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惑星記  作者: フランクなカイザーフランク
第二章 サイシュ公国戦争
15/48

対潜哨戒

 A-2装甲爆撃機から落下傘が投下された。落下傘はゆらゆらと揺れながら海中に入り、データを送信し始めた。


「付近に潜水艦の反応なし」


 ヴェルン副操縦士が艦隊に報告すると、また上空から潜水艦探しが始まった。最初に潜水艦らしき艦影を発見してからもう2日ほど経つが何も進展はない。機内のみんなも退屈しているようだ。アモスがレーションを片手に文句を言っている。


「母艦の今日の昼飯はなんなんだろうなー。いい加減食器に乗せられた料理が食べたいなー。なあセイツェマン、最後に着艦したのって何時間前だ?」


「ソナーを補充しに帰ったのが最後だから、14時間くらい前かな」


「哨戒任務だって立派な仕事だし、我々がいないと安全に兵士を上陸させられないんだ。もっと誇りを持って取り組め」


 話を聞いていたジェルソン機長がアモスに対して諭した。交代制で見張りを続けているものの、十分な睡眠は取れておらず心身共に疲労が見え始めている。


 哨戒を続けていると突然無線が入った。


「敵航空隊が接近中。第29A特務大隊は迎撃任務に加わり対空ミサイルを発射せよ」


 命令を受けて特務大隊は指定された空域へと向かった。レーダーには確かに百機近くの機影が映っていた。キースは発射準備に入る。


「ロックオン!1番から6番まで発射!」


 翼に取り付けられたミサイルが白い筋を引きながら飛んで行く。こちらが発射して数十秒後、ミサイル接近警報が鳴り響いた。


「正面から敵が撃ってきました!」


「エネルギー装甲全面展開!」


 ミサイルは機体スレスレで爆発し、機体を破損させることはなかった。


「距離が近い。敵が来るぞ!」


 機長がそう言った時、頭上を戦闘機が通り過ぎて行った。友軍の迎撃隊だ。戦闘機達は敵の編隊に突っ込むと縦横無尽に飛び回り、次々と敵機を落としていった。敵の機数は多かったものの、ほとんどが足の遅い爆撃機でなすすべが無いようだった。


 特務大隊は離脱せよと命令があり、空中戦を後にして哨戒任務に戻った。艦隊からは空中戦を抜けてきた敵に対してミサイルが撃ち込まれている。


 すると大隊の他の機から連絡が入った。


「潜水艦と思しき艦影を発見。数が多すぎるため手伝ってほしい」


 急行するとそこには大型の潜水艦らしき影が十数個海面に浮かんでいた。


「まるで侵略戦争時代の潜水艦隊みたいだな。全機爆弾を投下しろ」


 ジェルソン少佐が無線をした瞬間、潜水艦の上の扉が開き、中から猛烈な火が噴き出した。煙を振り払いながらミサイルが飛び出している。ミサイルは方向を変え、そのまま艦隊へと向かっていった。


