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惑星記  作者: フランクなカイザーフランク
第三章 対帝国秘密同盟
37/51

林檎の子

「セイツェマン!一体ここに何隻いると思う!」


 セイツェマン、アモス、ランドルの3人は甲板に出て、新しく編成された第七艦隊を眺めていた。


「この前に六大艦隊全部が集まった時くらいいるね。それにあの黒いのは新型艦かな」


 ランドルの目線の先には空に浮かぶ黒いエイのような艦があった。


「あれは皇帝陛下の名前がつけられた戦艦だそうだ。噂によるとサイシュ公国が撃っていたあの光線と特務大隊の持つエネルギー装甲を備えているらしい」


「まさに最終兵器って感じだな」


「あの光線が撃ててエネルギー装甲もあるなんて、太刀打ちできる国はないね。セイツェマンがあれについて知ってることは他にないの?」


「名前以外は何も知らないな。あれが気になるのか?」


「だって僕らの乗ってる戦艦の十数倍はある大きさだよ?気にならない方がおかしいよ」


「俺だって気になる。セイツェマンも本当は気になって仕方ないんだろ?」


「まあ、実を言えばあの戦艦のことはジェルソン少佐に頼み込んで教えてもらったんだ」


「やっぱり気になるよね、あれ」


 3人が話していると、突然警報が鳴った。


「主砲発射準備!総員艦内へ退避ー!」


 セイツェマンをはじめ甲板にいた者は走り出し、急いで艦内へと入った。アモスとランドルも一緒だと思っていたが、アモスしかいなかった。


「あれ?ランドルは?」


「この入り口が混んでそうだったからあいつは別のとこから入って行ったぞ。にしても突然警報が鳴るからびっくりしたな」


「ああ。敵が近いということなのかもな」


「でもそれなら隊の招集があるはずだろ?」


「なら訓練か?」


 セイツェマンは窓から艦の外を見たが、艦の主砲が動いている様子はなかった。


「やはり訓練かもな」


 セイツェマンがそう言った次の瞬間、外が明るくなった。艦内で「おぉっ」と声が上がり、皆が見ている方向を見ると黒いエイが光線を発射していた。


「あれだったんだな」


 アモスが言った。


 光線は一直線に空の彼方へと飛んでいった。




 一方でシクスは第七航空艦隊旗艦ルーサスにいた。そこにはワンス将軍と皇帝がいた。


「シクスか!ここまで大変だっただろう!」


「ワンス兄さんこそ大丈夫なんですか?向こうで怪我などされてないですか?」


「どうってことないから大丈夫だ!シクスもよく1人でこの戦線を支えてたな」


「そんなことありません。国境まで押されてしまったのは私の責任です。申し訳ありません」


「この艦隊が来るまでよく耐えた。これは賞賛に値すると思うぞ」


「ありがとうございます。ですがこの責任はいずれ取ります」


「…そうか。まあとりあえず今は目の前の戦いに集中することだな!」


「はい。我々第六艦隊は何をすれば良いですか?」


 すると、皇帝ルーサスも話に入ってきた。


「お前たちには都市の制圧をやってもらう」


「都市の制圧ですか。艦隊戦はやらなくても良いんですか?」


「敵の残存艦隊はミニーム共和国へと撤退しはじめている。撤退を阻止したいところだが、この規模の艦隊では俊敏に動く敵を追うのは難しい。そこで敵艦隊を追跡する艦隊とラース地域を制圧する艦隊とで分けたいと思っている」


「今我々は特殊砲を撃って敵艦隊を攻撃しているところだ」


 ワンス将軍が補足した。シクスは一通り話が終わると、皇帝に聞いた。


「第六艦隊はラース地域の都市にいるレジスタンスを掃討すればいいんですね」


 皇帝は少し様子を変えて言った。


「抵抗する者は全てだ。武器の有無に関わらず徹底的にやってくれ」


 シクスは驚いて聞き返した。


「民間人も殺すということですか?」


「そうだ。A-1爆弾の使用も許可する。抵抗する都市は地図から消すのだ」


 シクスはワンス将軍を見たが、ワンス将軍は遠くの空を見ていた。


「わ、わかりました」


 シクスは専用機に乗り、黒いエイから飛び立った。




 第29A特務大隊は招集された。部屋に集まると、ジェルソン少佐が話し始めた。


「先ほど、シクス将軍様から命令を受けた。任務は敵都市の制圧だ。各中隊に分かれて指定の都市を制圧せよ。そして、この作戦では全機にA-1爆弾が搭載されることになった。敵の抵抗が激しければ投下せよとの命令だ。一応、現在都市に展開中の部隊が住民に対して警告はしているそうだから躊躇う必要はない。ブリーフィングは以上だ」


