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デチャルネーレ  作者: ハゲタカ
Awakening of justice
2/19

死神の微笑み

「警告はしたはずです」


少女が鎌の刃先を俺へ向ける。鎌の形状は持ち手と刃部分が平行になっており、斬りやすいようになっている。つまり、彼女は俺を殺す気満々だ。


「それでも来るというのなら、きっとこの結末は避けられなかったでしょう」

「そうだね、俺もそうだと思う」


彼女との敵対、それは俺が彼女と出会った時点で避けられない運命であっただろう。

たとえ俺の記憶が消えても、何度も呼び覚ます。逃れられない結末だ。

だからこそ、俺は手に何も持たない。

丸腰で、今に俺を殺そうとする人間の前に立つ。


「残念ですが、お別れです」

「どうかな?」


俺は両腕を広げる。目の前の彼女を包み込むように。


「キミに殺せるとは思えない」


無言で見合った後、彼女は走り出した。そして俺の生命を刈り取るように鎌を…



------------------------------------------------------


「…ん?」

夕陽の光が俺を差し、柔和な温かさを伝えると眠りが覚めた。

確か今は放課後、そしてここは文芸部の部室。


「よく眠っちまったな、ふわーあ」


あくびをして外を見る。運動場にはサッカー部、野球部が列をなして走っている。

今日も練習熱心なことで、あの情熱はどこから来るのやら。

体験入部のマラソンでダメだと感じた俺には一生分からない世界だ。

掛け声が聞こえてくるのをBGMにして、俺は目の前の書類に目を向ける。


『あなたの大人の定義はどのようなものですか?』


大人、ねえ、そんなことを子供である私共に質問して何をする気なのか。こんな紙を一枚投じたところでそれが何に反映されるのか。まあ提出しなければいけない書類なんだけどさ。

子供の考えるべきことじゃないか、適当に書こう。しかしいいアイディアがないな。


「うーっす」


部室の扉を開けて姿を現したのは、かの石井と言う男だった。何とも普通の基準を全て満たしたような男だ。いっそこの紙面の『大人』を『普通』に変えてこいつを基準に答えたら百点満点花丸貰えちゃうぐらいの、そんな凡々とした生徒である。スッと俺の向かいに座る。


「会長はまだ来てねえのか」

「今日中には来るだろ、数少ない活動日だし」

「先週は来なかったけどな、来なかったらこっちから行くしかないか」

「なんか急ぎのようでもあんの?」

「委員会の書類、委員長に体よく扱われてさ、判子押してもらわんとな」

「あー、図書委員か」

「そ、新しい本を置くのに一々手間だよな」

「仕方ないさ、エロ本とか置かれても困るだろうしさ」

「エロ本一歩手前の物はあるけどな」


ラノベのことだろう。なんだか最近ラノベが図書室に多く置かれてきているって話だけど、挿絵とかがやたら強烈なものが多いらしい。人間、いつもギリギリを攻めたくなるものなんだなっとその挑戦心に感服する。大丈夫、数百年後には絵画みたいに神聖視されているさ。


「ていうか、図書委員が終わったなら」


言いかけたところで扉が開いた。黒髪ロングの女子生徒が入室する。


「よ、大月」

「…うん」


小さい声で返事はしたがすぐさま窓際の席に座って顔を腕にうずめる。


「やたら上機嫌だな」

「今ので分かるのかよ」

「表情を見れば一発だろ」

「あんなバイザーみたいな前髪の向こうの表情が見えるのか、さすが隣人」


確かに大月は前髪で表情が見えにくいが、口元とか体の動きとか見れば割とわかるものだ。

いつも隣の席で見ていればな。


「課題を終えている日とそうでない日での差を見極めるのには時間がかかったものだ」

「1年の秋に言うことじゃねえな」


俺と大月は高校の入学式が初見だ。1学期って短いか?

