表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第四章完結】異世界で美少女に転生した俺、飯が不味いので日本に帰る  作者: 須垣めずく
第一章 TSクソビッチ、異世界から日本へ舞い戻る
20/171

第020話「異世界ウマメシ計画」

 俺が山田家に帰って来てから1ヶ月の時が流れた。


 あれから俺は雫と一緒に毎日のようにダンジョンへと潜り続けている。


 雫は水神の涙の扱いにも慣れてきていて、今では簡単な水魔法も使えるようになっている。魔力で身体強化もできるようになったし、俺の思った通り、魔力操作のセンスはかなり高いようだ。


 10階のボスであるストーンゴーレムも単独で倒せるようになり、探索者ランクもDランクに上がった。


「よし、雫も強くなってきたし、そろそろ20階のボスにでも挑戦してみるか? 今ならたぶんお前1人でも倒せるだろ」


「ほんと!?」


 嬉しそうに顔を綻ばせる雫。俺は少し背伸びしながら、その頭を優しく撫でてやる。


 ふむ、やはり妹というのは可愛いものだな。


「よし、じゃあ早速ダンジョンに――――」


「待ちなっ!!」


 意気揚々と玄関に向かおうとしたその時、突然母ちゃんに呼び止められてしまった。


「雫! あんた夏休みの宿題終わったのかい!?」


 母ちゃんは腰に手を当て、仁王立ちになりながら雫を見下ろしている。


「あ、いやー……。まだ一週間くらいあるから大丈夫かなーと思ってまして……あはは」


 目を泳がせながら言い訳をする雫を見て、母ちゃんは大きな溜め息を吐いた。


「あんたねぇ。年が明けたら高校受験なんだから、宿題くらいもっと計画的にやんなさいよ。まったく……しょうがない子だよ。とにかくダンジョンに潜るのは許可したけど、勉強は疎かにしないこと。いいね?」


 雫は苦笑いを浮かべつつ、小さくコクリと首を縦に振った。


 ダンジョン探索者は、一流企業に勤める大人が貰う給料以上の大金を、簡単に稼ぐことができるので、進学は必要ないのではないかと思うかもしれないが、大抵の子供は普通に進学する。


 その理由は、命を懸けてまで真剣にダンジョン探索を行うガチ勢は、殆ど存在しないからだ。


 大体は安全なところで小遣い稼ぎ程度に探索者をやっており、あとは普通に学校に行って部活をしたり、友達と遊んだりして青春を謳歌する者が多い。


 中には、危険を承知の上で本気でダンジョンに潜る"攻略組"や、レアアイテムを狙う"アイテムハンター"もいないわけではないのだが、どちらかといえば少数派だ。


 ダンジョンゲートが見つかった当初は、かなり無茶をして命を落とす探索者が多かったが、最近では子供達でも、ゲームのダンジョンとは違い、自分の命は一つしかないことを理解して、しっかりと安全マージンを取った上でダンジョン探索を行う者が多くなったのだ。


「あーあ。そういうことだからお兄ちゃん。ごめんね、ダンジョンはしばらくお預けかも」


 雫は残念そうな表情で俺の方に向き直ると、両手を合わせて申し訳なさそうに謝ってきた。


「まあ宿題はちゃんとやらなきゃだしな。仕方ないさ」


 うーん。しかし困った……。暇になってしまったぞ……。よく考えたら俺完全にニートだからな。


 雫は部屋に戻ってしまったので、リビングのソファーに座ってテレビを眺める。


 チャンネルを回していると、ちょうどニュース番組をやっていたので、なんとなくそれに目を向けた。


《世界で3人目の回復魔法の使い手である少女は、未だ見つかっておらず、依然その正体は謎に包まれています》


 画面に映っている女性キャスターは、そんな前置きをしてニュースを読み上げる。


《先日、立川ダンジョンに現れた、回復魔法を使う謎の美少女について、ギルドに確認したところ、そんな人物はいないとの事でした。ですが、目撃者は多数おり、彼女は間違いなく存在し、既存の回復魔法使い2人とは別人であるということは間違いありません》


 ……俺の事やってんじゃん。


 画面には、俺が回復魔法をかけてやったと思われる探索者の若者が、インタビューに答えている様子が映し出されていた。


《ええ、凄い美少女だったことは覚えているんですが……。ただ、顔が思い出せないんですよ。なんかこう、ぼやっとしてるというか、霧がかかったような感じでして……》


 画面の中の男は、困惑した様子でそんなことを言っている。


 スタジオでは、専門家と思しき男がうんうんと深く相槌を打っていた。


《おそらく、認識阻害系のアイテムを身に着けているんでしょう。もしかしたら正体は"世界探索者ランキング"にも載ってるような大物かも知れませんな。回復系のスキルともなれば、それこそ国にとっても無視出来ない存在になるでしょうし、面倒を嫌ってうまく自分のスキルと正体を隠蔽してるんじゃないでしょうか》


 中々鋭いおっさんだな。ちょっと違うが、大体合ってる。


《我々は件の少女を、目撃者の証言から"シスター・ソフィア"と仮称しています。現在も彼女の身元は調査中ですが、皆様ももし発見しましたら、ぜひ我々に情報をお寄せ下さい》


 う、うーむ。しばらくは慈愛の聖衣は使わない方が良さそうだな。


《続いてのニュースです。近頃、都内のダンジョンで行方不明者の数が増加している件に関して、ギルドは、何者かによる人為的な犯行の可能性が高いと発表しました。犯人はまだ判明していないようですが――――》


 俺はソファから立ち上がり、冷蔵庫へと向かい、扉を開ける。そしてコーラを取り出すと、一気に飲み干した。


 ふぅ……うまい。


「異世界でもこれくらい美味しい飲み物や、食い物があればいいんだけどなぁ」


 ………………。


 いや、待てよ!?


 アストラルディアに転生して24年間、俺は知識チートとか一切考えてこなかったが、今なら可能なんじゃないか?


 俺は小説とかでよくいる転生者のように、頭の中にウィキペとかは入っていない凡人なので何も出来なかったが、こうやって自由に地球に帰ってこられるんだ。こっちで色々調べてから、また異世界に行けば、きっと何か出来るはずだ!


 文明の発展とかはどうでもいいが、あっちでも美味い飯だけは食えるようにしておきたい。


「ふふふ、これはいい考えだぞ……。名付けて、"異世界ウマメシ計画"だ!!」


 そうと決まれば、早速行動開始だ。


 俺は食材の買い出しに行くため、身支度を済ませると、玄関へと向かうのだった。

これにて一章は終了です。

二章からは異世界に行ったり、また地球に戻ってきたりと、二つの世界で自由気ままに過ごすことになります。


ここまでで、『面白かった!』『続きが気になる!』という方は、もしよろしければ、いいね、ブックマーク、応援コメント、↓から★★★★★等いただければ、作者のモチベアップに繋がるので、是非お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
テンポが良くコメディチックで楽しませてもらいました。これは大当たりの作品だ~ 2章も引き続き読みます!
[一言] やり方としは野菜や果物の苗や種を購入と農耕、畜産の学術書を購入かな?そして学術書を異世界の向こうの文字に翻訳、そして異世界の農家さんが字を読めるのか?苗や種を十分な数をばら撒いて農耕知識を広…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