 ブリーフィングが終わり、セイツェマンは少し不安と罪悪感を感じていた。単にA-1爆弾を落とすことですら罪悪感があったが、それを民間人に対して使うのはより躊躇われた。大隊の中にも同じような気持ちを抱いているのであろう隊員がいることは顔を見るとすぐにわかった。ランドルもその1人だった。


「ランドル、顔に出てるぞ」


「ああ、セイツェマンか。そんなに顔に出てた?」


「誰でもこの作戦に思うところはある。私だってそうだ」


「やっぱり民間人に投下するのはおかしいよ。僕はこの作戦に加担するのは嫌だ」


「あまり大きな声で言うなよ。誰に聞かれてるかわからないぞ」


「でも、これはおかしいよ。セイツェマンはあの時のことを忘れたの?」


「忘れるわけないだろう。だが、これは戦争だ。上の命令には逆らえないし相手を殺さなければ私たちが殺されるんだぞ。仕方がない」


「それはそうだけど…」


 ジェルソン少佐が出撃準備の号令をかけ、セイツェマンとランドルは格納庫へ走った。


 機体にA-1爆弾が搭載され、セイツェマンは銃座についた。そして、大隊全機の出撃準備が完了するとジェルソン少佐は大隊に出撃を命じた。

 機体が外に射出されると遠くの空には特殊砲を発射する第七艦隊の姿が見えた。


「各中隊は事前に指定された地点へ向かえ」


 ジェルソン少佐の命令で大隊は4つの中隊に分かれて飛んでいった。


 しばらく飛ぶと、遠くに街が見えてきた。


「前に見える街が目標地点だ。街の中心にある建物に立てこもっているレジスタンスに対して爆撃をする」


 ジェルソン少佐がそう言うと、アモスが質問した。


「A-1は使わないんですか?」


「ここは地上部隊によってほとんど制圧されているから、支援爆撃程度だ。本番は次からだぞ」


 セイツェマンは内心ほっとしていた。


 普段の手順で爆撃を済ませると、中隊は次の目標へと向かった。


「次の場所はかなり激しいらしい。キース、念のためにA-1爆弾を使う用意をしといてくれ」


 だんだんと見えてきた草原の中にある街は、黒い友軍に囲まれあちこちから煙が上がっていた。


「こちら第29A特務大隊第一中隊。爆撃地点を指定してくれ」


 地上部隊から無線が入った。


「助かった!すぐに爆撃してくれ!座標は…」


 座標を聞くと中隊はすぐに速度を上げ、爆撃態勢に入った。


「キース!通常爆弾を投下だ!」


 爆弾倉が開き、弾丸が飛び交う戦場に爆弾が投下された。中隊が通ったあたり一面は爆炎に包まれ、建物は跡形もなく崩れ去った。しかし敵の攻撃は止まず、中隊に対しても対空砲火が始まった。


「エネルギー装甲全面展開!一旦離脱するぞ!」


 中隊は激しい弾幕の中を突っ切って街の外に出た。


「こちら第29A特務大隊第一中隊。A-1爆弾の投下をするために地上部隊を被害範囲から退避させてほしい。できるか?」


「わかった!一発デカいのやってくれ!」


 街を囲っていた友軍地上部隊の輪は徐々にその半径を広げていった。


「退避完了!」


 地上部隊からの無線が入る。


「キース、A-1爆弾を用意してくれ。第一中隊は1番機が投下後全速力で離脱せよ。隊列は気にするな」


 中隊は速度を上げて街の上空に入った。地上からの対空砲火は激しくなり、機体は揺れた。


「投下!」


 開かれた爆弾倉からA-1爆弾が投下された。地表には多くの建物が建っているが、その中にいるのが民間人か軍人かはわからない。


「全機退避!退避!」


 ジェルソン少佐は大声で呼びかけ、速度を上げた。セイツェマンは落ちていく黒点を目で追いながら、揺れる機体にしがみついた。


 そして、見慣れた光が目を突いた。街の影は際立ち、火球が空中に現れた。空からは衝撃波が地上を這っているのが見え、衝撃波の後は土埃が舞っている。火球は煙を伴いながら上空へと昇り、大きな雲を作った。