課題を見せてもらおうかと楽しようとしたら苦労の方が多かったという本末転倒な話だ。


「お前ら付き合わないの?」

「言うじゃないの、俺がそんなフットワークの軽い男に見えるか?」

「見える、チャラ男だし」

「チャラ男!?」

「ちなみに言い出したのは御陵」

「あの野郎…」

「野郎ではなかろう、奴もまた女よ」

「あの女郎!」


スッと入ってきた第3者、この気配には馴染みがある。


「そういう問題か、っていつ来たんだ根室」


いつの間にか石井の隣に座っていた男がいる。

この男の名は…


「スペクター卿!」

「その名を軽々口してはならない、我が名は根室僚」


怪しげにメガネをクイッと上げる。


「目立つことは避けなければならない、控えよガーデナー」

「ハハー!」


両腕を開けてぺこぺこする、椅子に座ったまま。

地面に座るまでは面倒くさいので簡易でいいだろう。

石井は面倒くさそうだ。凡人は辛いな。


「言うほど幽霊部員か?スペクターって幽霊って意味だろ?」

「気取られぬことに意味があるのだ、霊的にな」

「本日も庭園のバラの育ち具合は絶好調でございます!」

「些細なことを報告ご苦労、下がってよい」

「私のウクレレも絶好調でございます!一曲いかがすか!?」

「下がれと言った、血を見たいか?」

「ハハ―!」


立てかけてあったウクレレをケースから取り出そうとしたらお断りされた。

今朝は結構いい音色出てたんだがなぁ…


「今日も花壇で騒音騒ぎか?」

「騒音扱いとは失礼な、緩やかなメロディは朝のヒーリングメロディだぜ?」


俺は日課、というか趣味として校庭の花壇をいじっている。よく育つためには音楽を聞かせる必要があるということなのでウクレレを弾いて聞かせている。ペチュニアとか中々いい感じに育っていて今のところ順調だ。


「これも会長に感謝だな」

「花壇を使う代わりに文芸部に入部って条件だっけ?」

「学校側の必死さを感じたぜ、伝統的な文芸部を失くさないって意気込みをよ」

「学校もなんでこんなやつに任せたんだか」

「こんなやつとはなんだ、俺こそが我が校のガーデナー」

「しかし腕は確かなのは事実だろう?疑念を抱く必要など皆無に等しい」


そうだそうだ、と根室の擁護に甘んじていると石井は微妙な顔をした。


「いやだって、入学して早々に他人様の花壇を使ってるやつとかドン引きもんだろ」

「うっ」


これを言われたら俺は反論しようがない。入学当初、俺は寂れた花壇が気に入らなくて花の植え替え等々を行っていた。勝手に行っていたのだから教師にはギャンギャン言われたが、それを知った会長が平和的提案をした。


「文芸部の部員不足が功を奏したか」

「でも花壇を見放していた学校側も悪いだろ、校舎を彩る文字通りの花だぞ」

「勝手に手を出すなアホ」

「あうん」

「しかし見事だったぞ春の花は、校舎の外観が華やかに見えていとをかし」

「なぜ古語…」

「シュナイダー卿はこういう風情を分かってくれるんだよな、どこぞの石井君とは違って」

「スペクターだ、貴様、今敵を増やしたぞ」

「学校のことなんて学校に任せとけって感じだけどな」


紆余曲折はあれど許可も出たし、特に問題は無いだろう。


「俺はお前らが何かしでかしそうで怖いよ」

「フフフ、怖いか?」

「怖れるがよい」

「ダメだこりゃ」


俺たちに常識的な価値観を求めてはいけない。たった一つの俺の人生だ、惜しまんぞ。

手元の暇を見兼ねた石井が棚を探り、トランプを取り出した。ピンときた俺と根室は次いで棚からボードを取り出す。


「取りあえず暇だし、トランプでもやろうぜ」

「うっし、俺白な」

「私が王将だ」

「二人用ボードゲームはじめんじゃねえよ」

今ここでトランプ、チェス、将棋の三つ巴の合戦が始まる…!


