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惑星記  作者: フランクなカイザーフランク
第二章 サイシュ公国戦争
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反抗作戦

 海戦から1ヶ月後、シクス将軍は帝都参謀本部にいた。そこには六将軍全員が揃っており、対公国戦についての話し合いが行われた。


「みんなも知っての通り帝国第三海上艦隊は先月、敵の攻撃によって痛手を受けた。このまま公国にやられっぱなしではいけない、だから今日はみんなに集まってもらった」


 ワンス将軍が話し始めた。それに続いてジース将軍が戦況の説明を始めた。


「帝国の現状動かせる戦力は3つの主力海上艦隊、18の陸軍師団、北西諸島軍所属の航空隊と大陸西岸にいる航空隊のみです。航空艦隊は全て改修作業を行なっており、今すぐ戦場に出すことはできません。一方で公国は海軍戦力を十分に持っており、航空機には例の新兵器が搭載されています。北西諸島が侵攻される恐れがあるので早急な対応が必要です」


 これまで航空艦隊の力があったおかげで覇者まで登り詰めた帝国にとって、ほとんど航空支援なしの戦いは厳しいものになる。海戦になれば帝国海軍は相当の被害を出すことになるだろう。


「そこで我々は反抗作戦を行うことにした。公国本土に乗り込んで敵を制圧するのが目的だ。サース将軍、説明を頼む」


 ワンス将軍に話題を出されてサース第三将軍は立ち上がり、持っていた書類を読み始めた。彼は第三皇子でジース兄さんの次に賢い。新鋭艦揃いの第三航空艦隊を率いていて、突破力のある部隊を育てている。


「第一、第二、第三海上艦隊護衛のもと、6つの歩兵師団と3つの機甲師団を送ります。上陸地点はサイシュ島沿岸の中で最も首都に近いここです。すでに上陸部隊は北西諸島第五基地に集結しており、後は輸送船に乗るだけになっています」


 サース将軍は画面に映されたサイシュ公国の地図に向かって指をさした。話を聞いていた将校の1人が質問をした。


「途中、敵海軍との戦闘が懸念されますが、そこはどういう計画なのでしょうか」


「敵には帝国を超える潜水艦隊や主力艦隊が多数揃っています。ですが、第三海上艦隊には敵の砲弾をはじく装甲を持った新型爆撃機があります。それに哨戒や攻撃を任せようと思っています。なあシクス、お前のとこの大隊にできると思うか?」


「は、はい。きっと大丈夫だと思います」


 急に話を振られて焦ったシクスは少し噛みながらそう説明した。


「ということで今回は第29A特務大隊が参加する予定なので、指揮官として参謀本部からシクス将軍を送りたいと思います」


 衝撃の事実だった。帝国の運命を左右する作戦の指揮官なんてシクスにとっては「ボクのなりたくない職業ランキング」堂々の一位だ。それに経験が1番少ないシクスが選ばれることはどう考えてもおかしい。しかし、ここで辞退して兄たちの面目を潰すわけにはいかなかった。


「わかりました…」


「よし、じゃあそれぞれ準備を始めようか」


 会議が終わるとシクスはワンス将軍に呼び止められ、後で部屋に来るよう言われた。部屋に入るとワンスだけでなくサース将軍もいた。促されるまま椅子に座るとワンス将軍から話は始まった。


「シクス、こんな仕事を押し付けられてとても疑問に思っていることだろう。でも俺たちは適任なのはお前しかいないと思っている。共和国戦でも初陣ながら見事な采配だったし、お前のところには海軍出身のドーゲンもいる。何も不安に思うことはない」


