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惑星記  作者: フランクなカイザーフランク
第三章 対帝国秘密同盟
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反撃の狼煙

「敵艦隊まで残り1分!」


 キースの声が機内に響き、編隊は敵艦隊へと向かっていた。


「敵も疲弊してるからか対空砲火が少ないな」


 ジェルソン少佐が呟いたが、敵艦隊の損害の大きさは誰の目からも明らかだった。同盟側の主力艦はほとんど撃沈できなかったものの、駆逐艦などの小型艦は撃沈か大破して戦闘続行は不可能になっており、セイツェマンら攻撃隊はさほどの抵抗を受けることなく敵艦隊付近まで近づくことができた。


「帝国航空艦隊司令部より攻撃隊へ。敵の迎撃隊が発艦した模様。気をつけよ」


 無線が入り、特務大隊は密集隊形になった。ジェルソン少佐が全体に告げる。


「もうすぐ敵が来る。いつも通り仕事を片付けて母艦へ帰ろう」


 光る敵の機影が前方に見えた。防護機銃は射撃を始め、空には弾の筋が飛び交った。セイツェマンも上手くかわしていく敵機を照準に捉えながら引き金を引いた。何発かが命中し煙を吐いた後、敵機は火だるまになって落ちていった。


「敵艦隊に突入する!A-1を持っている機の爆撃を援護しろ!」


 大隊の各中隊長機にA-1は搭載されており、中隊長機は味方に護られながら敵の主力艦へと突入した。セイツェマンの乗る機にもA-1が搭載されており、数機の味方に護られて敵艦隊に突入した。艦隊の中心部に近づくにつれて息を吹き返したように対空砲火が激しくなり、それに加えて敵迎撃機も攻撃を加えてきた。


「後方からミサイル接近!」


「エネルギー装甲全面展開せよ!」


 さらに加わった対空ミサイルを受け流しつつ、敵の主力艦は目の前に迫った。


「キース!爆撃準備!」


 ジェルソン少佐の声が響く。


「爆弾倉開きます」


 風を切りながら爆弾倉の扉が開き、A-1は投下態勢に入った。


「投下!」


 キースの合図でA-1は敵主力艦に投下された。機体は急いで速度を上げ、爆発被害を受ける範囲からの脱出を試みた。後ろから追ってきていた迎撃機は追いつけないと悟ったのか、引き返していった。


 すると、別の場所で大きな火の玉が光った。次々とその火の玉は増え、セイツェマンらが先ほど投下した敵艦でも光った。ペンダントは熱くなり、服を透けるほど光った。


「もっと速度上げろー!」


 機体のエネルギー残量が減る中、さらに速度を上げた。後ろからは爆発で起こった雲が機体を追ってきている。


 機体は雲に飲み込まれ、あたりが真っ暗になった。敵艦のものだろうか、エネルギー装甲に破片が当たっている音が聞こえる。


 この世の全てを無に帰す爆弾。セイツェマンはこれまで、落とされた側の想像をしてこなかった。しかし、今、自分を包むこの暗闇は爆発の下でなお生き残った者が経験したであろう暗闇だ。先の見えない暗闇で生存者は何を思ったのだろうか。頭の中を答えのない疑問が飛び交う。


 雲を抜けた時、空は晴れ夕陽が沈みかかっていた。仕留め損ねた敵艦は撤退を始めたが、A-1の標的となった艦は形すら残っていなかった。


「隊の安否は?」


 ジェルソン少佐がヴェルン大尉に聞く。


「全員被害無しだ。101戦闘爆撃隊にも被害はないらしい」


「本当か。それはすごいな」


 夕陽を背に第29A特務大隊は母艦へと向かった。空にはまだ、大きな雲がいくつか浮いていた。




 同盟国艦隊壊滅の報がオトシュ王国の同盟本部にも伝わり、各国代表はシーヤ、ベルドマン両代表を非難した。非難をする各国代表の中心になっていたのはミニーム共和国代表だった。


