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惑星記  作者: フランクなカイザーフランク
第二章 サイシュ公国戦争
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上陸作戦

 上陸決行前夜、第29A特務大隊は部屋に集められた。全員揃ったことを確認するとジョエルソン大隊長が話を始めた。


「我々は一機の損失もなく、ここまで来ることができた。これは君たちの技量とあの装甲あってのものだろう。だが、明日から始まる上陸作戦はこれまで以上の激戦が予想される。旧共和国航空艦隊の出現で我々の航空での優位は崩れ去った。帝国の航空艦隊も上陸作戦に到着が間に合わないらしい。つまり、我々の戦いぶり次第で上陸作戦の成功が決まるんだ。いつも通りやってくれればそれでいい。だが、全員気を引き締めていけよ」


 ジェルソン少佐の話の後、ヴェルン大尉から作戦の説明があった。特務大隊は敵航空艦隊の撃沈が任務らしい。いくらエネルギー装甲があるとは言え、砲弾が直撃すれば撃墜は免れないだろう。


「なあセイツェマン、この後また3人で食堂に行かないか?」


 招集後、アモスがランドルと一緒に話しかけてきた。断る理由もなかったので3人で食堂に向かった。食事をしながらアモスが話を始めた。


「2人はこの戦いをどう思う?」


「オトシュ王国が介入してくるのは間違いないんじゃないかな。共和国の艦隊が来たのもオトシュ王国の取り計らいっていう噂があるくらいだからね」


「私はオトシュ王国は介入しないと思うな。帝国との科学力が開きすぎてるし、共和国は航空艦隊、公国は海軍があったけどオトシュ王国には強みが何もないじゃないか。それにオトシュ王国は色んなところに領土問題を抱えてるから戦争どころじゃないはずだ」


「2人はそう思うのか。俺はな、いずれ帝国が世界中を敵に回す日が来ると思う。今は対共和国とか対公国とか一対一の戦争だから帝国は勝てたが、一気に何ヵ国と戦争した時には流石の帝国もしんどくなると思うんだ」


「アモスの言うことは一理あるかもしれない、でもオトシュ王国主導でそれができるのか?サイシュ公国での戦争をきっかけにそれを起こせるのはオトシュ王国だけだぞ」


「秘密の取引があったら可能じゃないかな」


 だんだんと現実味を帯びてくる帝国対世界の構図をセイツェマンは認めたくなかった。しかし、世界を巻き込む戦争の足音はもう目の前まで来ているのだった。


 作戦決行日、空はどんよりとした雲に覆われて水平線の向こうにはサイシュ本島が見えていた。今まで出番のなかった陸軍将兵たちは湧き上がり、せっせと上陸前確認を行っていた。島には共和国艦隊の姿は見えず、公国の海上艦隊の姿も見えなかった。


 雷のような轟音と共に無数の砲弾が島へと飛んでいった。ついに作戦が始まったのだ。セイツェマンたちは飛び立つ爆撃機を見送り、決戦の時を待った。帝国の砲爆撃により海岸線の地形は変わり、先ほどまで緑の茂っていた山も真っ黒になっていた。海は上陸用のボートで埋め尽くされ、続々と島へ向かっていた。


 島に近づくにつれてボートに対して砲撃が始まった。水柱が多く上がり、直撃したものもある。その中を兵士たちは進んでいき、激しい攻撃にさらされながらも第一陣が上陸に成功した。遮蔽のない砂浜には多くの帝国兵士が倒れ、その上をまた別の兵士が進んでいく。帝国軍が通った跡には多くの兵士が倒れていた。


 そのまま続々と上陸に成功し、ついに海岸線の確保に成功した。輸送船は砂浜に乗り上げて戦車や物資を下ろしている。なんの出番もなく終わってしまったセイツェマンは少し安堵していたのだった。


 しかしその夜、照明弾が突如投下され、上陸していた部隊に砲弾の雨が降り注いだ。空には大きな影があった。特務大隊に出撃命令が下り、空母から緊急発艦した。


 敵の姿をレーダーで捉え、機体は速度を上げた。おそらく対空砲火を受けているのだろう。外では爆発音が響き、機体が揺れる。昼間とは違い見えない攻撃にさらされる不安の中、大隊は爆撃態勢に入った。


「キース!何も見えないと思うが頼んだぞ!」


 対空砲火の閃光がところどころで光り、爆弾倉が開かれる。


「投下!投下!」


 暗闇へと爆弾は落ちていき、隊は離脱を図った。空中で炎が上がり、航空艦隊の全容がやっと見えた。規模は前回見た時と同じくらいだったが、爆撃を受けると艦隊は向きを変えて撤退を始めた。


