貴族暗殺事件の始まり
朝の静かな時間。
俺の大好きな瞬間だ。
ベッドから起き、眠い目をこすりながら身支度をする。
飲み物と昨日の食べ残しのご飯を手にとり、椅子に座った。
机の上には赤い液体。所々に凹みがあり、対角線上には人の手が見えた。
「鉄分、取んなきゃな。」
手の指先から出ていた赤い液体でパンに染み込ませた。
それを口に運び食す。
血の味がした。まずい。
ペッと口に入れたものを吐き出し、口直しに飲み物を飲む。
「は?まっず。」
不味い×不味いで口の中はとんでもないことになってしまった。
この家には碌なものがないと、判断した俺は動かない男のポッケから財布を取り、中の硬貨を盗んだ。
「飯不味かったぞ。迷惑料貰ってくからな。」
冷たい男をそのままにして俺は家を出る。
朝早い時間なので辺りには誰もいなかった。
小鳥が鳴いていて、やや涼しめの風を感じることが出来た。
朝飯さえ美味しかったら最高の朝だった、と考えながらポッケに硬貨を入れじゃらじゃらと音を鳴らしながら道を歩いて行った。
昼間頃、その家の使用人は血を出しながら倒れている主人を見つけ、死んでることを確認したらしい。
ダイングメッセージには〔男が〕としか書かれておらず、犯人を特定するには情報が足りなさすぎのため、貴族暗殺事件という事件名で周囲に広がっていった。
犯人を見かけた、または情報を持っている人には賞金が出るらしくこの静かだった街は騒がしくなった。