の指揮官が言った。


「山に砲撃か爆撃をして、崖崩れで分断するのはどうでしょうか」


 その案は以前艦隊幹部で行った作戦会議ですでに上がっていた。しかし敵の攻撃が激しく防戦に戦力を割かなければならなかったため却下となったのだった。そのことを踏まえて艦隊の将校は反対したが、シクスは実行できないか考えた。


「地上軍はどれくらい余裕があるんだ?」


「先ほども申しましたように、防衛だけで手一杯でとても攻勢に出れるような戦力は余っていません」


 シクスは頭を抱えた。艦隊に温存している攻撃隊はあるが、敵の間髪入れない攻撃で出撃させるタイミングがなかった。すると地上軍の指揮官が言った。


「新型爆弾は使えないんですか?」


 艦隊の将校も心のどこかでその考えがあったがシクスが反対するので心の底に押し込んでいた。将校、指揮官がシクスの顔を見るとシクスは目を瞑って考えているようだった。しばらく考えた後でシクスは言った。


「特務大隊に作戦内容を伝えろ。地上軍、第六艦隊でなんとか敵の隙を作ってA-1爆弾を投下させる」


 その後「補給路遮断作戦」の内容が決められ、決行日は3日後とされた。作戦内容はジェルソン少佐に伝えられ、次の日には帝都から新装備が届いた。ジェルソン少佐はそれを格納庫に運び、大隊全員を集めた。


「次の任務は敵の補給路を断つことだ。第一中隊でA-1を山に当てて山を崩すことで谷底にいる敵を一網打尽にする。作戦の第一段階は地上軍と第六艦隊が連携して敵の拠点にある防空設備を破壊する。第二段階は艦隊から戦闘機隊が出撃して一時的に谷までの制空権を確保する。制空権を確保でき次第、第三段階に移行しこの大隊と他の囮の爆撃隊が出撃して谷を目指す。そして他の爆撃隊が敵軍を爆撃して混乱している隙に第一中隊がA-1爆弾を所定の位置に投下し帰投する。他の中隊は投下地点とは別の場所へ向かって敵の攻撃を分散させてくれ」


 ジェルソン少佐は新装備を取り出してみせた。


「この作戦では投下地点ちょうどに爆弾を命中させなければならない。そのために帝都から新装備をもらった。これは誘導装置を取り付けたA-1爆弾だ。これを投下する。今日と明日でキース中尉には使い方を覚えてもらいたい。そのために今から模擬爆弾を落としに出撃する。準備しろ」


 誘導装置が付けられた模擬爆弾がゆっくりと機体に格納されて爆弾倉が閉じられた。アモスとセイツェマンは爆撃手の席に新しく置かれた装置を興味深そうに見つめていた。


「こんなちっさいレバーで本当に操作できるのか?」


「帝国の技術があればできるだろう。多分」


 そこへキース中尉がやってきた。


「誘導装置につながるケーブルで操作するんだそうだ」


「もう講習は終わったんですか?」


「まだ完璧に理解できていないが、実際にやっていけばわかると言われた」


 不安が残るものの、第一回誘導爆弾投下訓練が行われた。第一中隊だけで出撃し、指定された敵拠点へと向かう。あらゆる方向から砲弾やミサイルが飛来し、エネルギー装甲がなければ何度も死んでいた。中隊は何事もなく目標地点に到達し、機体から誘導爆弾が切り離された。


 爆弾の尻へと伸びるケーブルがどんどん外へ引っ張られていき、キース中尉は照準器を見ながらレバーを動かして爆弾を操作した。


「もうすぐ弾着です」


 照準器を覗きながらキース中尉が言う。

 すると目標から数メートル離れた場所で爆発が起こった。


「初回は失敗だな。まあまだ次がある」


 ジェルソン少佐の言葉は少しキース中尉を焦らせた。その後第二回、第三回と訓練は行われたがどれも失敗で、一度も成功しないまま作戦当日を迎えることになった。


「今日は少し天候が悪いが作戦は予定通り決行される。皆、気を引き締めてかかれよ」


 ジェルソン少佐の言葉に隊員は威勢よく返事をし出撃準備を始めた。一方でキース中尉は誰の目から見ても明らかなほどプレッシャーに押しつぶされそうになっていた。アモスが話しかけているのを見て、セイツェマンも中尉に声をかけた。


「大丈夫ですか?」


「大丈夫ではないな。不安しかない。セイツェマンは本番で成功すると思うか?」


 セイツェマンは内心失敗すると思っていたが、キース中尉を励ますためにも肯定的な意見を述べた。しかしアモスははっきりとこう言った。


「そのままでは失敗すると思いますよ」


 セイツェマンとキース中尉は驚いた顔でアモスを見た。アモスは当たり前のような顔をして話を続けた。


「今日は風が強いですし、敵の攻撃も激しいでしょう。なので訓練通りにはいかないと思います」


 落胆してしまったキース中尉の横で、セイツェマンはアモスを叱ろうとした。だがアモスはこう言った。


「必ず失敗するとは言ってません。そのまま不安だけを残してたら失敗すると言いたいんです。訓練通りにならないということは成功するかもしれないと思いませんか?」


 キース中尉は黙って話を聞いていたが、少し顔色が良くなったような気がした。


「何事も不安に思いすぎると失敗するだけです。思い切ってやってみましょうよ?」


 アモスにキース中尉は答えた。


「そうだな。やってみる」


 ジェルソン少佐に呼ばれて中尉は歩いて行った。残されたセイツェマンはアモスに尋ねた。


「なんかいつものアモスらしくないな。どうしたんだ?」


「どうもしてない。ただ中尉が成功するように背中を押したかっただけだ」


「そうか」


 普段は深く物事を考えてなさそうだと思っていたが、アモスの印象が少し変わった。


 作戦準備が進められA-1爆弾が爆弾倉に積み込まれている時、アナウンスが流れた。


「作戦開始。ミサイル、主砲は発射手順に入れ。戦闘機隊、爆撃隊は出撃準備せよ」


 ここに、補給路遮断作戦が始まった。

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