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惑星記  作者: フランクなカイザーフランク
第三章 対帝国秘密同盟
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救済兵器

 戦局の優勢を祝って、オトシュ王国王都では久しぶりの祝宴が開かれていた。各国代表たちが顔を赤くして料理を食べる中、シーヤがベルドマンに話しかけた。


「まさか本当に宴会を開くとは思いませんでしたよ」


「男に二言はない。それに同盟内にできた溝が少しでも埋まればと思ってな」


「今回はエアード王国、それにべルドマンにはお世話になりました。今後もよろしくお願いします」


「同じ目的を追う者同士なら当たり前のことだ」


 シーヤは持っていたグラスの酒を少し飲むとベルドマンに小声で言った。


「ミニーム共和国の提案はどうしますか」


「ここでも仕事の話か」


 先の戦いでエアード王国がミニーム共和国の国境まで進出したことで上陸部隊は補給路を確保できた。しかし上陸部隊の損耗は激しく、唯一の主力艦が帝国の攻撃で大破したことで一旦進軍を止めることになった。そこでミニーム共和国はエアード王国航空艦隊の修理をミニーム共和国で行うことを提案。帝国本土が目と鼻の先である今、同盟としてはすぐにでも艦隊を再建したかったが、ミニーム共和国で作業を行うと航空戦艦の機密事項がミニーム共和国に漏れる危険性があり、オトシュ王国とエアード王国は決断を渋っていた。


「我が国の技術が漏れるのは避けたい。だから修理が必要な艦を本国へ戻し、新たな戦力を送れれば良いのだが。どうだ?」


「私も技術漏洩に関しては賛成です。ですが、増援が到着する前に帝国の防衛線が強固になってしまえば元も子もありません。なのでミニーム共和国に航空戦艦の修理と戦力の補強を頼み、帝国に侵攻するのが良いのではないかと思います」


「うーん…だがなぁ、ミニーム共和国に借りを作って大丈夫か?彼らは最近力を増してきているんだぞ?」


「ですがここで拒否すれば同盟内の溝はより深まりますよ」


 ベルドマンは眉間にシワを寄せ考え込んだ。


「とりあえず本国に掛け合ってみる」


「ありがとうございます。ミニーム共和国の代表にも機密保持の件など話してみます」


「頼むぞ」


 その後、正式にミニーム共和国はエアード王国航空艦隊の修理を引き受けることとなり、ミニーム共和国軍も一部が帝国領侵攻作戦に加わることになった。さらに補給艦として使っていた航空戦艦にも武装し、戦力の増強を図った。




 一方帝国側も本土防衛のために持てる戦力を全て投入していた。ラース戦線の第六艦隊には療養を終えたフィフス将軍と共に第五航空艦隊が加わった。


「フィフス兄さん!もうお身体は大丈夫なのですか?」


「ああ、もう手足は自由に動かせるぞ!それにしてもシクス、ここまでよく1人で頑張ってきたなぁ」


「いえ、結局こうして国境まで押し込まれてしまったのは私の責任です。いずれこの責任はとります」


「心構えは素晴らしいが、この件は結果で返すことだな。それが1番良い」


「はい。わかりました」


「わかったならよろしい」


「バカラシントシの皇帝陛下はもう避難なされたんですか?」


「皇帝陛下だけでなく市民全員が避難した。だから心配しなくていい。それより、敵に動きはあったのか?」


「偵察によるとミニーム共和国から増援部隊が来ました。最新兵器で身を固めた手強い部隊のようです」


「航空戦艦はどうなんだ?」


「現状はどうかわかりませんが、先の作戦の最後に新たな敵艦隊の増援を確認しています」


「そうか。第五艦隊は改修も終えて物資も十分だ。だから敵の航空艦隊を発見できるまでは第六艦隊はゆっくり休んでくれ」


「ありがとうございます。では偵察などお任せします」


 先の戦いで増援の艦隊だと思われた艦隊は補給艦で構成されていた艦隊だったが、その艦隊が武装をしたことで帝国は最後までそれに気づくことはなかった。


 しばらく経ち、フィフス将軍から連絡が入った。


「敵に動きがあった。この前のよりデカいぞ」


 シクス将軍は艦隊を展開し、次の戦闘に備える。


「敵艦隊をレーダーで捕捉!規模はこちらと同じ程度です!」


「攻撃隊発進せよ」


 シクス将軍の合図で攻撃隊は敵艦隊へと向かった。しかし、同時に敵も攻撃隊を出撃させていることがレーダーに映った。


「対空戦闘配置。主砲に対空弾を装填せよ」


 砲塔が動き、着々と準備が整えられていった。


 数分後、迎撃に上がっていた部隊が接敵した。敵は主に爆撃機で構成された部隊で、所属はエアード王国とミニーム共和国の2つだった。敵の攻撃隊は迎撃をものともせず艦隊に向かってきていた。


