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惑星記  作者: フランクなカイザーフランク
第三章 対帝国秘密同盟
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圧倒的優勢

 セイツェマンがエアード王国軍と接敵する数日前、同盟本部には緊張した空気が立ち込めていた。加盟国すべての代表が集まっていたが一言も会話はなく、ただ置かれたコップの中の水が減っていくだけだった。


「ベルドマン、そちらの上陸部隊の状況はどうなんですか」


 シーヤが沈黙を破った。


「帝国は上陸に気づいていないらしい。今のところは順調だ」


「オトシュ王国にも主力艦隊が集結し始めています。帝国の戦線が所定の位置まできたら作戦開始です」


「そっちの作戦開始に合わせてこちらも予定通り進める。我が軍の主力艦を使うのだから、しくじるなよ」


「わかっています。今ある全戦力で作戦を行うわけですから、失敗なんて許されませんよ」


 数日後、上陸部隊から航空隊が接敵したとの報告があった。


「ベルドマン、これはどういうことですか」


「本当にすまない。哨戒中にはぐれた戦闘機が帝国と遭遇したそうだ。本当に申し訳ない」


 ベルドマンは深く頭を下げたが、それを見る者は誰もいなかった。ベルドマンは強く歯を噛み締めて屈辱に耐えた。


「幸い、上陸本隊は帝国軍と接敵していません。数日は大人しくして帝国に気づかれていないことを祈りましょう」


 それから数日間帝国軍は同盟国の上陸に気づくことはなく、作戦の日を迎えた。全国の代表が揃い、シーヤが話し始めた。


「先ほど、オトシュ王国に全艦隊が集結したとの報告がありました。また帝国軍がレジスタンスへの攻撃を始めたようです。我々対帝国秘密同盟は只今より帝国挟撃作戦を開始します」


 その場にはアベルノ公爵も同席しており、静かに作戦の動向を見守っていた。




 作戦は同盟国側による特殊砲の発射によって開始された。視界外からの砲撃に帝国の防衛部隊は壊滅し、同盟国の部隊は無傷で戦線を押し上げた。しかし、防衛隊が完全に壊滅していたため帝国軍司令部がすぐに気づくことはなかった。


 帝国軍司令部に初めて入った情報は「ラースにて第六艦隊が接敵」だった。司令部はオトシュ王国に集結していた同盟国艦隊の状況を確認するも時すでに遅く、防衛部隊の壊滅をそこで知った。第一、第三航空艦隊に出撃命令が下り、第六艦隊には上陸してきた同盟国軍の撃退が命じられた。


「敵艦隊の位置は?」


 オトシュ戦線に展開した第一、第三艦隊は同盟国艦隊を迎え撃つべくA-5連装爆縮砲の発射準備を行なっていた。


「レーダーが敵艦隊を200km先に発見しました。偵察部隊や周辺部隊に敵艦隊の情報収集を急がせています」


「レーダーとA-5を接続しろ。できる限り誤差をなくせ」


 サース将軍は失敗できない作戦であるためにいつも以上に緊張していた。何度もシュミレーションしたはずの発射行程も、いざ実践するとなると作戦失敗が頭をよぎり集中できなかった。


「敵の位置が判明しました」


 艦橋にある画面に敵艦隊の位置が表示された。弾道計算が始まり、敵艦隊を観測中の部隊から連絡が続く。慌ただしく人が動き、声が飛び交う。


 第三艦隊が発射準備に取り掛かる中、第一艦隊は敵に特殊砲を発射させるべく同盟国艦隊へと接近していた。


「ワンス将軍様、敵艦隊をレーダーに探知しました。おそらく敵からも探知されています」


「攻撃隊を発進、エネルギー装甲を展開せよ。特殊砲の攻撃を耐え切るぞ」


 第一艦隊から発進した攻撃隊は、同盟国艦隊が特殊砲を発射した場合、最も損害の大きくなる可能性があるため、志願した者で組まれた決死隊だった。ワンス将軍は彼らの残した白い筋を見ながら、作戦の成功と彼らの無事を祈るのだった。


