9話 優しい人とおかしな人
お知らせ
皆さま、〔君の理想になるまで〕を閲覧して頂きまして本当にありがたいと思っております。
私自身〔毎日7時に投稿するぜ〕と意気揚々に目標を掲げていたのですが、このまま行くと
文脈や内容の崩壊だけでなく
私の心身と成績が陥落していってしまいます。
というわけで勝手ながらこれからは週に{2から4話投稿}を目標として活動していきたいと思います。
上げる曜日は今のところ決まってはいませんが、7時に投稿するのは今後も継続していきますので、何卒よろしくお願いします。( i_i)
内容も長く濃くしていくので、許してぇ…
打ちっぱなしコンクリートの壁に黒いマットが敷き詰められた床
置いてあるマシンやベンチは黒を基調としていて目立った色はないが、一定の間隔で付いている天井の照明器具で、どの器具も一目で分かるように工夫されている。
ここは有酸素トレーニングフロアと書かれていただけあって、ランニングマシンやロデオバイク、トレーニングバンドなどの主に肺活量や下半身を鍛えるための器具がそろっていた。
それにしてもびっくりした事がある。
それは思っていた以上に人が少なく、見えるだけでも4人ほどしかいないという事だ。
時間も早いから仕方のない事なのかもしれないが、個人的なイメージでは1つの器具目当てに沢山の人が並んでいるようなイメージがあったため、自分の偏見が全く見当違いなのだなと理解した。
しかしまぁ人が少ないと、最初にやる器具の選択肢が大幅に増えてしまい、優柔不断な僕にとってはかなり困る状況だ。
しかし、「迷っていても時間の無駄だしな」
と思い、最果てにあるランニングマシンをやってみることにした。
荷物が全く置かれていないすっきりとした道を歩いて行くと、途中エアロバイクの方から声が聞こえた。
「HAHAHAHAHA!!!!」
ギュンギュンと回転数の高いモータの駆動音を聞いているかのような音を立てて漕いでいる白いタンクトップにはち切れそうな太い腕と太くてきしょいくらいのハムストリングを持ったおじいさんがいた。
何かにとりつかれているかのように永久に漕いでいるムキムキで、戦闘力53万はありそうな体つき。
黒いサングラスの下は全く見えないが、スポーツ刈りかつ完全に白い髪が上下に揺れている。
僕は関わらないように萎縮してこっそり抜ける。
ランニングマシンの前に立って行うこと。
それは安全確認と使い方を知ることだ。
ランニングマシンのボタンやフォルムをまじまじと細かく見ていく。
どうしてこんなことをするのか、理由は単純だ。
ランニングマシンを使うのはこれが初めてということと、壊れたりの最悪の事態が起こる可能性があるという懸念があるからだ。
操作方法が分からず適当にボタンを押した結果壊してしまった場合。
仮に弁償しろといわれたとき、僕は何も出来ないまま親に頼み込むことになるだろう。
お母さんたちはきっと許してはくれる。
しかしそれは自分の不注意で起こしてしまった問題を自己解決出来なかったという汚点が心に残ってしまう。
それは将来自立するにあたって家を離れる時、心配させてしまう原因にもなるから、そう言ったリスクは起こさない又は回避しようと動いてしまうのだ。
一通り見たがとくに異常はないので、パネルの中でも黄色く目立った電源スイッチを押す。
すると、入力を受け取ったコンベアが動きを見せる。
時速約1キロのスーパースローで進むコンベアに満たされない気持ちを感じ、6㎞に設定して決定を押す。
すると、早いジョギングくらいのスピードになった。
「まだいけるな。」
今度は8㎞に変えて見た結果、丁度軽いランニングと同じくらいのスピードになったので、そのままランニングを始めた。