「主砲発射せよ」


 射程に入り、シクスは射撃命令を出した。射撃警報が鳴り、射撃手順に則って主砲が轟音を発する。弾丸は空を切って飛んでいく。爆発までのカウントダウンが流れる中、味方の攻撃隊から無線が入った。


「間も無く敵艦隊!この前A-1爆弾をくらった戦艦が主力だ!それにミニーム共和国の航空戦艦もいる!」


 A-1数発を受けてなお戦闘継続ができていることに驚いたが、それ以上に小国であるミニーム共和国が航空戦艦を運用できていることに驚いた。


「対空弾が炸裂しました。被害は大きくないようです。残りの敵はそのままこちらに向かってきています」


「主砲は次弾装填。対空ミサイルを発射せよ」


 艦隊から白い筋が伸び、方向を変えて敵のいる方向へ飛んでいった。


「副砲も射程に入り次第射撃を開始せよ」


 砲撃の頻度が多くなり、静かだった空は轟音に包まれた。射撃のたびに砲口は炎を吐き、硝煙が風に流れていく。


「敵攻撃隊を目視で確認!」


兵士の声が響き渡る。


「総員砲撃戦開始!防空システムをレーダーに接続せよ!」


 シクス将軍の命令で艦隊は一斉に砲撃を開始した。赤やオレンジに光る砲弾が敵に向かって飛んでいく。飛んでいった砲弾は空中で炸裂し、空は一瞬にして黒煙に包まれた。


「敵に爆撃をさせるな!」


 艦橋スレスレを敵機が通り過ぎていき、艦橋を窓を揺らした。その敵機を追って対空砲の黒煙が次々と炸裂していく。すると、鈍い音と共に床が揺れた。


「右舷前方に直撃弾です!」


「すぐに応急修理班を向かわせろ!負傷者は救護室へ運べ!」


 甲板では兵士が必死に働き、引き金を引く者もいれば砲弾を運んでいる者もいる。その空では煙を吐きながら落ちていく爆撃機や対空砲火を突き抜けていく戦闘機の姿があった。


「敵の一個小隊が10時方向より接近!レーダーでロック、射撃開始!」


 レーダーに接続された砲台が動き、近づいてくる爆撃機に集中砲火を開始した。その弾幕に敵機はなす術もなく炎に包まれて落ちていった。


 敵の攻撃が始まり数十分で攻撃隊は帰っていった。旗艦シクスは三発の命中弾を受けたものの、幸い飛行甲板に被害はなく戦闘継続が可能だった。しかし、駆逐艦数隻は命中弾をいくつも受けて撃沈してしまい、加えて中破してしまった艦艇も多く、戦力は削られ始めていた。

 一方で敵艦隊へ向かった味方の攻撃隊も敵の主力に打撃を与えることはできず、損耗が激しかったため帰還命令を出した。


「将軍様、敵艦隊が間も無く主砲の射程圏内です。砲撃戦を始めますか?」


 シクス将軍は少し悩んだ後、フィフス将軍に連絡した。


「敵艦隊と砲撃戦をしますか?」


「まだこちらの損害が撤退を要するほど大きいわけじゃない。本土侵攻をここで食い止めるためにも砲撃戦をした方が良いんじゃないか?」


 2人の将軍の決定で、主砲は砲身を持ち上げた。射撃準備を整えてシクス将軍の命令を待つ。


「敵艦隊が有効射程に入りました」


「主砲発射!」


 轟音と共に主砲が火を吹く。レーダーには着実に迫る敵艦隊の影があった。

 発射から間も無く、敵からの砲撃が帝国艦隊に到達した。命中弾はなく、砲弾は地上で炸裂した。


 その後もしばらく砲撃戦は続いたが、どちらも有効打を与えることができないまま距離が近くなっていった。


「敵の攻撃隊を発見!第二波です!」


「敵の砲撃は続いているのか?」


「続いています!」


「ひとまず迎撃隊を出撃させろ。射撃中の砲台は誤射に気をつけろ」


 敵からの砲撃が続く中、第二波が襲来した。


「迎撃隊が接敵しました。ミニーム共和国軍の航空隊です」


「艦隊全面に装甲を展開できるだけのエネルギーはあるか?」


「使えても1時間です」


「温存している余裕はない。構わず使え」


 シクス将軍は射撃を中止しエネルギー装甲を展開した。敵からの砲弾は全て装甲で防がれたが、当たるだけエネルギーの減りは早くなっていった。


「敵が目視可能距離に入りました!」


 敵の攻撃隊は対空砲火のない帝国艦隊に突撃を敢行したが、エネルギー装甲に激突して何機かは落ちていった。敵は警戒して艦隊周辺を旋回ながらエネルギー装甲に対して爆撃し、敵の砲撃も相変わらず続いていた。敵の砲撃に敵の攻撃隊が撃墜されるという事態も発生していたが、敵は装甲を前に何もできなかった。