 しばらくした後、攻撃隊が同盟国艦隊に襲いかかった。対空砲火が激しいのはいつものことだったが、それよりも手強かったのはエアード王国軍の戦闘機だった。各機が自動追尾の空対空ミサイルを装備し、速度の遅い爆撃機などはことごとく落とされていった。数隻に損害を与えることができたが撃沈には至らず、隊の半分近くを失った攻撃隊は撤退することになった。


 そして、攻撃隊が撤退に入る中で戦況は動いた。


「偵察部隊より連絡!敵の砲口が光り始めました!特殊砲がきます!」


 第一艦隊にその情報がもたらされると甲板に出ていた兵士は退避し、被害を分散させるために艦艇同士の距離が離された。各々が何かしらに掴まり、その時を待った。


 エネルギー装甲に閃光が起こったかと思うと、その光はエネルギー装甲を貫通し一隻の戦艦に直撃した。衝撃波が艦隊を襲い、戦艦は大爆発を起こして燃え始めた。全艦艇の電源が落ちたが、手はず通り付近の艦艇が救助に向かった。


「頼む…サース、成功させてくれ…」


 ワンスは望みを託した。


 一方第三艦隊では、砲口が光り始めたという報告を聞いてすぐに射撃の最終確認に入った。


「弾道上からの友軍退避完了」


「装填確認完了」


「甲板からの退避完了」


「砲塔からの退避完了」


「弾道計算完了」


「砲修正完了」


「発射手順に入ります」


「現地偵察部隊、第一艦隊との通信途絶えました」


「第一発射ロック解除」


「第二発射ロック解除」


「第三発射ロック解除」


「サース将軍、最終ロックを解除してください」


 サース将軍は首から下げていた鍵を鍵穴に入れ、回した。


「戦艦サース、全速前進。衝撃に備えよ」


 艦内にブザーが鳴った。


「発射まで5秒前、4、3、2、1、発射」


 戦艦は大きく後退し、砲から弾丸を撃ち出した。その弾丸は空間を歪ませ、衝撃波は艦隊を覆った。サース将軍は必死に手すりに掴まり、吹き飛ばされないように耐えた。


 振動が収まると、サース将軍は次弾の装填を命じた。


「すぐに次弾装填しろ!敵はレーダーに映ってるな?」


「はい。ですが偵察部隊と通信が繋がらないので精密射撃するには情報が足りません」


「偵察部隊との通信が回復したらすぐに発射するぞ!」


 赤くなった砲身を水で冷却し、砲弾が装填された。特殊砲が発射されてからの経過時間が計測される中、偵察部隊からの連絡を待った。


 発射された砲弾が第一艦隊の近くを通ると、ワンス将軍の側にある窓が揺れた。窓の外では救助活動が続けられているものの、あの様子では墜落するのは時間の問題だろう。


「A-5の発射を確認した。救助が終わり次第撤退するぞ」


 ワンス将軍はそう命令し、報告された被害を見返していた。戦艦一隻が大破だったが、距離を離したおかげで大きな被害は出なかった。旗艦ワンスでも怪我人は出たが幸い重傷者は出なかった。


 すると、艦内の電気がついた。電源が回復したようだ。通信もつながり一安心していたところに鬼気迫る声が飛び込んだ。


「聞こえますか!敵戦艦の砲口が光っています!第二射です!」


 それは偵察部隊の声だった。特殊砲が発射されてからまだ1時間も経っていないはずだ。戸惑う暇もなく、ワンス将軍は全艦艇に距離を取るように命令した。


 しかしそれでは遅かった。


 沈没しかかっていた戦艦に第二射が直撃し、オレンジの光に包まれた。救助にあたっていた艦もオレンジの光の中だ。爆発の衝撃でワンス将軍は強く壁に打ち付けられ意識を失った。