------------------------------------------------------


「チェック!」

「王手!」

「はいダウト」

「「ぐあぁ!!」」

「何をやっているんだ、お前たちは」


異種テーブルゲームをやっているとお待ちかねの会長がやってきた。

やった、これでダウトで全部終わるバランス崩壊ゲ―ムとはおさらばだ。


「会長、印鑑を」

「そうか、委員会だったな」


石井が書類を出した。俺たちはそそくさと遊び道具を仕舞う。

口調は男勝りだが女性である。ミドルヘアにでっかいリボンを後頭部につけている。なんというか…ギャップ萌え?を感じさせる人だ。…そういう人に会うのは小学生のころ以来だ。


「さて、帰るか」

「待て帰るな阿呆」


書類に目が行っている隙にを退室しようとすると、俺の襟首を掴んできた。この握力、化け物か。


「え?なんか部活でやることあるんですか?」

「失礼な物言いだな、…確かに特には活動は無いが」


やっぱりないんじゃないか、無理やり入部させたくせしてこの活動の無さよ。

まあ、夏の川柳大会が終わった直後なのでやることがないんだが。


「懲りずにギターを弾いているらしいじゃないか」

「ウクレレです」

「どっちでもいい、3年の先輩から苦情が来ている」


苦情かぁ、そんな聞き心地悪いかな?


「先輩方も受験を控えているからな、今の内は控えておけ」

「えー」

「二度は言わんぞ」

「は、はいぃ…」


ぶつくさと文句を言えるのも束の間、鬼の鋭い眼光の前では俺は了承するしかなかった。

俺が好きにガーデニングできているのはこの人が庇ってくれていたおかげである。

この学校に園芸部が無いのがいかんのだ。園芸委員会はあるけど委員会なんて週一だし。


「それだけだ、解散していいぞ」

「は、はひぃ」

「お疲れ様でーす」


怯える俺を素通りして石井は淡白に部室から出ていった。薄情な奴め、もう少し擁護があってもいいものを。


------------------------------------------------------


逃げるようにして学校を出る。石井と共に。

暗い帰路を二人で並んで歩く。


「もうどこでウクレレを弾いていいか分かんないよ…」

「家でやれ、それかスタジオでも借りろ」

「残念ながら、バイトも何もやっていない俺にはそんな金がないんだ」

「どっちにしろ面倒は勘弁だ、変なことしたら絶交だ」

「お?今のところ俺のこと友達だと思ってくれてる感じぃ?」

「今すぐ絶交でもいいんだぞ」

「部活で気まずいからそういうことはしないようにしようね!」


9月下旬の涼しい風が肌を撫でる。

もうすぐ秋、…今年は秋あるかな?すぐ冬になるんですもの。


「空気が変わるとワクワクするな、何か新しいことが起こる予感がする!」

「予感がするだけだけどな、俺の場合」

「なぁに、いつか変化はあるさ、俺たちもいずれ大人になるはずさ」


今は子供だけど、きっと大人の定義について語れるようになる。


「そういえばお前、家は郊外の方だっけ」

「そうだな、遠くて自転車使いたいけどな、荷物重いし」

「ウクレレなんて持ってきてるからだろ」

「これは譲れんな」

俺のお供としてウクレレは外せない。こいつと一緒ならこの帰路も苦とは思わない。

「自転車を使えない理由はなんだ?」

「壊れちゃった」

「…」

「黙るなよ、傷ついちゃうだろ」

「ちなみにどんな過程で?」

「引きこもりの従妹を連れ出すために籠に載せて連れて行ったところ、調子乗って滑空し始めて映画の真似事したら壊れちゃった」

「何言ってんだ?」


一言で説明するには難しすぎるため割愛。いざ振り返ってみると自転車を壊す必要性がますますなかったように思えてくる。仕方ない、俺は頭が悪いのでそういう発想しか湧いて出てこないんだ。


「まあ、そんなわけで俺はやらかした罰として、徒歩登校を甘んじて受け入れることにしたのさ」

「はあ、なるほど、お前が何かやらかすのは容易に想像つくしな」

「俺だってやらかしたくてやらかしているわけじゃないんだぜ?ただ人間何事も初めてだろ?今日することが、明日や昨日と全く同じであることは無いじゃん?だから未知への挑戦って言うのは常日頃からしていることだと思うだよね俺は」


