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デチャルネーレ  作者: ハゲタカ
Awakening of justice
12/23

荒らされた学び舎

白鳥に乗って最速で戻る。10秒ぐらいかかったか。

だが校舎に辿り着く前に白鳥の動きが止まった。


「シグナス」


銀音さんが呼びかけても白鳥は滞空したままだ。

俺は何が起きているのかわからない。だが銀音さんは察したようで白鳥の眼の前のなにかに触れる。

触れた部分から青白い波紋を浮かべた。


「アパトム」


ガラスの割れる音がした。同時に白鳥もそのまま進み始めた。


「もう始まっているようですね、準備を」

「おっ」


剣を呼ぶと普通に出た。既に結界の中らしい。

夜が来たかのように暗くなる。鍾乳洞とかってこんぐらいの暗さだよな。

射出型ナイフに切り替えておく。

高度を上げて学校を見渡すと、グラウンドはすごいことになっていた。

巨大なドラゴンに一斉に群がる黒い影、ブレスを吐いて蹴散らしても地面から湧いて出てくる。

ドラゴンに乗っている人間が見えた、陽太郎だ。

高度を下げて陽太郎に話しかけられる位置にする。


「陽太郎、状況を教えてください」

「見りゃ分かんだろ!敵が来てんだよ!」


影をよく見ると騎兵の姿をしていた。槍やら弓やらを構えてドラゴンへその穂先を向けている。

陽太郎が大剣を振りかぶった。


「『スワンツ』!」


詠唱したと同時に振るった大剣から衝撃波が飛び、敵をバラバラにする。

倒しそこねた敵はそれぞれ独自の行動をする。

乗馬していた敵は落下し槍を捨て剣を抜き、馬は騎兵を失い暴れ出す。


「ヴェントゥス・フーヌス」


それら一帯ごと、銀音さんの魔術が蹂躙した。

3つの斬撃が生じて、遅れて無数の斬撃が敵を切り刻む。

あっさりと敵は全滅した。


「何を手間取っているのですか」

「こいつら無限湧きだ、じゃなきゃ苦戦なんてしねえよ、ほら」


陽太郎が指した方向の地面から黒い影が湧き上がってくる。

さっきと同じ姿を形成し、こちらへ向かってくる。


「ここは俺が抑えておく、原因の解決を頼む」

「わかりました、任せます」


白鳥が上昇し、校舎の屋上に向かう。

見下ろすとぞろぞろと陽太郎の周りにアリのように群がる影たち。

いくら陽太郎でもあんな数、無限に湧いてて対処しきれるのだろうか。


「心配は無用ですよ、彼とて戦場経験者、1対多数の戦闘には慣れています」

「けどこの空間は誰にとっても未知の領域なんだよね?原因解決を急がなきゃ」

「そうですね、急ぎましょう」


いつどんな敵が来るか分からない、そんな危機感を抱きながら陽太郎を背にした。


------------------------------------------------------


屋上に降りて鍵のかかった扉を蹴破る。

まずは中にいる人の安全確保をしたいところだ。

というか、会長と根室は?


「巻き込まれている一般生徒がいる可能性があります、安全確保を」

「了解!」


俺はとりあえず入ってすぐの3階、1年の教室全体を走ってざっと見る。

その中で、人の集まった教室があった。


「大丈夫か!?」


扉を開けるとカッターやら包丁やらハサミやらの刃物が、至近距離で一斉に俺へ向けられる。


「うおっ!?危ねえもん向けるな!」

「お前は…」


カッターを向けてきた男子生徒、その姿には見覚えがない。

見た目のインパクトも一目見ればわかるような容姿だ。

包帯グルグル巻きの人とか見たことない。

他の生徒もそうだ、でかい帽子を被った女生徒、頭に蝋燭をつけて藁人形を持っている男子生徒。

やたらと特徴的な格好だ。後ろにいるのも含めてそんな生徒たちが十数人。


「あーオレオレ、わかる?」

「その手には乗らんぞ!」

「詐欺じゃねえよ!」


教室内をぐるぐる見回すと見知った顔が一人いた。

狐のお面を頭の横につけた女生徒だ。


「御陵?」

「…チャラ男」

「その呼び方やめろ」


御陵がまさかこの空間にいるのは予想外だ。

魔術についても何も反応がなかったし、本当に一般人かと思った。

ん?この空間にいるのって魔導師だけだよな?