「艦隊に告ぐ!敵潜水艦が艦隊に向けてミサイルを発射!繰り返す、艦隊に向けてミサイル発射!」


 ヴェルン副操縦士が慌てて連絡し、第29A特務大隊は潜水艦への攻撃を行った。しかし、潜水艦隊はミサイルを撃つとすぐに海中へと消えていった。



「哨戒部隊より連絡!敵潜水艦が本艦隊にミサイルを発射したとのことです!」


「レーダーにも映りました!その数 15!」


 シクス将軍がいる艦橋に急報が飛び込んできた。そこにはドーゲン将軍補佐や上陸艦隊長に任命されたルビウスもいた。


「将軍様、ここは防空艦隊を使いましょう。新しく装備されたシステムなら対応可能やもしれません」


 ルビウスがそう言うと将軍は「任せたぞ」とだけ言い椅子に腰掛けた。


「防空戦隊は砲をレーダーと連動させて狙いを定めろ」


「ただいまレーダー連動中…連動成功しました」


「各砲は弾道計算を行い誤差修正せよ」


「誤差修正完了。全艦発射準備完了しました」


「撃て」


 ルビウスの合図で防空戦隊の艦艇は一斉に火を噴き、その衝撃波で海面を揺らした。着弾までのカウントダウンが始まる。


「… 20、19、18、17 …」


 艦内は結果を待たずに次の迎撃準備が行われ、慌ただしくなっていた。その間もカウントダウンは続く。


「… 7、6、5、4、3、2、1、着弾。15基中13基が消えました。依然として2基が接近中です」


「近接防空システムを起動せよ」


「近接防空システム起動します」


 レーダー班からミサイルのデータが送られ、防空戦隊の艦艇にある無人機関砲とデータを連動させる。


「各砲発射準備完了。いつでも撃てます」


「ミサイルが射程圏内に入りました!」


「撃て!」


 ミサイルの光が見え始めた頃、艦艇から曳光弾の筋が描かれた。その筋はミサイルに真っ直ぐ向かい、2基ともに直撃、爆散した。艦隊が歓喜に包まれた。


 迎撃隊が帰還した夕方ごろ、他の隊員に哨戒任務を任せて特務大隊隊長機は母艦にいた。アモスだけは着艦するやすぐに食堂へと向かっていき、他の者たちは作戦司令室へと向かった。部屋にはシクス将軍、ドーゲン将軍補佐、そしてルビウス上陸艦隊長がいた。それだけではなく各艦艇の艦長や航空部隊の部隊長など輸送船護衛任務に当たっている全ての高級将校が集まっていた。


「先ほど敵が行った攻撃の通り、我々は一つの油断も許されない状況だ。これから注意すべきなのは夜間の潜水艦による攻撃と航空攻撃である。潜水艦哨戒任務には第29A特務大隊に当たってもらっているが、航空攻撃に対しては少し心許ない。そこで直掩機を増やすことにした。主に軽空母の戦闘機を出す予定だ。そして、明日からは水上艦隊同士の戦いが起こる可能性が高くなるが、敵の航空攻撃を防ぐために哨戒部隊と直掩部隊は艦隊戦には参加せず、艦隊周辺に残すこととする」


 こうしてドーゲン将軍補佐が作戦の説明をしている時に第29A特務大隊の話題が出た。


「敵の潜水艦隊であるが、敵は新鋭艦を出しておりミサイル攻撃が予想される。今回はなんとか被害を出さなかったものの、いずれ攻撃をまともに受けることになるだろう。そこで秘密兵器を用意した。A-1 航空爆弾だ」


 ドーゲン将軍補佐がそう言うと室内はどよめいた。A-1 航空爆弾は共和国首都を灰燼に期した爆弾であり、実戦ではあれ以降一度も使われることはなかったからだ。対潜水艦で新型爆弾は嫌な予感しかしない。


「これを第29A特務大隊の1番機に搭載し、敵の潜水艦隊めがけて投下してもらいたい。できるか?」


 ジェルソン少佐は「できます」とだけ答えた。セイツェマンはあれほどの威力を持つ爆弾を海で爆発させたらどうなるのか不思議に思ったが、それよりもあの兵器をもう一度使うことには少しためらいもあった。


 会議終了後、機体には爆弾が載せられた。アモスは食事の途中で連れ出されたせいか少し不機嫌だ。機体は発艦位置に入り、そのまま轟音を立てながら飛び立った。


 哨戒任務の最中、アモスに司令室であったことを伝えた。すると反応は


「あんな爆弾を海中で使っちまったら海水が全部蒸発して船が落ちるんじゃないか?」


だった。爆弾の影響は未知数だが流石にそれは無いだろう、というか起こらないでほしいと思うセイツェマンだった。



 その頃、サイシュ公国のキーウェル海軍大臣のところには帝国艦隊に関する情報が送られてきていた。


「撃ち落とされるとは思っていたが、まさかミサイル全てがそうなるとは思わなかったな。マンターを呼び出してくれ」


 控えていた将校が退出してしばらくするとマンター海軍中将が入ってきた。


「第二戦隊を出撃させますか」


「まあ待て、ここは第一戦隊を投入しよう。我々が決戦とするのはここではなく上陸間近の砲撃戦だ。それまで新鋭艦の損失は抑えたい。それと狙うのは輸送船だけでいい。できるだけ損害を出さないようにな」


「承知しました」


 マンターは第一潜水戦隊に出撃を命じ、第二戦隊と入れ替わりになる形で出港した。従来型のみで構成された第一戦隊の攻撃手段は魚雷と大砲のみでミサイルは搭載していなかった。


 夜明けが近い頃、潜水艦隊は帝国の輸送船団を発見した。


「注水開始」


 号令で潜水艦の魚雷発射管が水で満たされる。海面には無数の潜望鏡が浮いている。


「発射!」


 海中に白い筋が何本も描かれ、輸送船めがけて進んでいった。帝国艦隊で哨戒任務に当たっていた者が潜水艦隊を見つけた頃には魚雷は発射されていた。


「ジェルソン少佐!敵の潜水艦です!魚雷が十本以上発射されました!」


 ジェルソンが外を見ると、もう輸送船団の間近に迫る魚雷があった。船団に警報が鳴り、全ての船が一斉に動き始めた。

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