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惑星記  作者: フランクなカイザーフランク
第三章 対帝国秘密同盟
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掃討作戦

 ジ…ジジ…。セイツェマンが格納庫に入るとアモスがラジオをいじっていた。


 治安維持任務が始まって1ヶ月、特に大きな事件もなくレジスタンスの掃討が続いている。一方で第六艦隊の兵士は戦いに飢えており、日々ラジオなどで発表されるオトシュ国境の戦況を聴いていた。それによると先の決戦で敵艦隊を撃破したことで防衛戦は帝国の優勢が続いており、徐々に領土を取り戻しつつあるようだ。アモスはセイツェマンに気づくと声をかけた。


「お、セイツェマンか。オトシュは善戦続きでいいよなぁ」


「こっちも順調じゃないか」


「そうだけどなあ、ろくな武装をしていないやつを相手にしてても一方的すぎて面白くない」


 不満そうな顔でアモスはセイツェマンを見たが、それ以上は何も言わなかった。


「まぁ、私は次の決戦に向けた休息だと思うことにするよ」


 そう言うとセイツェマンは銃座の手入れを始めた。するとジェルソン少佐とヴェルン大尉が格納庫に入ってきた。


「特務大隊に出撃命令が出た。地上部隊への対地支援だ。すぐに発進するぞ」


 ジェルソン少佐の声で格納庫内は慌ただしくなり、機体は外に射出された。キースが爆撃地点の座標を読み上げる声が響く。特務大隊は編隊を組み、雲の上を飛んだ。そこは快晴で天国のような真っ白な世界が広がっていた。


「まもなく爆撃地点。全機降下せよ」


 ジェルソン少佐の合図で大隊は雲の中へと突っ込んだ。雲を抜けると、草木や家屋が燃え、至るところで黒煙が立ち上っていた。しかし対空砲火は少なく簡単に侵入することができた。


「キース、爆撃準備」


 爆弾倉が開き、機体は揺れた。


「敵機発見!下から来ます!」


 ランドルが叫び、引き金を引いた。


「速度を上げろ!全機爆撃体勢!」


 機体はスピードを上げた。セイツェマンの前を下から突き上げてきた敵機が横切った。それを追ってセイツェマンは照準を合わせた。しかし、照準に捉えられた敵機はこれまで見てきたものと少し違った。


「エアード王国の紋章です!」


 セイツェマンの報告に機内の全員が驚いた。エアード王国はこの戦場から最も遠い対帝国同盟の構成国であるからだ。


「母艦への報告はあとだ。キース、爆弾投下!」


 ジェルソン少佐は全機に爆撃を命令した。爆撃は成功し、地上は煙に包まれた。一方でセイツェマンは追ってくるエアード王国の戦闘機に対して攻撃を続けていた。赤くなる銃身の様子を見ながら引き金を引いていく。しかし、機敏に動く敵機に弾丸はかすりもせず、足元に転がる薬莢の数が増えるだけだった。


「エネルギー装甲展開。一旦退却するぞ」


 ジェルソン少佐は大隊を主戦場から遠ざけ、母艦に連絡した。エアード王国航空艦隊が展開していれば第六艦隊だけでは太刀打ちできないため、シクス将軍は索敵を強化し艦橋で報告を待った。


「エアード王国軍は発見できたか?」


「いえ、未だ手がかりは掴めておりません。やはりレジスタンスに供与された兵器だったのではないでしょうか」


「この前までレジスタンスはオトシュ王国製のものを使っていたはずだ。しかも報告によると敵は相当な熟練パイロットだったらしい。空軍の強いエアード王国のパイロットならあり得る話だろう。全力を尽くしてくれ」


 シクス将軍は自室に戻り考えてた。数日前、シクス将軍の元にはオトシュ戦線に同盟国の航空艦隊が集結し始めていると報告があった。そのためエアード王国軍が戦力を割き、まして最も距離の遠い場所に上陸するはずがない。その時、帝国軍中央司令本部から連絡があった。


「同盟国軍は航空艦隊の主力のほぼ全てをオトシュ戦線付近に集結させており、ラースで見られた機体はレジスタンスの可能性が高いです」


「そうか。報告ありがとう」


 その報告を聞いて少し安心し、シクス将軍は警戒体勢を解くように命令した。


 それから数日間エアード王国の紋章をつけた機体は確認されず、レジスタンスの掃討作戦も大詰めを迎えていた。旗艦シクスの艦橋にある司令部では、掃討作戦の最終確認が行われた。