「お前、すっとぼけるのうまいなー」

「褒めてんのそれ?」

「何にせよ、みんなその物騒なものは本当の敵に向けてくれ、俺は敵じゃない」


御陵と顔見知り、全員顔を見合わせると得物を下ろした。


「外から来たようだが、どうやってここに?」


包帯の男が言う。声が籠もらないのすごいな


「すごい魔導師様が味方についてんだ、安心していい」


そう言うと横から脛を軽く蹴られた。

見ると銀音さんが壁を隔てて腕を組んでいる。


「向埜家の二人の行方を聞いて下さい」

「あ、はい」


銀音さんがそう急かした。確かにこの緊急事態で余計なことを喋っている暇はない。


「会長たちはどこへ?」

「下にいる、校舎の昇降口で警戒しているんだ」

「警戒だけで済めばいいけどな、ありがとう」


ここにいるみんなは結界は初めて、か。

俺は銀音さんを見て頷く。すぐさま走り出し、階段を降りた。

1階へ降り立ち、昇降口を目指す。

中央階段の前の廊下を見ると、根室がいた。


「遅いぞガーデナー、『五行射法・癸射』」


俺達をいち早く察していたようで俺達を一瞥もせず、弓を構える。

曲がり、そこを見ると激戦か繰り広げられていた。


「はぁっ!!」


会長が二振りの刀で騎兵たちを斬っては攻撃を躱し、斬っては躱しとアクロバティックな戦闘を行っている。

複数相手の戦闘だが、根室の援護もあって処理しきれている感じだ。


「根室!」

「御意!」


会長から狙いを外し、根室へ襲いかかる敵もいる。

馬を捨てているが得物は剣、だが根室にはちゃんと接近戦ができる技術がある。

弓を真上へ投げ、それぞれの手の矢だけを持つと二つを練り合わせる。


「『槍法・壬突二連』!」


二つを再び分かち、槍のように手に持って突いた。

向かい来る敵の剣をものともせず打ち壊し、そのまま刺されて霧散する。

それだけにかまっている暇もなく、次が来る。


「『庚光刃三連』」


今度は会長の刀が火を吹いた。いや、あれは刀じゃなくて鞘だ。

鞘の口から光の刃を飛ばしている。

それが根室への凶刃を砕いた。

すぐさま接近戦に切り替わると鞘の口から刀のように白い刃を形成し、無双を再開する。

互いが互いのカバーをし合う。すごいコンビネーションだ。

敵の勢いが落ち着くと、校内にいる最後の一匹の首を落としたところで会長が俺達を見た。


「こんなところか、まだ来るかもしれん」

「持つべきは生徒会長っすね」

「わざわざ御足労ですね、逃げ隠れていればいいものを」


銀音さんは悪態をつく。仲良くできないのか。


「私が退くわけには行かないだろう、なにせ私は生徒会長だ、学校を守る義務がある」

「そんな義務はありません、勝手に思い込んでいい迷惑です」


マジレスで返す銀音さん。そんな頭固くしなくてもいいのに。

ていうか、会長マジでそう思ってんのかな?


