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【第四章完結】異世界で美少女に転生した俺、飯が不味いので日本に帰る  作者: 須垣めずく
第四章 TSクソビッチ、魔法学園の先生になる
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第109話「合体魔法」

「え? 本当に私と雫だけで50階のスカイドラゴンを倒しに行くんですか?」


 ある日の放課後、山田家のリビングで紅茶を飲んでいた琴音が、驚きの表情を浮かべながら俺と雫を交互に見つめる。


 まあ無理もないだろう。つい先日、俺が攻略するまで誰も倒したことのなかったモンスターを、これから2人で倒しに行けって言っているわけだから。


「大丈夫だ。2人だけっていうより、むしろお前らはこいつのおまけだな」


 そう言って俺は、足元に佇んでいたニオを両手で抱えると、琴音の膝の上に乗せてやった。


「にゃにゃにゃにゃん。山田ニオだニャン。よろしくお願いするんだニャ、美しいお嬢さん」


「うわ~、この子が噂に聞いてたニオちゃんですね。はじめまして。私は雨ヶ谷琴音といいます」


 琴音はニオの肉球を触りながら、嬉しそうに自己紹介をする。


 流石はお猫様といったところだろうか。誰が相手であれ、初対面から好感度がほぼマックスで受け入れられていらっしゃる。


「ニオの実力を確認したくてな。光と闇の魔法が俺と同等のこいつなら、おそらく単独でもスカイドラゴンを倒せるはずなんだ。お前らはまあ、付き添いだな。いい経験になるだろうし、こいつと一緒に挑戦してみろよ」


「え~、でもいざって時はどうするのさー。万が一、私達が大怪我とかするような事態になった時、お兄ちゃんがいなくても大丈夫なの?」


 雫が心配そうな顔で聞いてきた。まだニオの実力が判明していない状況なので、不安になるのも無理はないだろう。


「ふふふふ、その心配は無用だ。……ニオ、あれを雫と琴音に見せてやってくれ」


「了解だニャー! 光魔法――"ゴールデンキャッツアイ"だニャン!」


 ニオが呪文を唱えると、その猫目が怪しく光り出した。同時に、俺の両の手のひらに魔法陣のような光の模様が浮かび上がる。


「なにそれ? 特に何も起こらないけど……」


 雫が拍子抜けしたように呟く。


 やれやれ、まだ魔法の途中だというのにせっかちなやつだ。


 俺は妹を一瞥すると、手のひらを上に向けて、"ゴールデンキャッツアイ"と対になる魔法を発動させる。


「刮目せよ! 光魔法――"キャッツアイヴィジョン"!」


 手のひらの魔法陣から金色の光が放たれると、空中に光のモニターのようなものが投影された。そこには、現在地である山田家のリビングの様子が映し出されている。


 そして、ニオが庭の方に駆け出した途端、映像は庭の風景へと切り替わった。


「あ、これってニオちゃんの目とお兄さんの魔法がリンクして、ニオちゃん視点の映像が見えているってことですか? すごい……」


「うむ、駄妹と違って理解が早くて助かるぜ。流石琴音だな」


 琴音の頭をよしよしと撫でてやる。すると琴音は嬉しそうに目を細め、それを見た雫が俺の足にローキックをかましてきた。


 効かんわ! お前が蹴りのモーションに入る前に魔力ガードしてあるもんね!


「うごぉ……」


 魔力で覆われた鋼鉄のような俺の足を蹴った雫は、足を押さえるようにしてその場にうずくまる。


 俺はそんな妹を無視して、説明を続けた。


「こんな感じで、これは使い魔と主人の2人1組で行う合体魔法だ。これを使えば、ダンジョンの中の様子を遠くからでも確認することができるから、何かあった時でも安心ってわけだ」


「……で、でも見てるだけじゃ意味ないでしょ。どうやってピンチの時に助けに来てくれるのさ?」


 足をさすりながら涙目で雫が聞いてくる。


 だが、その点ももちろん抜かりはない。俺は次の魔法を発動すべくニオに視線を移すと、彼女は肉球を光らせながら俺に向かってジャンプしてきた。


「行くニャーー! 闇魔法――"キャットスタンプ"だニャン!」


 ポフンッと、俺の胸の上あたりにニオの肉球が触れる。次の瞬間、その場所に黒い肉球跡のような模様が浮かび上がった。


「なにそれ? 特に何も起こらないけど……」


 だからまだ途中なんだってば。せっかちな女は嫌われるぞ雫よ。


 俺は内心ツッコミを入れつつ、再びニオに庭の方へ行くように指示を出す。そして、胸の肉球跡に触れながら魔法を発動させる。


「刮目せよ! 闇魔法――"キャットエクスチェンジ"!」


 胸の肉球跡がカッと光ったかと思うと、一瞬で俺の体は家の庭まで瞬間移動する。リビングからは琴音と雫の「「おおーーっ!!」」という感嘆の声が聞こえてきた。


 庭からリビングへと足を進めながら、俺は2人に魔法の解説をする。


「これも先程の"キャッツアイヴィジョン"と同じ、使い魔と主人の2人1組で行う合体魔法だ。使い魔が主人に肉球の跡をつけることで、一度だけお互いの位置を一瞬で交換する事ができるんだ」