できるだけ音を立てないようにスッスッと歩いて行く。
車の走る音が足音の隙間から聞こえた。
前はガラス張りになっていて、外の景色がよく見える。
緑色の広葉樹と通る沢山の車、数多の人々が生活をしている家々が見えた。
まるでその人達の上を走っているような感覚。
僕の体の内側でもぞもぞと波立つのを感じる。
しばらく走り、ペースが整ってきたところでさらにスピードを上げる。
最初の頃の余裕は徐々に無くなっていき、とにかく振り落とされないように足を動かす。
はぁはぁと余裕のない荒い息遣いになりそうな時、後ろから声をかけられた。
「なぁ、お前新入りか?」
急に声をかけられてビクッとしたが、表に出さないように繕う。
「そうなんですよ、今日初めて利用しました。」
そう言いながらマシンを止めて後ろへ振り向く。
「そうなんだ、へぇー」
そこには大学生くらいの黒いタンクトップマンがいた。
赤髪で耳に3個ほどピアスが付いているパリピのような雰囲気をした人。
揺れるパーマをかけた髪が黒い床に反して一層輝きを増している
そう言って僕の横のランニングマシンを慣れた手つきで操作し始めた。
ピッ と甲高い音を聴いたと同時にベルトコンベアがぐんぐん加速していく。
それに合わせて赤髪タンクトップ君はどんどん加速していく。
時速18㎞と書かれたパネルが横からちらっと見えた。
僕の2倍くらいの速度を軽々と走る彼。
しばらくしてからスピードを落としてざっとこんなもんだと言わんばかりに首を上げ、自慢してくる。
息切れはしていないが、汗が少し垂れ、ご自慢のタンクトップに吸収されている。
褒めた方が良い気がして、「凄いですね」と褒めてみると、それを待っていたと言わんばかりに
やっぱり「これくらいは出来ないとな、俺はこのくらいのスピードなら30分は余裕で走れる。」
そう自分語りをし始めた。
僕はそれ以上何も言わず、8㎞ペースで再び走ろうとマシンのボタンを押そうと前へむき直したとき
「おいおい待ってな、俺の話も聞いてくれよ!」
と、ぐいぐい食いついてきた。
「ちょうどさ、俺の仲間が3階でやってるからさ一緒に行こうぜ。
な、いいだろ?」
身長は180ちょいのガタいの良い青年
服から見える血管が、くっきりと見えていて、
すねまで鍛えられた体は全身壁のように堅いと思われる。
放つオーラは人を引きつける魅惑さを感じる。
この頼みこむような仕草に僕は恐怖を感じた。
もし着いていかなかったとき、どうなるか分からないのだ。
温厚な人ほど怒らせると怖い。
細目キャラは大体強いという法則があるように、優しい態度を取っている人は内側に秘めた力が大きいというのを僕は知っている。
かつて「俺たち永遠の友だよな!」
そう言い合った優しい性格の男の子は、ある日の下校時、いじめられている子猫を見つけ、いじめてる不良集団に注意をしに駆けていった。
彼は温厚だが勇気があって、たとえ相手が年上でも注意するところは注意する、不屈の正義感を持ち合わせていた。
「その猫を放せ!」
いじめていた側はいきなりいちゃもんを付けてきたと思ったのだろう。
「なんだ?このガキ、やっちまうぞ!」
逆上し、顔を真っ赤にして親友を殴った。
こちらは小学校低学年で相手は高学年
体格的にも差が大きく、思い切り腹に食らった親友は大きくノックバックして、ブロック塀にランドセルを背負った背中をぶつけた。
これはまずい。僕が思わず駆け寄ろうと走り出した時、親友の雰囲気が変わったのを感じた。
長く一緒に過ごしてきて、一度も感じたことのない空気感
まるでラスボスを怒らせてしまったようなプレッシャーに僕は立ち止まった。