「これまでの作戦でレジスタンスを海岸まで追い詰めることができました。ですが海岸には旧ラース共和国時代に建てられた要塞があり、そこに立て籠っているものと考えられます。作戦終了までに長くても1日はかかる予想です。また、雨季が近づいているため夕方頃から天候が悪化する可能性があります」


「敵はレジスタンスといえど以前現れたエアード王国製戦闘機に乗っていたような熟練した兵士もいる。くれぐれも油断しないように。それでは、掃討作戦を開始する」


 シクス将軍の号令でレジスタンス掃討作戦が開始され、特務大隊は各中隊が交代で対地攻撃任務につくことになった。第一中隊であるセイツェマンらは最初に出撃し、すでに攻撃を開始している地上部隊からの報告が機内に流れていた。


「敵は要塞内に立て籠っており突破には時間がかかりそうだ。航空支援を要請する。座標は…」


 ヴェルン大尉は座標を記録し、ジェルソン少佐に伝えた。


「全員聞いたな。油断するなよ。第29A特務大隊第一中隊、これより爆撃地点に急行する」


 セイツェマンは銃座から晴れた空を見ていた。地上には草原が広がっており、青と緑の2色のみが外の世界を支配していた。


 まもなく到着するという時、地上部隊から緊急連絡が入った。


「敵の増援が来た!少なくとも1万はいるぞ!敵の爆撃機から攻撃を受けている!至急援護を求む!」


 するとキースも声を上げた。


「レーダーに機影を確認!味方ではありません!」


「規模は?」


 ジェルソン少佐が聞く。


「3個大隊規模です!」


 続いて艦隊司令部からも連絡が入った。


「帝国の沿岸警備隊が敵性航空艦隊を発見した。敵性航空艦隊は目標の要塞へと向かっており、接敵が予想される。現地に展開している部隊は増援到着まで戦線を維持せよ」


 その時対空砲火が近くで炸裂し、機体が大きく揺れた。


「エネルギー装甲全面展開!」


 ジェルソン少佐が叫んだ。対空砲火が激しくなり、地上の要塞にはエアード王国の紋章をつけた大量の増援が迫っていた。


 第六航空艦隊は大混乱に陥る中、合流した敵は攻撃を開始し地上部隊は劣勢になった。空中でも、爆撃機が主体となっていた帝国軍機は続々と撃ち落とされ損害が大きくなるばかりだった。セイツェマンら第一中隊はエネルギー装甲によりかろうじて被撃墜を免れたが、敵戦闘機の追撃から逃げ回るのみだった。


「エネルギー残量50%!」


 セイツェマンは周囲の爆音に負けない声で叫ぶ。


「友軍の到着まであと何分かかるんだ!」


「残り10分!」


「帰りのことも考えると、これ以上エネルギーは消費できない。これより後方のエネルギー装甲を解除する!セイツェマン、ランドル!後ろの虫を撃ち落とせ!」


 ジェルソン少佐とヴェルン大尉のやりとりの後、装甲が解除されセイツェマンは引き金を引いた。突然の反撃に敵機は反応できず、黒煙を吐きながら地面と激突した。それでも敵の数は減る気配がなく、次から次へと銃弾を浴びせてきた。炸裂する対空砲火や友軍機、敵機のエンジン音で耳はほとんど機能しなくなっており、硝煙の匂いと閃光だけが脳を刺激した。


 その時、今まで感じたことのない衝撃が機体に起こった。機内には爆音を消し去るほどの警報が鳴り響き、ヴェルン大尉が叫んだ。


「被弾により火災が発生!消火装置作動!」


 ジェルソン少佐は少し考えた後、無線で告げた。


「全機エネルギー装甲全面展開。これ以上は無理だ。撤退する」


 特務大隊第一中隊は次々に母艦への帰路につき、ジェルソン少佐も操縦桿に力を入れた。


次の瞬間、機体は制御を失った。


「スピンだ!何が起こっている!」


 ジェルソン少佐の声に応えるようにセイツェマンの声が操縦席まで届いた。


「機体尾部が取れました!墜落します!」


 枝から落ちる葉のように宙を舞う機体は、黒い煙を吐きながら地面へと落ちていった。朝は晴れていた空も徐々に暗くなり、地上を汚す血を洗い流そうとしていた。

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