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9/9

ED

「読んだよ」


 どれくらいの時間が流れただろう。

 空がオレンジ色になり始めたころ、美山は静かにそう言った。

 窓際で外を眺めていたわたしは、椅子に座る彼女を振り返る。


 どうだった?

 なんてことは聞かない。

 伝わっているのなら、きっと美山から言葉を口にすると、わかっていたから。


「……凛香ちゃんはさ、本当に自分勝手だね」

「言っただろ。わかってるって」

「あたしの気持ちなんて何もわかってないね」

「わかるわけがない」

「凛香ちゃんのために明野海浜であってほしいなんて、自分のことしか考えてないセリフだよね」

「そうだな、その通りだ」

「明野海浜がそんなに大切?」

「ああ。明野海浜がいないと海原リンカじゃいられない」

「……そっか」

 

 美山はそっとわたしの小説を撫でた。


「明野海浜がいるってだけでまた歩き出せるんだね。……すごいな」

「お前も海原リンカだけ見てくれ。大勢の読者のために書けないならわたしのために書いてくれ」

「じゃあこれからもあたしだけを――明野海浜だけを見てくれる?」

「ああ、目を離してやるもんか」

「そっか……」


 美山はそこで笑った。


「……ねえ、凜香ちゃん」

「なんだ?」

「いつか絶対、明野海浜あたしを殺してね」

「ああ、絶対に殺してやる」



 fin.

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