「将軍様、目覚められましたか」


 ワンス将軍は救護室に入れられていた。個室だったもののドアの外からはうめき声や悲鳴が聞こえ、まさに地獄の様子だった。


「艦隊の状況はどうなってる」


「敵の第二射で戦艦カイジンとその救護にあたっていた駆逐艦3隻、巡洋艦2隻が沈没しました。また、爆発の衝撃や爆風で艦外にいた者の大半が行方不明、艦内にいた者も死傷者が多く出ています」


「そうか、ならここで寝ている場合じゃないな」


「将軍様!何をされるのですか!ここでお休みください!」


「外の声を聞くに、部屋が足りないほど負傷兵がいるんだろう。この部屋も使って彼らの手当てをしろ」


 ワンス将軍は立ち上がり、ふらつきながら艦橋へと向かった。艦橋に着くと、頭に包帯を巻いた者や服に血がついた者たちが任務にあたっていた。


「将軍様、もう大丈夫なのですか?」


「ああ、それより状況を教えてくれ」


「はい。第三艦隊によるA-5の射撃は成功しました。偵察部隊によると戦艦一隻、周囲にいた駆逐艦多数を撃沈したとのことです。ですが敵の数が多くあまり大きな損害ではないようです。敵は反撃として第一射を行ったものとは別の艦が特殊砲を発射しました。それが戦艦カイジンに直撃し、第一艦隊は半壊状態です」


「そうか」


「加えて悪い情報が…」


 そう言うと将校は口ごもった。


「なんだ、早く言え」


「…はい。敵艦隊がここへ向かってきており、投降勧告をしてきました。これを拒否すれば特殊砲を発射すると脅しています。今、敵艦隊は主砲の射程圏内です。どうされますか」


 艦橋にいた者の手が止まった。静かな艦橋でワンス将軍は考えた。


 戦力差は大きく、もう一度特殊砲を撃たれれば第一艦隊は壊滅状態となるだろう。かといって投降はできない。投降すれば帝国の技術が詰まった航空戦艦が敵の手に渡る。それはなんとしてでも阻止しなくてはならない。


「交渉できないか聞いてくれ」




 同盟国艦隊にワンス将軍からの要請が届いた。それは同盟本部にも伝わった。


「帝国のワンス将軍が交渉の余地はないか聞いてきているそうです」


 シーヤは各国代表に呼びかける。一つの国の代表が発言した。


「彼らの提案はなんなんですか?」


「ワンス将軍を人質とする代わりに艦隊を逃がすという条件だそうです」


 すると、代表たちはあり得ないと言う様子で笑い出した。


「昔は栄華を誇った帝国もここまで堕ちたのか!」


「我々の勝利も目前ですね!」


 笑いに包まれた議場でシーヤは伝令兵に命じた。


「交渉を拒否し、最後の投降勧告を行なってください。応じなければ特殊砲を全門発射してください」


 するとベルドマンが口を挟んだ。


「シーヤ、なぜお前が命令しているんだ。私のところの艦隊だぞ!」


「ですが同盟の代表は私です。代表として命令したまでです」


「オトシュ王国は先の決戦で失敗したじゃないか。だが今はどうだ。エアード王国の艦隊が主力となったことで帝国を追い詰めている。これはお前やオトシュ王国の手柄じゃない。命令は私がやる」


 ベルドマンは伝令兵に告げた。


「艦隊に命じよ、敵艦隊に特殊砲を全門発射しろとな。ここで帝国の虎の子第一艦隊は消えてもらう」


 命令を受けて、同盟国艦隊は特殊砲の発射準備を始めた。その様子をワンス将軍は艦橋から見ていた。


「敵の砲口が光り始めました。およそ10門の特殊砲がこちらに向けられています」


「彼らの返答はこれか。エネルギー装甲を展開せよ」


 ワンス将軍は第一艦隊に向けて放送を始めた。


「敵は特殊砲の発射手順に入った。全員が生き残ることは難しいかもしれないが、一隻でも多く生き残って第三艦隊に合流し、次の戦いに備えてくれ」


 ワンス将軍はマイクを切ると艦長室へと向かい、扉を閉めた。次の瞬間、窓の外がオレンジに光り爆発が起こった。

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