「恋をすると女は綺麗になる」というのは例外もある!!
姉妹共作なのでエロ控えめで~す!!(^_-)-☆
『おでこの辺りから踏み潰されたカエルみたいな顔』
幼い頃、オヤツを巡ってつかみ合いのケンカをし、私の尻に敷かれた妹が悔し紛れに吐いた悪態だ。
私と違って見目麗しい妹は、今では二児の母となり“セレブな”ダンナを尻に敷いている。
一方の私は……男子とガチでケンカしても勝っていた中学時代、最後にケンカした安永を尻に敷いて以来、オトコを尻に敷いた事は無い。
無神経な体育教師が私に高校のスポーツ推薦の話を持ってきたから「意地でも格闘技なんかやりたくない!!」と趣味と実益を兼ねて調理部に所属し、それなりに有意義な高校生活を過ごした。
進路は部の顧問の朝倉先生の勧めで栄養専門学校に入り管理栄養士の資格を取る事ができた。
卒業後は3つ転職して……今は小さな保育園で、私一人で栄養管理と調理全般を受け持っている。今までとは段違いに責任は重いが一人で切り盛りするのはやりがいも段違いだ!!
そうそう、働き始めの頃、有志の女子で飲みに出かけたのだが、二軒目のお店を探して“そぞろ歩き”をしている時に酔っ払いのリーマンに絡まれてしまったので……彼女達を庇って相手の腕を捩じ上げてやった。
その甲斐あってか、女性の職場特有の“うんたらかんたら”も私には不干渉で……内心、助かっている。
あ! お菓子とかグルメの“美味しいもの”の情報交換は別だけどね!
私がこの保育園で働く事になったのは、まったくの“成り行き”だった。
別に子供が好きとか興味があるわけではなかった。
だいたい、初めて私の顔を見た子供の殆どが怯えるし、泣くヤツも少なくない。
私も子供の前で取り繕いの笑顔なんか見せない。
淡々と自分の仕事をしてる。
そのうち子供の方が“慣れて”来て……たまに懐いたりする。
もっとも無遠慮なワルガキに胸を掴まれた時は……「ギャッ!」と叫んで一瞬、ガンを飛ばしてしまったが……
でもこんなイタズラ坊主でも、そのうちカワイイと思えて来るのは……私が♀の個体という事なのかもしれない。
とにかく、こんな調子で半年あまりが過ぎた頃、保育補助の募集に男性が応募して来た。
しかも大型二種免許所持者!!
寺のご住職でもあられる園長先生は唯一の男性で送迎バスの運転もなさっていたのだが、もうご高齢で……先々の事も考えてこの人が採用となった。
採用された鈴木さんは……以前は長距離バスの運転手だったが、勤めていた会社があの“パンデミック”に持ちこたえられなくて失業し、キャリアウーマンだった奥さんとの間柄もマズくなって……溺愛していた一人息子の健太くんの親権も取られてしまっての離婚……でも奥さんには陰で付き合っていた上司が居て、どうやら再婚するらしい。
『自分に育てる資格が無いのならキッパリ会わない方が健太の為だ!!』
そこまで意固地にならなくてもいいと思うのだが……その固い決意の元、ぽっかり空いた心の穴を“子供”と関わる事で埋めようと思ったそうだ。
なぜ私がそんな事まで知っているかというと……鈴木さんのアパートと私のアパートがたまたまご近所さんだと言うのが分かって“帰り路にちょっと立ち飲みに寄ろうか?”の飲み友達になったからだ。
あ、それだけでは無かった!!
駅前のスーパーで値引きシールが貼られたお弁当やお惣菜を狙う“サメ仲間”でもあった。
まあそう言った事情で……二軒目はどちらかのアパートで……スーパーのお惣菜をつまみに飲むと言う流れに、いつの間にかなって行った。
鈴木さんのアパートは私のところより更に物が無くガランとした冷え込む部屋だった。
やたらうるさい備え付けのオンボロエアコンと年代物の石油ストーブでは、部屋の中は容易に温まらず、ふたりして(臆面もなく)たくし上げた上着の裾から手を突っ込んで使い捨てカイロをペタペタ貼っていた。
「ゔ~っ!!寒いからお湯割りにすっか!」
「だね!」
紙パックの焼酎を注いだ上から電気ケトルで沸かしたお湯をドボドボ注ぎ、スーパーのトレーに入ったままの冷たい焼き鳥を広げて乾杯した。
酒が進むにつれ、何故か仕事の話になり、鈴木さんは
「ヒロキくんは口内炎ができやすいから、ザラットした物は避けて……あの子はしいたけはダメだけどカマンベールチーズなら……専門家としてのご意見は?」
なんて聞くから、
「えっ?! 専門学校とか通っているの?!」って聞いてみると
「ゆくゆくは資格を取ってちゃんとした保育士になりたい」と照れながら頭を掻いた。
「?!!」
その仕草に、私の中の古い記憶が福引の玉の様にガラガラポロリ!と出て来た!
