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魔手

ザインに自信満々に答えてやった。

手首が縛られている状態なのでまずはこれをどうにかする。この部屋の先住人に助けてもらおう。

遺体の骨の一部を借り、尖っている部分を探した。

骨で骨を固定し、勢いをつけて手錠を壊した。


「お?手錠を壊したのか。」

「これで手は自由だ。」


魔法が使えない部屋か。普段だったら魔法やら剣やらでなんとかするんだが、今は魔法も使えないし、剣も持ち合わせていない。旅袋は没収されてしまった。

だが、()()には確かに『魔手』が存在している。うまく利用すればなんとかなるだろう。


「最初のうちにいろんな方法で挑戦してみな。どうせ元に戻るだけだ。じっくり考えようぜ。」

「なぁ、ザイン。魔術って知ってるか?」

「魔術?魔法か?」


一瞬空気の流れがぎこちなくなった。

魔術という単語に心当たりがあったのだろう。

確実に『魔手』はいるな。姿を隠しているのか?

いや、二つ名通りなら名前からして何かを介して空間を扱っているのだろう。手で空気を...そうか、そういうことか。

石で出来た壁に片手を当て、集中する。

隣の部屋から、おいニム。おーい、などとザインの声が聞こえてくるが一旦無視だ。

壁の隙間を辿れ。感じるんだ、その流れを。

右に3個、上に5個、そして左に2個。

見つけた。


「ザイン、逃げる用意は出来てるか?」

「んあ?ここには何にもないぜ、あるのは俺の力のみ。

最初の脱獄ぐらい手伝ってやるよ。」

「あぁ。じゃあ今いる位置から斜め左に歩いてくれ。」


俺も斜め左に動く。

部屋の角に着いた。


「ザイン、そこの壁をぶち壊せ。」

「分かった。」


隣の部屋から爆音が聞こえてきた。

それと同時に魔力の流れと空気の流れにズレが生じた。

何者かが修正しようと魔法を使おうとしている。

俺の真後ろからだ。

手の指を後ろに向け魔法を使う。

目に見えないほどの速さで魔法が構築されていく。


「レイズ。」


光速で一本の細い光が指先から出て行った。

後ろから膝を着く音が聞こえてきた。

後ろを振り向くと、手の甲から血を出し、肩まで貫通して悶絶の顔をしていた女がいた。


「お前が『魔手』だな?」

「ニム?そこにいるのか!?」


隣の壁が崩壊した。

それと共に、意外とスリムな男が現れた。


「ほう、こいつが『魔手』か。あらら痛そうに。もっと痛くしてやろうかぁ、あぁ“?」


ドスのきいた声で聞くもんだから女は身体を震わせていた。萎縮してしまったようだ。


「お前がニムか。意外と普通だな。」

「ザインこそ、もっと太ってるのかと思ってたぜ。」

「昔はぷっくらだったぞ。最近食ってねえから痩せちまったみてえだ。そんでこいつどうする?」


話してる間も痛みと恐怖で体を震わせていた。


「ザイン、奥の扉見てきてくれないか?魔法が解けたのか気になるし。」

「おう、分かった。ちょいと行ってくるぜ。」


牢獄の門を簡単にぶち破り薄暗い奥の方へと行ってしまった。


「...あ、ぁなた、ままま魔術、をししっ知っているの?」

「魔術はな俺の分野だ。魔法なんてものと同じにしないでくれ。反吐が出る。それで俺は今お前の命を握っている訳だが、どうしたい?生きたいか、死にたいか?」

「私を殺すと、この空間に永遠に閉じ込められてしまうのだぞ。」

「別に空間なんて、いくらでもやりようはあるんだが、なんだ?自分の命が惜しくないのか。ならもう用済みだな。」

「い、いや。解除するから、命はやめて、欲しい。」

「それがお願いの態度か?」

「や、やめて、ください。お願い、します。」

「いいよ。許...さない。」


救われると思ったのか表情の強張りが緩み、口角を上げたが、額に穴が空き、その表情は、なんで?という裏切られた表情をしていた。

ザインが戻ってきて女の死体を見た。


「なんだ、殺っちまったのか。それ貸せよ。」

「うん。」


死体を引っ張っていきその上にまたがり、顔を重点的に殴り続けていた。

まるで鈍器で殴られているかのような鈍い音が牢獄中に響き渡った。ザインは返り血を気にすることなく殴り続け、数分も経たないうちに床を殴る音に変化していた。


「顔が無くなっちまった。次は胴体だな。」


殴られ続け、消滅してしまった顔なし死体をザインはひたすら殴り続けていた。

俺はその光景をずっと見ていた。

正直胸糞だが、これもまた人間、生物としての本能だと思い、気が済むまで見ていた。

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