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惑星記  作者: フランクなカイザーフランク
第三章 対帝国秘密同盟
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侵略の足音

 時は少し遡り、サイシュ公国首都上空で大爆発があった翌日、アベルノ公爵と従者は薄く霧のかかる飛行場にいた。そこにはオトシュ王国の紋章をつけた飛行機が駐機しており、公爵らが乗り込むとすぐに離陸した。数時間ほど経つとオトシュ王国に到着し、スーツを着た男と軍服を着た男が公国からの亡命者を出迎えた。スーツを着た男はシーヤと名乗った。


「アベルノ公爵閣下、お待ちしておりました。私は対帝国秘密同盟代表兼オトシュ王国代表のシーヤでございます。まずはお話ししたいことがございますので、あちらの車にお乗りください」


 アベルノらは言われるがままに厚い鉄板に覆われた車に乗せられ、オトシュ王国王都にある王宮まで送られた。そのまま狭い部屋に通され、少しするとあの2人が入ってきた。


「少し狭い部屋で申し訳ありません。ですがここの話は誰にも聞かれたくないので誰も寄りつかない部屋を選ばさせていただきました。アベルノ閣下、例の物は持ってきてもらえましたか?」


 スーツ男がそういうと、アベルノは公国を出た時から肌身離さず持っていたカバンを出した。中からは特殊砲の研究データや船舶のデータなどの公国が持つ最新技術だけでなく、「惑星記」と書かれた本も取り出された。スーツ男の隣にいた軍服を着た男は興奮した様子でスーツ男に話しかけた。


「シーヤ、これがあれば我々は勝てるぞ!」


「ベルドマン、少し落ち着いてください。ああ、伝え忘れていましたね。彼はエアード王国代表のベルドマンです」


 ベルドマンと呼ばれた男は興奮したまま資料を眺めていた。これまで黙っていたアベルノだったが、シーヤに対して質問した。


「君たちに頼まれた物は持ってきた。君たちは私の国、サイシュ公国を本当に救ってくれるんだな?」


「お任せください。サイシュ本島だけでなく、サイシュ公国がかつて所有していた土地まで取り返して見せましょう」


 アベルノは胸を撫で下ろし、オトシュ王国兵士に護衛されながら新たな邸宅へと向かっていった。部屋に残ったオトシュ王国、エアード王国の両代表は資料を眺めながら話していた。


「シーヤ、アベルノ公爵達はもう必要じゃないんじゃないか?この兵器さえあれば十分だろう」


「アベルノ公爵はオトシュ王国のお客様なのですよ?丁重にもてなさないでどうするんですか。それに、今後は大きな働きをしてもらいますからね」


 シーヤは笑みを浮かべながら帝国の敗北を想像していた。




 時は戻って、シクス将軍の元に対帝国同盟軍が侵攻を開始したとの連絡があった。


「すぐに第六艦隊を召集しろ」


 レーダーを見ると島の北の海にある大きな影が着実に迫ってきていた。


 召集命令がかかった時、セイツェマン、アモス、ランドルの3人はサイシュ共和国の首都を歩いていた。歴史的な街並みが残る地区では市場が開かれており、数ある店の中に骨董品屋があった。アモスはその店の前で足を止め、2人を呼んだ。


「おい、見てみろよ!古代のアクセサリーが売ってるぞ!」


 それを見たランドルが店主に聞いた。


「この辺りはこういうのが有名なんですか?」


「ええ、近くに遺跡があるんですよ。政府主導で発掘調査をやってて、そこで出土したものをここで売ってます」


「せっかくだから何か買おうぜ」


 アモス、ランドルが決める中でセイツェマンは決めあぐねていた。すると、通りの奥から軍服を着た男が走ってきた。


「第六航空艦隊は至急持ち場に戻れ!出撃準備!出撃準備!」


 アモスとランドルは焦りながらセイツェマンを急かした。


「おい!セイツェマン!俺たちは先に行くぞ!」


「ちょっと待ってくれ!店主、これをくれるか?」


「ありがとうございます。お気をつけて」


「ああ、ありがとう」


 セイツェマンは目についたペンダントを手に取って急いでアモスらの後を追った。機体が駐機されている飛行場には特務大隊が揃っていた。ジェルソン少佐が全員を集めて話を始めた。


「先程、オトシュ王国とエアード王国を中心とする国々が帝国に対して宣戦布告を行った。奴らは帝国領内に侵攻中であり、この島の沿岸にも展開しているらしい。そのため第六航空艦隊は展開している敵航空艦隊を撃破するために出撃せよとの命令だ。艦隊はもう出撃したから、我々は合流後に攻撃に参加することになる。さぁ行こうか」


 一斉に隊員達が走り出し、それぞれの機体に乗り込んだ。セイツェマンも慣れた手つきで出撃準備をする。しばらくすると、大隊の機は次々と離陸していった。下では帝国の整備兵達が手を振っている。大隊はそのまま高度を雲の上まで上げた。空は快晴で、空を覆う深い青に飲み込まれそうだった。ジェルソン少佐が隊全体に呼びかける。