まったく唐突に!!
で、その記憶がそのままスルリ!と言葉に出た。
「なんか唐突なんだけど…… 私! 子供の頃から今と変わんない顔とガタイでさ!
男の子とケンカしても負けた事ないの! まあでも! 一応 私も女やってるワケだしさ! 中学にもなると、ちょっとは色気づくわけよ……」
酔った勢いか……こんな話で鈴木さんはドン引きしないかと頭を過ったが、カレは茶化すでも無くキチンと聞いてくれているので話を続けざるを得なくなる。
「……んで、ちょっといいなあって思った男子が照れ隠しに頭を掻くのがツボで『カワイイ』って言ったら『ウッセー!!ビア樽!!』って言われて……そこからソイツと乱闘よ!!」
「で、勝っちゃったんだ?! ソイツに!」
「えへへへ 尻に敷いちゃったんだよね。ちょっと可哀想な事したかなあ~」
鈴木さんは自分のグラスをグイっと空けてお湯割りを作り、私のグラスをにも足してくれた。
「ま、チンケなオトコのプライドをペシャンコにしたんだからなぁ~」
「アハハハハハ!! チン・ケ は いいねぇ~傑作!!」
「でも、さ! お前の方も“してやったり”されてたんだぞ!」
ん?! ちょっと口調が違うじゃん! いくら飲みの席とは言え聞き捨てならねえから
「どういう事よ!」と語気を強めると、鈴木さんは悪戯っ子の目になった。
「相手は中坊だぜ! 惜しみなくケツ押し付けて、何、オイシイ思いさせてんだよ!」
「何っ!! コノヤロ!!」
失礼な口を利く鈴木さんの事をとっ捕まえようとしたらサラリ!とかわされ、逆に“横四方”を決められてしまった……しかもグラスはテーブルの上に逃がしてるし!!
私がブリッジして逃げようとしたら
「それ! めっちゃ!キモチいい!!」と潰れた胸の上でモゴモゴ言われて……
私は怒りと恥ずかしいので更にジタバタした。
でも全然外れない!!
「やっとあの時の仕返しができた!!」
えっ?! まさか?! でも!!……と私は焦る!!
「オレのお袋……再婚して、苗字変わったんだよね!安永から」
「えええ??!!」
「お前はわかんなかったみたいだけど、オレは一目で分かったよ! 好きな女の子だからな!!」
鈴木さんが、あの安永だとしても……そんな事、ある訳はない!!!
きっと……どさくさに紛れて私の胸の上でまったりしたいからだ!!!
「あの時さ! 好きな女の子から簡単に負かされて、めちゃ!傷付いたんだぜ!! ハートボロボロでさ~ だから絶対勝ってやるって!! アタマは大したことにはならなかったらそれなりの高校にしか行けなかったけど柔道は大会に出られた!
考えてみればオレは背伸びばっかりでさ! 別れた女房も高嶺の花で……口説く時にもオレは“イキって”ばっかで、結婚してから愛想つかされた。
なんかオレさ! 女房に健太まで取られてしょぼくれてさ!
初恋のオンナにこんなセクハラして
みっともねえよなあ~!!」
「そういうの、草野球のキャッチャーって言うらしいよ」と私は胸が揺れるくらいに笑って……その胸の上で鈴木さんも鼻をグズグズさせながら笑った。
ああ、ものすごく胸が
あったかい!!
そのあったかさを逃がしたくなくて
鈴木さんの頭を抱え込んじゃった!!
ひょっとして
たぶん
きっと
これは
あれだね!!
でも……
「恋をすると女は綺麗になる」というのは例外もある!!
私は私で変えようもないけど
それでも良かったら
付き合おうぜ!!
安永!!
この作品、最初はしろかえでが書いてたんだけど行き詰って……二人でなんとか仕上げました(^^;)
ご感想、レビュー、ブクマ、ご評価、いいね 切に切にお待ちしています!!