「深追いはするな。我々も撤収しよう」


 炎をまとった艦隊は山の奥へと消えていき、特務大隊も着艦した。しかし、到着したものは一機足りず、どこかで迷子になったのか又は撃墜されたか、行方不明となってしまった。


 翌朝、最後の一機が帰還した。その翼には穴が空き、速度も大幅に落ちていた。事情を聞くと、直撃弾を受けて翼とエンジンにダメージを受けたおかげで落伍したとのことだった。ジェルソン少佐は帰還を喜んだが、エネルギー装甲が無敵でないことも証明された。


 昼になると再び共和国艦隊の攻撃を受けた。しかし、有効打を与える前に敵が撤退したため、戦果を上げることはできなかった。航空艦隊の脅威が去っていないため、上陸部隊も動くことができず膠着状態が何日か続いた。その間も航空艦隊は来襲したが撃沈するまでは至らず、撤退を許してしまうのだった。


 戦局が変わり始めたのは上陸から5日後のことだった。改修作業を終えた帝国軍第六航空艦隊がついに到着したのだ。第29A特務大隊は第六航空艦隊所属になり、艦隊決戦に参加することになった。


 上陸開始から6日後、共和国航空艦隊が現れた。明らかに規模が大きくなり、帝国との決戦に臨んできた。島陰からは公国の残存海上艦隊も現れ、砲撃戦が始まった。


 セイツェマンら特務大隊には待機命令が下った。すると航空戦艦の主砲が動き、発射警報が鳴った。しかし、共和国艦隊が先に主砲を発射し、艦隊に直撃するかに思われた。


 セイツェマンは見慣れた装甲をこの艦隊に見た。


 砲弾は弾かれ、帝国の主砲が火を吹いた。共和国艦隊はなすすべがなく、一隻、また一隻と船体を貫かれていった。海上に対しても空から一方的な攻撃が行われ、正確な射撃で公国の残存艦隊を殲滅した。


 帝国軍全体から歓声が上がった。地上にいる者は抱き合い、勝利を確信した。海上にいた者は安堵し、作戦再開を命じた。


 地上軍は第六航空艦隊護衛のもと快進撃を続け、サイシュ公国の首都目前まで迫った。公国の首都では臨時会議が開かれていた。


「臨時会議を開かせていただきましたキーウェルです。今回はオトシュ王国大使にも来ていただいております」


 殺伐とした部屋で会議は始まった。


「帝国の捕虜となっているマンターから和平交渉の申し出がありました。私としては首都を取られる前にここで交渉すべきだと思います」


「キーウェル殿、降伏などありえません。ここは首都防衛に専念すべきです」


「その通りですよ。ところで同盟国の参戦はいつになるのですか?オトシュ王国大使さん?」


 徹底抗戦派が多い会議室で大使は話し始めた。


「我々オトシュ王国をはじめとする同盟国はサイシュ公国を支援する姿勢を見せています。参戦もそう遠くはないかと」


「遠くはないと言われ続けてもう敵は目の前まで来てるんです!これ以上同盟を信じるべきなのかどうかも考えものですね」


「あなた達公国が我々を頼りすぎるからこのような事態になるんですよ。そもそも戦争の原因を作ったのはあなた達じゃないですか!我々はこの時期に戦争を始めるつもりではなかったんです!しかしあなた方が勝手な行動を起こしたせいで計画が狂ったんですよ!」


 大臣達は押し黙り、キーウェルが話し始めた。


「オトシュ王国さんには大変尽力していただいております。この前の共和国艦隊派遣もオトシュ王国の協力あってのものでした。公国は大変感謝しています。ですがこれ以上の戦争継続はこの国だけでは不可能です。ですから同盟国の方々にもう一度交渉していただけないでしょうか」


「…まあ、キーウェルさんがそこまで言うのなら。少し厳しいでしょうが、もう一度交渉してきます」


 大使は席を立ち、大使館へと戻っていった。


「我々にはもう一つ議題が残っています。アベルノ公爵の避難場所です。首都が使えないとなれば島の北西にある街を臨時首都とすることも考えているのですがいかがでしょうか」


 出席していた者たちの視線が公爵に集まり、公爵は話し始めた。


「私はこの首都に残る。先代たちが残してくれた民や土地を捨ててまで逃げることはしたくない。そして私は抗戦を主張する。公国が帝国なんぞに負けるわけがないじゃないか。私は戦争が始まった時からそう確信しているのだ」


 アベルノ公爵の発言で首都での徹底抗戦が決まった。首都を囲む中世の頃の城壁に大砲が取り付けられ、門の前には戦車隊を配置し、土嚢が積み上げられた。首都の住民で逃げ遅れた者には地下シェルターが提供され、有志には銃も支給された。抗戦準備が進む中で、帝国の足音は刻一刻と迫っているのだった。

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