「第六艦隊が接敵したという報告が入った。激しい砲撃戦で通常の爆撃機では敵艦隊の奥まで侵入できないらしい。我々の任務は装甲を活かして突破口を開くことだ。気を引き締めていけよ」


 しばらく進むと目の前に大きな積乱雲が見えた。


「レーダーによるとあれを抜ければ敵艦隊だ」


 大隊は雲に入り、視界が遮られた。視界がぱっと明るくなり、下を見ると巨大な空中戦艦同士が砲撃し、その周りをハエのような航空機が飛び回っていた。


「全機突撃!」


 機長の合図で機体は上下逆さまになって急降下を始めた。敵はまだこちらに気づいておらず、砲撃の一つも飛んでこない。


「エネルギー装甲展開!」


 機体が振動し、敵艦に狙いを定める。敵はようやく気付いたのかこちらに向けて砲撃を開始したが、全て装甲に弾かれて致命傷には至っていない。敵戦闘機が迎撃に来るが、こちらのスピードについてこれず、なす術がないようだ。


「爆撃準備!」


 爆弾倉が開かれる。セイツェマンにとって、毎度この瞬間が1番緊張するのだった。開かれた爆弾倉からは海とその上を飛ぶ空中戦艦が見える。


「投下!」


 爆弾の一つが投下され、機体は大きく上昇した。投下後も対空砲火は続いていたが、大きな爆発音の後はその砲撃が少し弱まった。機体は大きく旋回し、敵艦隊を見た。砲撃が弱まった敵艦に友軍機が突っ込んでいく。こちらの被害は少なくなく、流れ星のような火球が海に落ちていたが、敵艦からも火が上がり、所々で爆発が起こっていた。


「エネルギー残量70%!」


 ランドルの声が機内に響く。


「ランドル!セイツェマン!敵に後ろを取られた!装甲を解除するから撃墜してくれ!」


 引き金に手をかけて敵機に照準を合わせる。装甲が解除され、引き金を引いた。敵機は華麗に弾を避け、機体から離れていった。しかし、次から次へと敵機は後ろにつき、こちらを狙ってきた。時にはパイロットの表情までわかり、必死さが伝わってきた。こちらはどんな顔をしているのだろう。セイツェマンはそんなことを考えそうになったが、すぐに現実に戻って引き金を引いた。


「2回目行くぞ!全機続け!」


 対空砲火が激しくなった。そのうちの一発が近くで炸裂し、耳鳴りで聴覚が奪われた。それまで何ともなかった銃口の光や対空砲火の閃光がより鮮やかに見える。


「…ツェマン!セイツェマン!」


 ジェルソン機長の声が聞こえた。


「セイツェマン!エネルギー装甲を展開するから撃ち方やめ!」


 慌てて引き金から指を外し、銃身を冷やす。赤くなった銃身がそれまでどれほど無心で撃っていたのかを物語っている。


「キース!爆撃準備!」


 爆弾倉が開かれるが、先ほどとは違い海の上には無数の残骸が浮かんでいた。


「投下!」


 搭載されていた爆弾が全て投下され、機体は速度を上げた。


 後ろでは大爆発が起こり、誘発されるように敵艦の至る所で爆発が起こっていた。


「今ので敵の戦艦級は最後だ!」


「よっしゃあ!」


 アモスが声を上げて機内全体が歓声に包まれた。敵艦隊は撤退を始め、特務大隊も艦隊に着艦した。


 艦隊に着くと想像以上の激戦だったらしく、救護室だけでなくいたる所に負傷者がいた。特に甲板は被害が大きく、血で染まった飛行甲板の上を航空機が着艦していた。


 セイツェマンは改めて死を身近に感じ、1人で艦内を散歩していた。戦友を亡くしたのだろう顔が暗い兵士や、戦闘で負傷した部分を包帯で巻き、血だらけになっている兵士たちに会った。


 そうして廊下を歩いていると胸がだんだんと熱くなってきた。歩みを進めるたびに熱さは増していき、我ながら情けないと思いながらも目を押さえた。しかし、涙は出ず胸は熱いままだった。胸に手を当てるとペンダントが熱くなっているのだった。ペンダントは薄く光を放っていた。持ちながら歩いているとペンダントの光はだんだんと明るくなり、ある部屋の前で強烈な光を放った。


 そこはエネルギー管理室だった。


 ここへ入れば罰則は間違いなく、ひどければ死罪だろう。しかし、セイツェマンは好奇心を抑えきれずドアを開けた。そこには誰もおらず、本棚の中には同じ名前の書かれた本が大量に保管されていた。部屋の中心にはゆっくりと燃える一冊の同じ名前の本があった。題名には「惑星記第六章」と書かれていた。セイツェマンは訳が分からずすぐに部屋を出た。廊下の奥から他の兵士の足音が聞こえたのでセイツェマンは走ってその場を離れた。

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