「我が国はたった一つの航空戦艦をあなた方に提供したのですよ!なのに一発の砲弾で消し飛んでしまうなんて!どう責任をとるおつもりですか!」


「貴様らが弱いのが原因だろう!駆逐艦一隻なぞなんの戦力にもならんわ!」


 ベルドマンが言い返すおかげで議論はめちゃくちゃになっていた。シーヤは作戦失敗にショックを受けていたが冷静になり、皆にこう言った。


「今回の作戦は失敗してしまいましたが、結果として帝国の航空艦隊を押し戻すことには成功しました。さらに、エアード王国の主力艦はまだ健在です。我々に再攻勢のチャンスは必ずあります。ですので、本来なら今回の作戦が成功した上でやる予定でしたが、あの計画を始めましょう」


 シーヤは受話器を手に取ると、ある男に電話をかけた。その男は旧サイシュ公国のアベルノ公爵だった。


「アベルノ公爵、例のサイシュ公国復活運動を始めてください。オトシュ王国が国を挙げて支援します」


「そうか、わかった。支援に感謝する」




 翌日、サイシュ公国の敗戦後に姿を消していたアベルノ公爵が突如として表舞台に現れ、こう宣言した。


「我が国サイシュ公国は、帝国による不当な侵攻を受けて支配されている。そしてラース共和国も帝国によって支配されている悲しき民の1人である。侵略戦争の頃から、多くの国が帝国によって虐げられ、今なお多くの民がその支配を受けている。今こそ、我々の団結を示す時である。虐げられた民よ立ち上がれ!ここに世界解放戦線の結成を宣言する!我々は帝国領土内の虐げられた民を助ける者である。同志達もこれに呼応して帝国の支配からの脱却を目指してほしい」


 この効果は絶大で、特に旧ラース共和国領土ではレジスタンスが盛んになった。そのため、帝国はレジスタンス鎮圧のために戦力を割く必要が出てきた。


 これを好機と見たシーヤは同盟国代表者会議を開き、大規模攻勢を提案した。


「帝国は今や、国外だけでなく国内にも敵がいる状態です。第五艦隊も動けない今、帝国に大規模攻勢に対処できるだけの力はないでしょう。そこでラース共和国の沿岸とオトシュ王国国境の二正面から帝国を挟撃する作戦を提案します」


 議場はどよめいた。ラース共和国の沿岸部にたどり着くためには帝国領を大きく迂回する必要があり、兵站確保が難しいことは明らかだったからだ。そこで、ある国の代表がシーヤに質問をした。


「ラース共和国沿岸に上陸してそこからさらに戦うというのは不可能だと思うのですが、どうお考えなのですか」


「航空艦隊を使います」


「ですがそれでは兵力を増強しただけでなんの解決にもならないのでは…」


「航空艦隊に食料や武器弾薬を詰め込んで随伴の補給艦として使うんです」


 全員が唖然とし、当たり前の戦法かのように話すシーヤを信じられなかった。しかし、シーヤはそのまま自信満々に話を続けた。


「オトシュ王国側の戦線にまた大艦隊を配置します。そうすれば帝国の航空艦隊もこちらに向くでしょう。なのでラース側に丸腰の航空戦艦がいても大きな被害を出すことはないはずです。丸腰といっても多少の護衛艦はつけますが、主力艦は一隻しかつけない予定です」


 議場のどよめきは収まらず、終始黙って聞いていたベルドマンが各国代表に向かって話し始めた。


「我々は先の決戦で少なくない被害を出しつつも、帝国六大艦隊の一角に大損害を与えることができた。さらに、世界中で反帝国運動が盛んになっている。今だからこそ、我々が動くべきではないのだろうか」


 各国代表は躊躇しながらも、帝国領上陸作戦に賛同した。しかし、オトシュ王国やエアード王国への不信感が少しずつ同盟内で生じ始めていた。


 帝国と同盟国の決戦は痛み分けという結果で終わった。しかし、あれほどの自信がありながら勝ちきれなかったオトシュ王国、エアード王国に対しての信用は薄くなり始め、対帝国同盟に小さな亀裂を生むことになった。その一方で世界の反帝国感情は高まり、帝国領内でも反帝国の抵抗勢力が現れた。そうして戦争を中心に情勢は刻一刻と変化する中で、世界中の死者数も刻一刻と増え続けていくのだった。

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