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惑星記  作者: フランクなカイザーフランク
第三章 対帝国秘密同盟
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“イジ”を求める戦線

セイツェマンは煙の匂いで気がついた。幸い体に傷はないが、機関銃が重くのしかかっていた。セイツェマンは機関銃を押し退けて機外に出た。機体は潰れかかっているが、かろうじて形を保っている。


「誰か生きてますかー!」


セイツェマンは声の限り叫んだ。


「セイツェマン!ここにいる!助けてくれ!」


ジェルソン少尉の声が聞こえ、セイツェマンは操縦席に回った。窓は潰れて割れていたが、ヴェルン大尉の声も聞こえたためある程度空間が残っているのかもしれない。


「ここだ。挟まれて動けないんだ。引っ張り上げてくれ」


破片をどけると、ジェルソン少尉とヴェルン大尉の顔が見えた。2人とも怪我をしていたものの、重傷ではなさそうだ。2人を引き上げ、3人で他の生き残りを探すことになった。最初は気づかなかったが上空では戦闘が続いており、時々敵味方の区別がつかない機体が墜落してくる。遠くでは地上戦も行われているようだ。


「おい!キースだ!生きてるぞ!」


ヴェルン大尉に呼ばれ、3人がかりで瓦礫をどけた。爆発の炎で熱された金属板に落ちる汗が音をたてて蒸発していく。


「上げるぞ!」


ジェルソン少佐の掛け声でキース中尉の体を持ち上げる。


「大丈夫か!」


「ジェルソン少佐…ありがとうございます。アモスが下にいます。助けてやってください」


キース中尉は衰弱していたが休めばなんとかなりそうだった。キース中尉のいた場所から中を覗くと、暗くてよく見えないが、アモスのものであろう腕が見えている。


「少佐、いました!」


同じ手順でアモスを引き上げた。アモスも元気がなかったものの無事だった。


「後はランドルだな。空が暗くなってきた。雨が降る前に救出しよう。セイツェマン、ここを持ち上げるから中に入ってランドルが無事か見てきてくれ」


ジェルソン少佐は怪我から流れる血を止めようとしながら、セイツェマンに命令した。ランドルは機体下の銃座にいるため、セイツェマンは狭い機内に潜り込んで銃座まで這っていった。


暗い機内を手探りで進み空間に出た。かすかに影が見える。


「ランドル!ランドルか!」


影が動いた。ランドルに違いない。


「ランドルがいました!誰か手を…」


そう言った時、近くで爆発が起こった。おそらく爆弾が落ちてきたのだろう。おかげで銃座の周りを覆っていた土が吹き飛び、銃座に光が差した。そこには血を流したランドルの姿があった。


「おい!ランドル!しっかりしろ!」


セイツェマンの声を聞いてジェルソン少佐たちが集まり、銃座からランドルを引きずり出した。まだ息があったが傷は深く、すぐにでも母艦へ連れて帰る必要があった。


「ヴェルン、これからの行動計画を立てるぞ。他の者はランドルの手当てをしろ」


機体から取り出した衛生箱でランドルの手当てを始める。血は流れ続け、止まりそうもなかった。空では今も爆発が続いている。


「援軍がもう少しで到着するはずだ。それまで全員で生き残るぞ」


ジェルソン少佐は待機することに決めた。火薬と血の匂いが混じる中で爆発に耐える。空はどんどん暗くなり、ついに雨が降り始めた。セイツェマンらは機体の影に身を潜め、手当てを続けた。


しばらくすると遠くから爆音が近づいてきた。


「援軍か!」


ジェルソン少佐が双眼鏡で地平線を見た。しかしそれはエアード王国の紋章をつけていた。


「敵だ!敵のヘリコプターだ!身を隠せ!」


ジェルソン少佐が叫ぶ。セイツェマンはランドルの上に被さり自分の頭を押さえた。軽い破裂音がしたかと思うと、まるで水切りのように土が舞い上がった。弾が機体の残骸に当たり跳ね返る。爆音はだんだんと迫り、しばらくするとこちらに寄って来なくなった。


「こちらはエアード王国ヘリコプター部隊である。投降せよ。君たちに逃げ場はない」


皆ジェルソン少佐を見た。ジェルソン少佐はヴェルン大尉と相談した後、投降を命じた。


セイツェマンは手を挙げて外に出た。エアード王国が開発したという“ヘリコプター”は回転するプロペラを頭につけ、銃口をこちらに向けていた。その後ゆっくりと高度を落とし、ドアを開け、兵士を吐き出した。セイツェマンは地面に押さえつけられ手を縛られた。