「転移、瞬間移動系の魔法ですか! なるほど……確かに"キャッツアイヴィジョン"と"キャットエクスチェンジ"の2つの魔法があれば、何か不測の事態が起こっても対応ができますね」


 流石は優等生、理解が早くて助かるな。


 先日の北村の事件を反省して、俺は不測の事態が起こった場合や、相手が絡め手や卑怯な手などを使って来た時の対策を色々と考えていた。


 莉音に言われた通り、1人でやれることには限界がある。だから、仲間や使い魔と協力して、最悪の事態が起こってもなんとか対処できる戦略を練らねばならないと俺は思ったのだ。


「おおー……。確かに、これならいざという時お兄ちゃんに助けてもらえるから、私と琴音とニオだけでも安心して挑めるかもしれない……」


 雫が感心したように呟く。どうやら俺の意図は伝わったようだな。


「よし、じゃあ早速行ってこい」


「「え゛?」」


 俺の言葉に、雫と琴音は変な声を漏らして固まった。琴音でもこんな声を出すんだな……。


「いやいやいや、明日も学校があるし! 50階まで行くとなると泊りがけになるから、今からじゃ流石に無理だよ!」


 雫が慌てたように抗議してくるが、全く問題はない。


「2回も登ったし、色々あって印象深かったからかな……。立川ダンジョン内の50階に続く巨大螺旋階段に転移できるようになったんだ。転移も強化したし、20分もあれば到着できるぞ」


「そ、そうなんですか……」


 まだ覚悟ができてなかったんだろう。流石の琴音も困惑している様子だ。


「体積的に3人と1匹は同時には無理だな……。まずは雫とニオを50階の階段に送るから、着いたらお前らは小さな家にでも入って待ってろ」


 ちなみに、小さな家の中に人を詰め込んだうえで俺が右手に持って転移したら、一気に大量の人を運べるじゃないかと思ったんだが……残念ながら、その方法は不可能だった。


 どうやら小さな家の中にあるものも体積3倍ルールに引っかかるらしく、体積を超えた場合、転移を発動させることはできなかったのだ。


 中身を全部取り出せば、人ひとりくらいは中に入れて移動させられるだろうが、小さな家の中は色々なアイテムを増設して魔改造してあるので、それらを全部外に出すのは現実的じゃない。


 なので小さな家は、転移するときは一度俺が預かって次元収納の中に仕舞う必要がある。


「ええ!? 本当に今すぐ行くの!?」


「ああ。お前とニオの後に琴音を送るから……攻略開始は1時間後だな」


 雫は「うえー……」と言いながらも、仕方ないといった様子で頷いた。


「あれ? ちょっと待ってください。お兄さんも転移で一緒に来るなら、さっきの2つの魔法、意味なくないですか……?」


「……あっ」


 琴音に指摘されてハッとする。


 しまった……俺も転移で一緒に行くなら、"キャッツアイヴィジョン"と"キャットエクスチェンジ"の意味がないではないか……!


「お、俺が近くにいるとお前らの気が引き締まらないから、俺はお前らを送り届けたら帰るんだよ! だから攻略開始は俺が家に戻ったあとの1時間20分後からだな!」


「今『あっ』って言わなかった? それ絶対忘れてたやつだよね?」


 うるさいなぁ。人の失敗をいちいち指摘するんじゃないよ! スルーできるくらいがいい女ってもんだろうが!


「とにかく、俺はここで母ちゃんと空と未玖と一緒にお前らの戦いを見物するから、お前らはサクッとスカイドラゴンを倒してこい!」


 俺は強引に話をまとめ上げると、2人と1匹を送り届けるべく、転移の準備へと取りかかるのだった。

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― 新着の感想 ―
うぉー超高性能ニャンコじゃん!我が家にも欲しいです。どこで買えますかw? 瞬間移動に制限は無いとしたら、異世界転移も簡単になる?でも、自宅警備員のニャンコが異世界行っちゃうかー
[一言]  題名を読んだとき琴音が魔法少女になり魔法学校に行くのかと考えました。
[一言] 転移や合体魔法で駆けつけるような事態にならなければいいんですがねえ
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