その結果、失敗したことを『やらかす』とか言っているわけで。


「何の受け売りだ?」

「100%俺の言葉さ、あ、今の嘘、少し受け売り入っているかも」


過去の哲学者辺りが言っていそうなことだが、俺の即興で考えた言葉が似るっていうんなら、それは人間の本能的な部分なんだろうな。

己の外部から内部に伝わる構造の仕組みは、依然として変わっていない、っていうことなんだろう。


「…変わるのか?」

「何が?」

「俺たちが大人になって、その感性が変わるなんてことがあるのかって」

「お前さっき変化があるって言ったばかりじゃねえか」


そう言えばそうだった。…でも、それは環境の変化であって俺たちの内面の変化ではない。


「なんかずっと思ってるんだけどよ、俺以外の時間の流れ若干早くねえ?」

「…ああ、楽しいことがあると時間が早く経つ的な?」

「いや、多分違う、違うとは思うんだが」


部分的には合っている…のだろうか?いまいちしっくりこない。


「難しく考えすぎんなよ、らしくねえぜ?」

「…そうかもな」


俺はウクレレを手に取り出した。


「って何やってんだ?」

「感情のチューニング」

「迷惑だからやめろ」


石井に羽交い絞めにされて無事演奏は中止された。

ふう、危なかった。俺の今日の華麗なメロディが周囲の人たちを魅了するところだったぜ。


------------------------------------------------------


石井と別れて一人、橋上を歩く。

車が行き交い、偶に人が俺の隣を通り過ぎていく。

物寂しいからハイタッチでもしたいぐらいだが、見知らぬ人に接するときは物理接触は控えた方がいいらしい。迷惑がられるから。

やっぱり人と仲良くなるには自分を如何に魅力的に見せるところから始めなきゃな。

動物がするようなことだが、人間だって動物だ。その理屈から外れる道理はないはず。

だからこそ、俺はウクレレを手にした。なんてったって弾く方も聞く方も陽気になるWIN-WINな方法だからな。音楽で世界平和を説くミュージシャンだっているぐらいだし、仲良くなるには間違いってことは無いだろう。

よし、俺はウクレレを弾き続けるよ。学校で弾けなくとも家で弾けばいい。世界中に俺の音色を響かせられるように努力するよ。

拳を天へ突きあげてそう決心した瞬間、光が消えた。


「!?」


周囲の明るさは瞼を閉じたかのように消失し、静けさを取り戻す。

俺は目が慣れないうちは月の光と夜空の青さを頼りに視界を確保した。

車は走っていない。風が吹く音と虫の泣き声だけが聞こえている。

どういう現象だ?まるで違う場所へ転移したみたいな違和感。

だが橋の上に俺は立っている。これは、説明役が必要だな。


「誰かー!!いないかー!!」


俺はウクレレを取り出した。闇が覆うこの世界に沈黙は似合わない。


「聞いてくれ!俺はここにいる!」


ただ俺の居場所を伝えるために弾いた。弾きたい気持ちもあったが、異常事態からの脱出が最優先だ。人を探さなければ。

背後からヌチャ、と粘液を帯びた奇妙な音が俺の演奏に割って入った。

人か!?と思って振り返る。そこに居たのは人ではなく、カエルだった。

俺の下半身に頭が来るぐらいの巨大なカエルだ。それが数匹、橋下から這い上がって出てきた。


「…」


現実とは思えないような光景に俺の演奏する手が止まった。

どっきり?いやそう片付けるのは危機感が欠如していることの証左。

アニメとか映画でよくある「すげーなんかの映画の撮影?」とか言っている一般人は大抵ひどい目に遭うやつだ。ここから俺がすべき行動はこれだ。


「だ~れかっ!助けってくださ~いっ!!」


助けを求めることだ。幸いにも俺の手には楽器がある。音を伝えるにはうるさいぐらい必死に空気を振動させた。さあ届け!俺の歌!


「えんっ!」


一通り奏で終えたところで手が止まった。これ以上何を弾けばいいか分からず手が止まってしまった。

カエルたちはゲコゲコと騒がしくもじっと目線を俺へ向けていた。

仕掛けてくる様子はない。

俺はカエルたちに対してお辞儀をした。仮にも俺の演奏を聞いてくれたリスナーたちだ。

実は割と温厚なのかもしれない


「ご静聴、ありがとうございました!」


静聴はしていないけど、ゲコゲコうるさいけど。

あれ?もしかして俺の演奏、カエルの鳴き声に負けてない?