「そうだぞシクス。何も心配する必要はない。思う存分戦えばいい」


 不安を抱えながら、シクスは2人の兄に背中を押されるままに上陸部隊の待つ北西諸島に向かった。


 一方その頃セイツェマンは北西諸島の基地で久しぶりの仲間達と談笑していた。


「アモスは休暇中何してたんだ?」


「俺は実家に戻って家の手伝いをしてたぞ。やっぱり久しぶりの故郷は良いもんだな。そういえばランドルはさっき大荷物を抱えてたけど、どっか行ってきたのか?」


「うん。街に新しい本を補充しに行ってたんだ。久しぶりに行ったけど知らないうちに色んな本が出ていて楽しかったよ。セイツェマンもどこか出かけたりしたの?」


「帰るとこもないし行きたい場所もなかったから私はジェルソン少佐と基地に居残りしてたな。ランドルから借りてた本も全部読ませてもらったよ。ありがとう」


「楽しんでもらったならよかったよ」


「お前、本を読むだけで休暇を終わらせたのか?もったいないな」


「私にとっては十分良い休暇だったよ」


 話の途中で整列の号令がかかった。シクス将軍が到着したそうだ。飛行場に専用機が降り立ち、中からシクス将軍が出てきた。シクス将軍はそのまま壇上に上がり話し始めた。


「出迎えご苦労。公国上陸部隊の指揮官を務めるシクスだ。皆、周りを見てわかるようにここには陸海空を問わず多くの者達が集まってくれている。力を貸してくれてありがとう。しかし、作戦が終わる頃には隣の戦友がいないかもしれない。これまでのような楽な戦いにはならないだろう。我々はそのような戦いに身を置くことになるのだ。覚悟を持って臨んでほしい。この戦いに帝国の命運が懸かっている。諸君の奮戦を祈る」


 将軍の話が終わると万歳三唱が始まり、将軍は歓声を浴びながら司令室へと歩いて行った。


 解散後、第29A特務大隊は集められた。ジェルソン少佐が話し始める。


「先ほどシクス将軍様直々にこの大隊にお言葉があった。今から読み上げる。『第29A特務大隊の諸君、これまでの戦果には大変満足している。この作戦ではこれまで以上に働いてもらうこととなるので健闘を期待する』とのことだ。将軍様からお言葉を頂けるのは大変名誉なことである。各員一層励むように。そして作戦の概要だが、我々は対潜哨戒任務に就くことになった。友軍が上陸するまで潜水艦の発見、撃滅を行う。新型機は航続距離が長いから、武装の補充以外で着艦することはないと思ってくれ。以上だ」


 輸送船に装備などの積載が終了し出撃準備が整い、旗艦の汽笛を合図に全艦艇が出港した。沖に出てしばらくした後、作戦水域内に入ったとアナウンスがあった。そして第29A特務大隊は全機発艦した。空には少し雲がかかっており、海に輝きはない。


 哨戒任務を続けていた時、セイツェマンは海中に影を見つけた。


「潜水艦と思われる影があります!」


「キース、爆撃準備をしてくれ」


 機体は艦影に向けて降下を始めた。しかし、艦影はどんどん海中に入っていく。


「まずい、逃げられる前に落とすぞ!」


 機体が艦影の上空を通り過ぎたあと、海面では爆発が起こったが潜水艦の重油や部品が浮くことはなかった。ジェルソン少佐は海面を見ながらヴェルン大尉に言った。


「おそらく逃げられたな。潜水艦を逃したと母艦に伝えてくれ」




 その頃、サイシュ公国潜水艦隊長マンターは出撃していた潜水艦からの連絡を聞いた。


「帝国の艦隊を発見したとのことです。ですが敵は哨戒機を飛ばしており迂闊に近づけないそうです」


「ひとまず上に報告しろ。加えて第二戦隊に出撃準備しろと伝えてくれ」


「承知しました」


 帝国の侵攻部隊が迫っているという報告を受けて、公国は艦隊決戦を挑むために主力艦隊に出撃命令を下した。マンター潜水艦隊には新造艦で構成された第二潜水戦隊の出撃を命じた。公国の新造艦には世界で初めて対艦ミサイルが装備され、速力も従来型を大きく上回っている世界最高峰の潜水艦だ。新造艦は出港し、指定された海域へと向かった。


 一方、公国首脳部は対帝国秘密同盟に軍事支援を打診したが、依然として良い返答はなかった。そんな中、海軍大臣であるキーウェルはオトシュ王国の国防大臣と電話会談を行っていた。帝国侵攻の報が交渉を後押しし、秘密裏に公国からの申し出は受理されることとなった。

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