その空気感を彼らはまだ感じることは出来なかったのだろう。
ギャハギャハ子供のように笑って哀れんだ目をして、親友をいじめの対象に指名した。
「この猫のようにいたぶってやるよ
毎日いたぶって、餌抜いて、ガリガリになったところを一本、また一本と骨を折ってやるよぉ」
そう言って猫を僕のいる方に蹴った。
「ぐぎゃにゃぁぁ」
僕の前に転がる傷だらけの子猫
さっきの悲鳴が最後の力だったのだろう。
もう骨と皮しか残っていない瀕死の子猫を抱きかかえた僕に向かって
親友は言った。
「あおゆうは子猫を病院に連れて行って」
ドクン
僕は目を見開き、黙って頷いて走った。
今思えばあの圧をかけられた時点で決定権なんてなかったと思う。
僕は子供を守る安心の家に駆け込み、動物病院に猫を送って貰うのと、先生を呼んでほしいと頼んだ。
そして、全速力で親友の元へ戻ったとき、そこは地獄だった。
コンクリートの床に突っ伏す高学年のごろつき達
そして鼻血を出し、削れた血だらけの拳であのあおり発言をした男を殴り続けている友人の姿。
晴れているのに、そこだけ日が当たっていないような、混沌とした結界が張られていた。
手を掛けていた防犯ブザーが無気力に地面に落ちて落ち葉の溜まった側溝に転がった。
その日、友達は不良少年を5人ボコボコにしたのと同時に、骨折、失明の危機にさらした責任を取るために謝罪をして回る毎日が続いた。
逼迫した毎日
次第に話すこともなくなって、3週間後の夜、ひっそりと友達は引っ越していった。
話が逸れすぎたが、要するに温厚な人ほど丁寧かつ慎重にに扱った方が良いと言うことだ。
僕は「分かりました。」
そう言って、3階へとアカタンクトップと一緒に行くことにした。
黒い階段を上り、ジムの扉を開ける。
そこは、下とほとんど同じ作りの部屋が広がっていた。
唯一異なる点はバーベルの重りが色鮮やかで、目立っているのと、人が多いところだろう。
後者のおかげでガタイのいい男がプロテイン片手に雑談(ほぼ猥談)をしている。
世間はこういった人を迷惑な客だと思うだろうが、全くその通りである。
夜中にエンジンを吹かして走り回るようなはた迷惑な集団。
近くでラットプルダウンを利用している人は見て見ぬふりをしているが、明らかに迷惑そうな顔をしていた。
「おい、お前ら、こいつは新入りのガキだ。
ジムのイロハを教えてやろうぜ。」
いや、頼んでないんだけど!?
アカタンクトップの発言にうぉぉぉと盛り上がり、アカタンクトップの友人達が僕に近寄ってくる。
「俺、一っていうんだ。」
「ベンチ、ベンチやろうぜ。」
「背筋っていいよな、男は背中で語らなきゃ」
「お前の腹筋ぷにぷにじゃねぇか!」
「鍛えれば6パックいけるよ、一緒に目指そうぜ!」
「うまい肉食いたいよな、一緒に動こうぜ!」
「{自主規制}したことある?」
聖徳太子ではない僕は、一度に10数人に詰めかけられ、何をしたらいいか分からない。
汗臭さと香水が混ざり、独特な匂いが充満する。
結局ベンチプレス、チェストプレス、ラットプルダウン、レッグプレス
ありとあらゆる器具をやらされ、地獄を味わった。
わんこそばのような絶え間ない筋トレと漢達の熱気で、クラクラしてきた。
結局解放されたのは夜八時
五時間も運動していたのだから、当然自転車内なんて乗れるわけもなく、お父さんに助けを求めた。
電話を切ると、肩の力がふっと抜けて、宙づりになる
「ああ、ジムってこんななの?」
僕は、一人外のベンチに横になった。
まだ車が走る騒がしい夜
僕は一人汗だくのまま休憩室の床に転げ落ち、筋肉痛で動かない体は漬物石のように床を押し続けた。
集団って怖い(震える自分)