気づいたときには、その鳴き声は一斉に鳴り止んでいた。

その直後に俺の周囲を影が覆った。

俺の身長の二倍ぐらいある、その大きなシルエットの正体は、カエルだった。


「ゲコ」


その絵面のインパクト、泣き声の大きさに圧倒されてウクレレの弦のように俺の身体は震えあがった。

次奏でる音の音源は俺の身体のいずこからかな?はは!もちろん平和的な情景は望めないけど。

せめてカエルなのだから丸呑みで一思いにやってほしい。…いや胃酸でじわじわ溶かされるのってきついか?想像するにきついな。

だが、それでも俺はウクレレを持ち直す。


「誰か聞いてくれ!」


ベンベンベベンベン、とウクレレにしては少し低い音がでた。しまった、心の乱れが低音を生むのか。

巨大なカエルは腕を振り上げる。確実に俺をプレスするための平手だ。

速くは無い、だけど大きい。逃れられるかどうかというところで俺はウクレレを持って走り出した。


「うあっ!!」


案の定、足を挟んだ。痺れが先行し、痛みがやってくる。

あ、終わった、と思った。

しかし意外にも足はすぐに引き抜けた。ヌルヌルしていたからか。

足を引きずりながら巨大カエルから逃げる。だが脅威は1体だけでは無かった。


「ゲコ」


数体のカエルたちが一斉に飛び掛かってくる。だが避けられないことはない。

軌道は単純、飛んできた複数のボールを避ける感覚だ。だが全部を完璧に回避はできない。

手負い、というか足負いの状態だ。


「ぐあっ!誰かっ!」


俺は飛び掛かるカエルのタックルに屈せず、助けを呼ぼうと声を上げる。

カエルたちが俺の肢体に絡みつき、粘着弾のように橋のフェンスに拘束された。

ズシンズシンと、ゆっくりと巨大なカエルが近づいてくる。


「だ、誰かぁ!!」


情けない声だ。だけどできることはこれしかない。

必死の呼びかけは、誰に届くことも無いだろう。

カエルの舌がじっと俺の身体に近づいてくる。大アリクイに殺された旦那ってこんな気持ちだったんだろうか。

このまま暗い死の淵へ誘われるのだと思うと、酷く寒気がした。

死?死って、どうなるんだ?

思考停止、俺はただ目の前の未知に恐怖するだけだった。

一閃、白い軌跡が巨大なカエルの前を横切った。

綺麗な横線、そこから巨大カエルの身体はパックリと割れ、頭部と胴体部で切り分かれた。

頭部が柔らかいボールのように弾んで転がる。

巨大カエルはそこから一切動かなくなった。死んだ?のか?

頭部が無くなって見えたその先には、誰かがいた。

暗闇でも分かるような白銀の髪、月の光を吸い取っているかのような輝きでその銀色が際立っていた。


「…」


助けてくれた、のか?

その人は俺へ近づいてくる。その手に持っているものが露になった。

鎌、巨大な大鎌だ。人一人分はありそうな持ち手の長さ、刃渡りは巨大ガエルを一撃で裂くほどの大きさ。それを俺の目の前に立ち、振るった。


「待っ…」


命乞いをする間もなくその鎌は振るわれた。

ビビって目も開けられなかったが、自分が切り裂かれたわけではないことに気が付いて、ほっとした。切り裂かれたのは俺に引っ付いたカエルたちだ。

全員一斉に一撃で吹き飛ばされていた。同時に周囲が明るくなった。

街に明かりが一斉に灯り、街灯が俺たちを照らす。


「志木有史、さん」


その人は、白いドレスを着た少女だった。肩から斜めに下げた白いカバン、青い目に白い肌、そして白銀の髪。


「私の一生をかけて、貴方を守ります」


消えた大鎌に気づかないほど目を奪われる、美しい美術品のようだった。

人物ノート①


志木有史


玲瓏高校1年生

普段は明るく、誰に対しても遠慮がない。

授業に対しても真面目だが「右耳と左耳が脳みそを無視してつながっているから」という理屈で身になっておらず、学力は低い。

園芸に関心があり、普段は学校や自宅での土いじり、もしくは植物の前でウクレレを弾くなど愉快な趣味を持っている。

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