「想定以上にエネルギーの減りが早いです!」


「いつでも対空戦闘を始められる準備をしておけ」


 砲撃と航空攻撃が同時に行われていた理由は指揮系統が別だったことにあった。やってきた航空隊はミニーム共和国の飛行場から出撃していたもので、上陸部隊から第二波攻撃の中止の連絡が伝わっておらず現場で混乱を起こしていた。

 しかし、これにより第六航空艦隊のエネルギーは減り、エネルギー装甲なしでの戦闘を強制されることになった。


「エネルギー装甲を解除する。対空戦闘開始」


 艦隊周辺を旋回していた敵攻撃隊に対して突如対空砲火が始まった。攻撃隊は一時混乱したが、統制の取れた動きで艦隊への攻撃を始めた。敵味方の砲弾が入り混じり、その中を敵の攻撃隊は潜り抜けながら突撃した。まだ完全に回復していなかった第六航空艦隊は執拗に狙われ、艦艇には爆弾と砲弾が次々と命中していた。


「敵艦隊が接近してきました!このままでは押し込まれます!」


「第五艦隊に敵艦隊の対処を要請しろ!こちらは航空攻撃で手一杯だ!」


 止むことのない爆撃と砲撃で救護室は負傷兵でいっぱいになり、甲板では応急処置された兵士が銃を握っていた。艦隊は火災の煙で覆われ視界が悪くなり、その隙を突いて爆撃されるという悪循環が起こっていた。


「これまでに出た被害はどのくらいだ」


「この艦隊だけで駆逐艦3隻、巡洋艦1隻が轟沈、駆逐艦6隻、巡洋艦2隻が中破です」


 敵艦隊が迫ってきている今、第六航空艦隊の戦闘継続は絶望的になっていた。しかしこれ以上敵の侵攻を許せば帝国はオトシュ戦線との挟み撃ちで崩壊することは明らかだった。


「将軍様!新たな艦隊が我々の後方に出現しました!」


「味方か!」


 しかし帝国は第一艦隊が動かせるもののほとんどが撃破されており、戦力として期待できる航空艦隊は存在しなかった。


「わかりません。識別信号を送っていますが、レーダーに映っているような大規模艦隊は現状の帝国にはいません」


 シクス将軍には最悪の事態が予測された。ここで敵に包囲され二つの艦隊を同時に失うようなことがあれば、ラース戦線の維持どころか帝国の崩壊に直結するだろう。


「フィフス将軍に連絡!すぐに撤退するぞ!」


 シクス将軍が叫ぶと同時に通信兵が声を上げた。


「新たな艦隊は『帝国軍第七航空艦隊』を名乗っています!ですがそのような艦隊は存在しません!」


 シクス将軍は罠かと思ったが、次の報告で味方だと気づいた。


「第七艦隊は皇帝陛下とワンス将軍様が指揮されているようです!奥の手を発動したとのことです!」


 シクス将軍が安堵すると、空に一筋の光線が走った。その光線は敵艦隊の方向へと伸びていた。


「第七艦隊が特殊砲を発射しました!」


「ついに完成したのか」


 光の筋を見たからなのか、敵の攻撃隊は撤退を開始した。第六艦隊では負傷者が救護室に搬送され、散らばった薬莢や戦死者の回収が行われた。

 しばらくするとはるか上空に第七艦隊の姿が見えた。艦隊の中心にはエイのような形をした大きな黒い影があり、その周りには数個艦隊規模の艦艇が浮いていた。それを見ているとフィフス将軍から連絡が入った。


「皇帝陛下から連絡があった。第七艦隊はワンス将軍と共にラース方面の敵を掃討した後、オトシュ戦線に進出するらしい。だから第七艦隊が到着するまで我々第五艦隊はオトシュ戦線に参加することになった。シクスのところはどうする?」


「損害が大きいので第七艦隊の指揮下に入ります」


「そうか。兵士も疲弊しているだろうから無茶はするなよ」


「ありがとうございます。オトシュ戦線は激戦らしいのでフィフス兄さんも気をつけてください。すぐに掃討を終えてそちらに向かいます」


「じゃあまたオトシュでな」


 そうして第六艦隊は第七艦隊の指揮下に入り、敵上陸部隊の掃討戦を開始した。




 ラース戦線は終始同盟側の優勢だったものの、帝国の新艦隊『第七航空艦隊』が投入されたことで戦局は一変した。一つで数個艦隊の規模を持つ第七艦隊は特殊砲、改良型エネルギー装甲を備え、帝国が現状持てる最高戦力となっていた。しかしラース戦線では勝利を収めた帝国であったが、その勝利に対する損失は少なくなく、オトシュ戦線での損失も含めると引き続き危機的状況であることに変わりはなかった。

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