「どちらにせよ多勢に無勢だ、協力し合うことに異論を唱えるのは損だぞ」

「不確定要素が勝手に動かれては困ります、あなたはコルセルニの信用を得ていない」


あたまかてー、てか俺も不確定要素じゃないのか?なんなら陽太郎も好き勝手しているけど。


「安心しろ、貴様の背中を切るような真似はしない、故意にはな」

「誤って斬ることはあると」

「だから、ここは私に任せろということだ」


会長が刀を構え、戦闘態勢に入る。

昇降口からはぞろぞろと現れ、単体で窓を突き破ってくる敵もいる。


「問題解決の方を任せる、時間稼ぎは任せておけ」

「…行きますよ、有史さん」


もっとすごい口論になると思ったが状況がそれを許さない。

走り出す銀音さんについていく。


------------------------------------------------------


「銀音さん!あてはあるんですか!?」

「恐らく先程のように拡張空間を地下に作っています、そうでなければ私が感知できないなんてことはありません」


言い切るのは相当な自信が感じられる、まあそれだけの実力はこの目で見てきているから納得はできるが。


「もしかして下準備を前に行っていた?」

「ええ、コルセル二の関係者に頼んで動きがあったのはこの学校だけ、その時点で確認をしておくべきでした」


関係者、宇田先生のことか。そういえば出入りがどうとか言っていたが…

あの時点で敵の計画は始まっていたと。


「儀式魔方陣を作られなかったことだけは幸いでした、敵もそんな時間はないと踏んで今日、実行したのでしょう」

「儀式魔方陣…」


一応、魔導書から学んでいた。国土錬成陣みたいなあれだ。現代でやると魔導師たちがすっ飛んできて即拘束らしいから現実的ではないらしい。

今回はそれを逆手に取って誘導されたわけだ。


「ここです」


そこは技術準備室、つまり、物騒な物が入っていてもおかしくはない。

…いやおかしいだろ、技術の先生はなにやってんだ。

ヒューマンエラーにもほどがある。


「…大した荷物はありませんね」

「もう回収されてる?だったらここの下では?」


拡張空間の入り口を作るのに条件が無いのなら、わざわざ荷物を運び出して別の場所から拡張空間へ行く必要がない。


「…『ハガル』!」

「うお!?」


予告なくいきなり床を破壊する銀音さん。

そして重力に従って落下する僅かな間、銀音さんは俺の方を向いた。これは…寄せられる期待?


「「ターダス!」」


二人一斉に重力制御の魔術を唱えた。

落下していく空間の壁の模様が緩流になって上へ流れていく。


「上出来です」


銀音さんは無表情だが、少し笑っているように見えた。

着地点手前、気が少し緩んで重力制御が不安定になる。


「うお、うあっ!?」


急な落下する感覚にヒヤッとして宙で足をバタバタしてしまった。

足裏を地面に向けて着地するはずが、つま先からの形になってしまい、バランスが取れず尻もちをついてしまう。


「…前言撤回です、及第点ですね」


再度見た銀音さんの表情は安心安定の冷ややかな無表情だった。

気を取り直して立ち上がり、周囲を見渡す。


「拡張領域、なんですかこれ?」

「はい、想定以上に規模は広いようです」


地下通路、なんてものじゃない。

コンテナの一切ない倉庫のような広さ。

見たところ床は円状に広がっていた。俺たちはその円周部分に足をつけている。


〈侵入者感知、即刻対処せよ〉


男の声、どこか聞いたことがあるが、考える暇もなく状況は変化する。

円状の床の中心が十字に裂かれ、開いていく。

そこから飛び出してくる人影が二つあった。


「傭兵稼業をやっててガキを殺せっつう命令は初めてだな」

「つまり、新たな体験てことだ、楽しもうぜ相棒」


フルフェイスのヘルメットまで被った完全武装の軍人みたいな二人だ。

片方は弾丸ベルトをたすき掛けしたミリタリー映画の主人公のような装備。

もう片方はチョッキを着ている、防弾チョッキだろうか?


「デスサイズは俺がやる、ライニ、お前はイレギュラーをやれ」

「オーケーザルガ、戦場の双星とは俺たちのことヨ」


弾丸ベルト装備の方、ザルガと呼ばれた男は武器を取り出す。

あれは、銃?魔導師が銃を持つのか。

銀音さんへ銃口を向けて、発砲した。


「!?」

「…そんな玩具で私を殺そうとしますか」


弾は銀音さんの前で炸裂し、塵に消えた。


「玩具とは言ってくれるな、これでも特殊部隊仕様なのさ」

「!?」


パリーン、とガラスが割れる音がした。銀音さんが少し狼狽える。


「『10-31E』」


ザルガが謎の数字を言うと銃撃が始まる。先ほどの一発は魔術か何かで防げたようだが、何故かこの銃撃には銀音さんは反応し、避けたり大鎌で防いだりしている。


「銀音さん!」


もしかして先ほどのガラスが割れる音は、銀音さんが張っていたバリアを割った音、か?


「『10-70』」

「ッ!ネガシオ!」


謎の数字を言う

銀音さんに注目していたが、こちらにも敵がいることを忘れてはいない。

防弾チョッキを着た男、ライニが俺へ炎を放ってきた。


「ネガシオ!」


魔法で上手く消せたが、魔方陣は出ていない。魔術、なのか?


「悪いなガキ、お前危険らしいんだわ」

「危ない男っていうのは中々名誉なことで」


らしい、で動く組織の駒、か。そんなんに殺されるわけにはいかないな。

ライニが刃物を取り出し、それに応えるようにして俺が射出型ブレードを構える。

あれは、ナイフに近い形だが、リーチがある。マチェットナイフ、っていうやつか。


「『10-25』」

「ウェーレ・ヴェスタ!」


風を纏ってリーチを伸ばす。

風の刃と鉄の刃がぶつかる音が、戦闘開始のゴングだ。

人物ノート⑩


ライニ


魔導治安機関『ラタトスク』の一員だった人物。

今はザルガと共に名もなき傭兵稼業を営んでいる。

「誇りなんてクソにも劣るものは要らない、ただ金が大量にあればいい」

ラタトスクの活動の中で彼はそんなことに思い至った。

人殺しは所詮人殺し、金になればそれでいいのだ。

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