「負傷者がいるんだ。助けてやってくれ」


兵士に語りかけるが反応はない。無表情で淡々と他の者の手を縛っていく。


ジェルソン少佐の手が縛られようとした時、墜落していた機体が爆発した。兵士はジェルソン少佐に向かって何か叫んでいるが、ジェルソン少佐は無視を貫いているようだ。


ヘリコプターに乗せられると、ヘルメットを被ったエアード軍兵士が一方的に話しかけてきた。


「お前たちはあの新型爆撃機の搭乗員だろ?母艦に連れて帰るように命令が出ている。大人しくしとけよ」


セイツェマンらはそのままエアード王国の航空戦艦に乗せられ、牢屋に入れられた。ランドルは治療のためか別の部屋に送られた。それぞれ個別に聴取を受け、セイツェマンは自身の所属、経歴、爆撃機の任務内容を聞かれた。特にエネルギー装甲については詳しく聞かれた。


その後、セイツェマンらは別の艦に移された。その艦はどこかへ向かっているようだったが、行き先は知らされなかった。


数週間後、目的地についたらしく新たな場所に移された。そこは収容所で大勢の帝国軍人が詰め込まれていた。また、久しぶりにランドルと会うことができた。衰弱していたものの命に別状はないようで、あの日からずっとエアード王国軍の治療を受けていたそうだ。その後、ランドルは治療を続けるために別の部屋へと帰っていった。


セイツェマンらは最初の部屋から別の部屋へと移された。そこには第一航空艦隊の兵士がおり、その中にワンス将軍も混じっていた。


「おお、特務大隊のやつじゃないか。あの新型機でもついに落とされたのか」


ワンス将軍はこちらを見るとすぐに声をかけてくれた。ジェルソン少佐はかしこまりつつ今までの経緯を話した。


「そうか、ラース戦線とオトシュ戦線の挟み撃ちか。シクスはさぞ大変だろうな」


ワンス将軍は笑っていたが笑顔の奥に不安があることが誰からもわかった。


「ワンス将軍様はどうしてここへ?」


アモスが聞いた。ヴェルン大尉がアモスを叱ると、「まあいい」とワンス将軍はヴェルン大尉をなだめ、話し始めた。


「旗艦に特殊砲が当たった衝撃で私は気を失った。気がつくと周りにいた艦隊のほとんどが沈没か大破していてな、動ける艦はそこで逃したんだ。努力したがその後も電力は復旧せず、私は総員退艦を命じた。私は爆撃機に乗って母艦を後にしたんだが、沈没していく自分の艦隊を見るのは悔しかった。きっとあの光景は一生忘れないだろう。そのまま私たちはサースの元に向かって飛んだが結局敵艦隊に捕捉されて、こうして捕虜にされてしまった。死んでいったやつに本当に申し訳ないな」


ワンス将軍だけでなく周りにいた第一艦隊の兵士も目に涙を浮かべていた。かつて世界最強と恐れられた第一艦隊の姿はそこになく、ただ、男達が涙を浮かべて黙り込むだけだった。


次の日から、セイツェマンらは聴取を受けることになった。爆撃機の使い方から航空戦艦のトイレの位置まで様々なことを質問されたが、ジェルソン少佐から黙秘を命じられていたため誰も情報を吐くことはなかった。


そして数日後、拷問が始まった。




一方でシクス将軍は後退を続けながら次の一手を模索していた。あの日以来エアード王国軍は破竹の勢いで進撃を続けており、一部の戦線では後退が追いついていなかった。


「新たな防衛線が突破されました」


「退がって立て直すぞ」


「シクス将軍様、援軍はまだ来ないのでしょうか」


「わからん。オトシュの方は特殊砲に手こずっているらしく、第二、第四艦隊もそっちに向かってる。しばらくは援軍が来ないかもしれんな。だが、国民の命がかかってるんだ。援軍が来るまでは意地でも堪えるぞ」


幸いにも第六艦隊は特殊砲を撃たれていなかったが、一個艦隊のみでの広大な戦線の維持は難しく、劣勢が続いていた。しかし劣勢は第六艦隊のいるラース地域だけでなく、オトシュ地域でも同じだった。こちらは特殊砲が発射されることで大勢の死傷者が出ており、物資の損耗も激しかった。帝都に近いこともあり絶対防衛を命じられているため動かせる部隊は全てこちらに投入されていた。


帝国は同盟国と二度目の決戦を行い、侵略戦争以来初めての劣勢に立たされた。物資や人員は足りず、圧倒的な力で領土を侵略されていくのは、まさに過去、帝国が行ってきたことと変わりなかった。


帝国は終焉の危機に瀕していた。

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