初めての実戦
総員戦闘配置のサイレンが鳴り続ける中、急いで格納庫に戻った。するとすぐにブリーフィングがあった。
「ラース共和国が帝国に対して宣戦を布告し、すでに帝国へ向けてミサイル数百基が発射されたようだ。国境警備隊との連絡がつかなくなっているらしい。そこで第六艦隊は国境での敵部隊殲滅と必要があれば共和国への侵攻を行う。そのため我々には攻撃準備命令が出ている。この機には新兵も多いからすぐに支度するように」
ブリーフィングが終わると爆撃機に乗り込み、機器の確認をする。回転銃座は思っていた以上に快適だった。アモス担当の前方銃座などは椅子がなく、さらにはかがまないと撃てないため相当疲れることだろう。
機長へ配置完了の声が上がると機内には静寂が訪れた。サイレンと艦のエンジン音のみが機内に響きわたる。初めての実戦だ。高揚と緊張が体中を駆け巡り、銃を握る手に少し汗が滲んでいる。
戦闘配置のサイレンが鳴り止み、艦内放送が流れる。
「私は第六航空艦隊司令、シクス将軍である。貴官らも知るように共和国が帝国に対し、突如として宣戦布告を行った。我々の任務は共和国軍の撃退と殲滅である。諸君らの武運を祈る。全艦、最大戦速!」
そう合図があると艦が振動しエンジン音がどんどん大きくなっていく。衝撃注意のサイレンが鳴った後、艦は動き始めた。空中戦艦は巡航速度が音速の3倍であり、地表への被害を抑えるために高高度を飛行する。そのため、海上艦艇のような揺れは少なく船酔いもない。
滑らかに発進した艦隊は音速を超える速さで当該空域へと向かった。するとすぐに爆撃機発進命令が下った。
「第三機動爆撃中隊 三番機発進!」
機長の声を合図に機体は格納庫から艦外へと射出された。砂漠の大地の空には無数の帝国旗が浮かび、地上は黒い共和国軍で埋め尽くされていた。第三中隊は空中で編隊を作り、地上を狙う。
「キース!地上にある戦車部隊を狙う!爆撃準備!」
機内には機長の声とエンジン音が響く。機体は速度を上げ、地上の兵士へと向かっていく。近くで対空砲が炸裂する度に銃を握る手は震えている。この光景を見るまで自分が兵士だという実感がなかったらしい。これが戦争だ。やらなければ誰かがやられる。それは自分かもしれない。ここまで来ればやるしかないのだ。
「まもなく爆撃位置!」
「敵機接近!」
アモスの声が聞こえたと同時に敵戦闘機が機体をかすめて行った。まるでゲームのように全爆撃機の銃座が反応する。見ている場合じゃない。我に帰ったセイツェマンはすぐに引き金に指をかけ、敵を狙う。
「セイツェマン!誤射だけはするなよ!」
機長がそう叫ぶ。敵機の進行方向少し前に照準を合わせて引き金を引く。士官学校で教わった通りのことをすれば良いだけだ。きっとできる。
高速で動く敵を狙い引き金を引いた。すると敵機は炎を上げながら墜ちていった。それでもなお、人を標的にしているという感覚にまだ実感が湧いていなかった。
「爆撃地点!爆弾倉開け! 投下!」
すると他の機も続々と扉を開き、爆弾を落とした。機内には緊張が走った。
「敵戦車隊に直撃!壊滅状態!」
爆撃手キースの声に機内は歓声に包まれた。
「すぐに帰投するぞ!」
機長はそう言うと機体を大きく旋回させ、母艦へと向かった。母艦へ近づくにつれ、セイツェマンは衝撃的な光景を目の当たりにすることとなった。
帝国旗をつけた鋼鉄の龍のような艦隊が地上の敵兵を吹き飛ばしているのである。
発艦した頃は黒い波のように地上を埋め尽くしていた敵も、艦隊が通ってきた跡には誰一人として残っていない。地上には黒い点がまるで蟻のように這い回り、ところどころで高く宙を舞っている。対空砲などは鋼鉄に覆われた龍の前では意味を成さず、撃つだけ死が早まるだけだった。
惑星歴2050年、ラース共和国はシグマ帝国に対し宣戦布告。国境にある砂漠地帯で戦闘に入った。当初は共和国軍の優勢だったものの、付近に駐留していた帝国軍第六航空艦隊の攻撃に遭い地上軍は壊滅し、撤退を余儀なくされた。勝ち目のない戦いであったにも関わらず帝国と戦争を始めた共和国に世界から注目が集まった。
セイツェマン初めての実戦は帝国の圧倒的勝利で幕を閉じた。