「衝撃波がきます!」


 セイツェマンが叫ぶと同時に機体に衝撃が加わった。セイツェマンは吹き飛ばされないように強く機体を掴んだ。揺れが収まると、ジェルソン少佐は全機の無事を確認した。


「敵に生き残りはいそうか?」


 街の上空を旋回しながら爆弾の威力を確認した。爆心地と思われる場所は更地に変わっており、街の大部分が破壊されていた。


「第29A特務大隊、支援に感謝する」


 街への侵攻を開始する地上部隊から無線が入り、中隊は次の目的地へ進路をとった。

 その後、第一中隊がA-1爆弾を投下することはなかったが、他の中隊は2発ずつ投下していた。この作戦で合計7発のA-1爆弾が都市に対して使用され、対帝国同盟は十分な武器を持たないレジスタンスや民間人に対しての無差別攻撃を批判した。一方でレジスタンスは活動をやめ、残党の一部は同盟加盟国に亡命するなどしたことでラース地域制圧作戦は終了し、ラース地域は再び帝国に支配されることとなった。




 数日後、第六、第七艦隊はオトシュ戦線に展開していた。皇帝の提案で六将軍は第七艦隊旗艦ルーサスに集まり、久しぶりの将軍会議を開いた。全員いることを確認すると皇帝が話し出した。


「皆、これまでご苦労だった。皆の努力によって帝国はここまで持ち直すことができた。まずはそのことに感謝したい。ありがとう。そして今日は今後の計画について話し合うために集まってもらった。それではラース戦線の報告をワンス、オトシュ戦線の報告をジースに頼む」


 ワンス将軍は立ち上がり、話し始めた。


「ラース戦線について報告します。ラース戦線では敵の上陸部隊がレジスタンス支援の下帝国領に向けて進軍していました。当時レジスタンス掃討任務にあたっていた第六艦隊が上陸部隊の進軍を抑え、先日第七艦隊が上陸部隊の撃破に成功しました。レジスタンス勢力はほとんど姿を消しましたが、敵の主力艦をはじめとする敵上陸部隊所属の残存航空艦隊のミニーム共和国への逃走を許してしまいました。現在ラース地域は第七艦隊所属の第4、第5、第6近衛艦隊が治安維持と守備を行っています」


 続いてジース将軍も報告した。


「オトシュ戦線では敵の特殊砲が脅威となり思ったような防衛戦はできずにいます。第三艦隊の砲を使って足止めを試みていますが敵は依然として帝国領内を進軍中です。地上の防衛線は敵航空艦隊の砲撃によりことごとく破壊され、帝国航空艦隊の損害も少なくなく、全体として戦力の消耗が激しい状況となっております」


 ジース将軍に対して皇帝が聞いた。


「帝都の状況はどうなっている。市民の避難は完了しているのか」


「敵の進軍を遅らせたおかげで帝都の市民は郊外に避難を完了しております。ですが、地域住民で構成された自警団は帝都に残り、戦闘に参加する意思を見せております」


 帝都では戦意が高揚しており、都市防衛隊への志願者が増加していた。


「そうか。ひとまず敵艦隊は第七艦隊が引き受けよう。消耗している第二、第三、第四艦隊は第五、第六艦隊と交代しなさい」


 皇帝の言葉にジース将軍が聞いた。


「今日の話はこれだけですか?」


 皇帝は気持ちを切り替えるように深く息を吐いて言った。


「もちろんこれが本題ではない。今日集めたのは惑星記について話があるからだ」


 6人の将軍は皇帝の落ち着いた様子に不気味さを覚えた。


「この前、惑星記に予言のようなものがあると言ったが、あの時解読できていなかった文章の解読に成功した。その文章は『第七が揃いし時、地は揺れ天は割れ、文明は跡形もなく惑星から消える』だ。そしてこれまでに存在した文明は必ず惑星記に書かれた通りの運命を辿っていることもわかった。惑星記第六章に登場する数億年前に存在した文明は『自壊』の運命だったようだ。解析中のところも多いが、その文明が滅んだことは現在発見されている遺跡などを見ればわかる」


 ワンス将軍が聞いた。


「今あるこの文明は、やはり滅ぶということでしょうか」


 皇帝は少し間を空けて言った。


「信じがたいがそういうことだ」


 将軍らは声に出さなかったが動揺していた。皇帝が続けて言う。


「だが生きる望みが失われたわけではない。第七と言っても何の七つなのかはわからない。それに我々の世代が滅びの世代なのかもわからない。きっと我々には時間が残されているだろう。来る滅びの日までにこの種を存続させるための考えを思いつけば良いだけなのだ。だからまだ大袈裟に悩む必要はない」


 皇帝の言葉に安堵する表情を見せる将軍たちであった。ジース将軍が皇帝に質問した。


「ではこれからやってくるであろう滅びの日に向けて皇帝陛下は何をされるおつもりなんでしょうか」


「それが今日1番伝えたかったことだ。私はこの事実を知って、世界中の人類を統一する必要があると考えた。そこで今後、我々シグマ帝国は“世界統一”を目指す」


 将軍たちは思わず声を漏らした。今の帝国にそのような力があるとは思えないことに加え、皇帝がそのようなことを言うと思っていなかったからだ。皆が動揺する中でフィフス将軍が聞いた。


「皇帝陛下。世界征服となると莫大な資源が必要となります。それに全ての国を従えるのは現実味がありません。海の向こうにはオトシュ王国や我々に匹敵する国力を持つ国がありますし、山脈の向こうでは民族間の争いが絶えない地域があると聞きます。帝国にそんな世界を征服できるだけの力があるとは思えません。考え直していただけませんか」


 諭すように言うフィフス将軍に、皇帝は力強く答えた。


「フィフス、これは我々帝国だけで手に負えるものではないのだ。滅びの日を乗り越えるためには人類全員の協力が必要だ。それに私は世界征服とは言っていない。世界統一だ。帝国の傘下に入らずとも、人類の危機に対して協力できる関係を築かねばならん」


 ワンス将軍が聞いた。


「もし反対にあったらどうするおつもりですか」


「我々は人類存続のために行動するのだ。反対する者は排除せざるをえないだろう」


「…ということはラース地域でのA-1爆弾の無制限使用は人類存続のためだということですか」


「そういうことだ。だが、これは仕方のない犠牲なの…」


 皇帝の言葉を遮ってワンス将軍は声を荒げた。


「だからと言って殺すのはおかしいんじゃないですか!」


 ワンス将軍の姿に全員が驚いた。ワンス将軍は続けた。


「このままだと父上はオトシュ王国も徹底的に破壊するおつもりでしょう!そうすれば一時的には帝国の下に世界が統一されるかもしれません。ですが侵略戦争後のことを思い出してください!結局また大戦争が起こって帝国は追い詰められたじゃないですか!…力での支配は何の解決策にもなりません。ただ敵を増やし、統一どころか世界を分裂させるだけです。父上、このことを考えてみてください」


 皇帝は少し考えて言った。


「ワンス、私が先の大戦で失敗したことを教えてやろう。それは敵の徹底的な排除だ。先の大戦で中途半端に敵を生かしておいたせいで今の状況がある。今のような状況を二度と生み出さないためには将来に敵となる因子を全て取り除くことだ。お前もいずれ気づくだろう。今は若いからそう思うだけだ」


続けて皇帝は言った。


「よし、今日は解散しよう」


 ワンス将軍は何か言いかけたが諦め、将軍たちは自分の艦隊へと戻っていった。シクスも第六艦隊へ戻ろうとしていたが、ワンス将軍に呼び止められた。


「シクス、すまないが第六艦隊に行ってもいいか?父上とここに残るのはなんだか気まずくてな」


「は、はい。良いですよ」


 そしてシクスとワンス将軍は第六艦隊旗艦シクスへと戻った。シクスはワンス将軍を自分の部屋に入れてお茶を出した。


「ワンス兄さん、なんであんなこと言っちゃったんですか?」


 ワンス将軍はお茶を飲み一呼吸置いて言った。


「父上も自分も変わってしまったのかもしれないな」


「どういうことですか?」


「シクスはなぜ前の大戦を『侵略戦争』と呼んでいるか知っているか?」


「いえ、考えたこともありませんでした」


「あれは父上がそう呼ぶように決めたんだ」


「父上が、ですか?帝国に悪い印象のつく名前をつけても良いことはないように思いますが」


「侵略戦争時代に、父上が戦地で出会った女性に言われたそうだ。『お前ら帝国がやってることは侵略そのものだ』と。それまで父上は先代の皇帝、つまり我々の祖父が領土を拡大することで自国民だけでなく占領地の住民も幸せになると考えていたそうだ。だがその当時の帝国は他の国と同じように占領地を資源収集の場所としてしか見ていなくてな、その土地の住民は大変苦しい生活を強いられていたようだ。だから父上は先代皇帝亡き後に改革をして、新たな占領地も帝国の都市としてしっかり整備をし、帝国領内の全市民が幸せに暮らせる制度を整えたんだ。そして、過去の失敗を忘れないためにあえて先の大戦を侵略戦争と呼んだらしい。その頃の父上はまさしく賢王だった。だが今の父上は先代の皇帝と同じ道を歩もうとしている、そう思わないか?」


「確かに今の父上は何かに焦っているように見えます。ですがそれは先代皇帝のような領土拡張の野望ではなく、人類存続のための希望を求めた行動だと私は思います。だから父上は何も変わっておられないと思います」


「ならシクスは今の父上の行いを許して良いというのか」


「いえ、そういうわけではありません。軍民関係なく攻撃するのは私も反対です。ですから、父上をなんとか説得して妥協案を探すしかないんじゃないでしょうか」


「それはそうだが、今は時間がない。早くしないとオトシュ王国に対して特殊砲が発射されてしまう。何かいい案はないか」


 2人は俯いて考えた。部屋には静寂が漂う。


「兄さん、こういうのはどうでしょうか。特殊砲ではなく通常の主砲を発射するように命令して、父上を騙すというのは」


「それでは結局民間人に被害が出るではないか。それに音や光でバレるだろう」


 再び静寂が戻る。


「じゃあ、父上がいつも飲まれるお茶に睡眠薬を入れて眠っておられる間に講和を結ぶのはどうですか」


「向こうが講和に応じるとは限らないだろう。それにそんなことしたら反逆罪で2人とも死刑だ」


「そうか…うーん」


 シクスは今までの話を振り返りながら考えた。父上の計画、侵略戦争の名前の由来…。すると一つの案が浮かんだ。


「父上が出会った女性に説得してもらうというのはどうですか!」


「父上に侵略戦争だと言い放った女性か?」


「はい!その方なら父上を説得できるのではないですか?」


「だが、どこにいるのか、そもそも生きているのかもわからないぞ。何かツテはあるのか?」


「私の補佐をしているドーゲンなら何か知っているかもしれません。ちょっと聞いてきます」


 そう言うとシクスは部屋を飛び出した。そして、艦橋にいたドーゲンを見つけた。


「ドーゲン!」


「将軍様、どうされましたか?」


「少し話がある!来てくれるか!」


 シクスの焦った様子に何事かと思いつつ、ドーゲンはワンス将軍のいる部屋へと入った。


「君がドーゲンか」


「はい。シクス将軍様の補佐を務めております。ドーゲンです」


「侵略戦争時代から軍にいる君に少し聞きたいことがある。まあ腰を下ろしてくれ」


 ワンス将軍に促されてドーゲンは椅子に座った。


「君は侵略戦争の名前の由来を知ってるか?」


「はい。皇帝陛下が過去の過ちを忘れないためにつけた名前だと聞いております」


「その名前はある女性がきっかけだったと聞いたのだが、何か知っていることはあるか?」


 ドーゲンは驚いた様子で言った。


「その話をご存知でしたか。皇帝陛下は占領した土地で出会った女性に言われたことがきっかけでお気持ちが変わられたそうですよ」


「その女性はまだ生きているか?」


「それは…私には分かりませんね…」


将軍2人は落胆した。


「ですが、ルビウスなら何か知ってるかもしれません」


「おお、そうか!連絡とってくれるか?」


「はい。少しお待ちください」


退室してしばらくするとドーゲンは受話器を持って戻ってきた。


「今、ルビウスと繋がっています。どうぞ」


スピーカーに繋ぎ、ワンス将軍は話した。


「私はワンスだ」


「ワンス将軍様ですか!こちらはルビウスです。皇帝陛下と親しかった女性をお探しとお聞きしましたが?」


「ああそうだ。侵略戦争の名前をつけるきっかけになった女性について知りたいのだが、まだ生きているのか?」


「はい、ついこの前も皇帝陛下はその女性の家を訪ねられていたそうですから」


 ワンス将軍とシクスは顔を見合わせて笑った。


「なら、その女性の家の場所はわかるな?」


「はい。確かバカラシントシだったと思いますよ」


「そうか!詳しい住所もわかるか?」


「えーっと…そこまで詳しいことは分かりませんが名前は確か『アルマ』さんだったと思います」


「ありがとう!おかげで助かった!」


「お役に立てたなら幸いです」


 通信を切りドーゲンが退室した後、2人の将軍はすぐに準備に取り掛かった。


「シクス、お前探しに行けるか?」


「ただでさえ忙しいんですから無理ですよ」


「なら誰か他の者に行かせるしかないな。シクスのところで使えそうなやつはいないか?」


「うーんそうですねぇ…」


「あ!あれはどうだ、第29A特務大隊のやつは。収容所で会ったがなかなか良い部隊だったぞ」


「ですが、彼らは重要な戦力です。そう簡単に別の任務を任せるわけには…」


「それについては大丈夫だ。うちの101戦闘爆撃隊が復活したからな。爆撃任務はこっちに任せてくれ」


「そうですか…じゃあ特務大隊に行かせます」


「くれぐれも極秘で頼むぞ。何万人もの命がかかってるんだからな」


「はい…」


 シクスは少し胃が痛くなりながら世界を救う特別任務を始めたのだった。

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