ログアウト
「さてと、これで最低の説明は終わりっと。後は職業のスキルを習得していく感じになるんだけど、それくらいは自分で調べなさいよね。」
「どうやって?」
「そんなのネットやMikiでも見ればすぐ分かるわよ。」
「ネット? Miki?」
「……何だか、何も知らないお年寄りと話している気分になってきたわ……」
「失礼な。これでも15歳の大人になったばかりだぞ!」
「はぁ? 大人は18歳からでしょーが! 何を言ってるのよ!」
「そっちこそ何を言ってるんだ? 神様からスキルを貰う儀式を受けられるのは、成人の15歳だろうが!」
俺がそう言うと、ましろさんは目を丸くして驚いていた。
「ス、スキル!? ちょ、ちょっと聞いても良い? ケインって何処の国の人なの? ここは日本なんだけど。」
「日本? 変な国の名前だな。俺の国はルナン王国って言うんだ。カッコいい名前の国だろ?」
「ルナン王国? 聞いたこと無いわ。それってどこに有るのよ。」
「ましろさんって都会に住んでるのに無知なんだな。3大大陸の1つでもあるクォーラル大陸も知らないのかよ。」
「クォーラル大陸なんて地球には存在しないわよ! 何言ってるのよ!」
「地球? 地球って何だ?」
「私たちが住んでいる星の名前よ……って、ケインは真面目に言ってる?」
「当たり前だ!」
「……ちょ、ちょっと待って! 今、頭の中を整理するから。」
ましろさんがそう言うと、目を閉じ、腕を組んだまま考え込んでしまった。
考え中に声を掛けるのもアレなので、じっと待つことにした。
しばらく考え込んでいたが、考えがまとまったのか目を開けて話しかけてきた。
「とりあえず確認なんだけど、ケインはロールプレイをしているの?」
「ロールプレイ? 何だそれは。」
「設定とかを考えて、その架空の人物の役を演じるって感じかな。」
「何だそれは。俺は俺だぞ。そんな面倒くさいことなんかやるかよ。」
俺がそう答えると、ましろさんは再び考え込んでしまった。
そして確認するために、おずおずと聞いてきた。
「ケインは、このゲーム、リンルージュオンラインにどうやってログインしたの?」
「ログインって何だ?」
「どうやってこのゲームに来たのかってことよ。」
「ベッドで寝たら白い空間にいたんだけど、それがどうしたんだ?」
「VRゲーム機からログインした訳じゃ無いのね。」
「VRゲーム機ってのが何なのかは知らんが、そうだな。」
俺は、これまでのことをましろさんに話すことにした。
15歳になって成人の儀式を受けたこと、そこで『MMORPG』ってスキルを貰ったことなどを話したのだった。
「まるで小説みたいな話だけど、それが本当の話ならば、ケイン、あなたは異世界転移したってことになるわね。」
「異世界転移?」
「別の世界に飛ばされたってこと、正確にはゲームの中に転移だけどね。」
「もし、本当に別の世界に来たって言うのなら、俺は家に帰れないのか?」
「さあ? もしかしたらログアウトしたら帰れるのかもしれないわね。」
「本当か!」
確かメニューの中にそんな文字が有ったな。
俺はメニューを開くと、確かに有ったので、それを押してみた。
「ただ、本当に帰れるかは分からないから、むやみに押さない方が……ってケイン!?」
ましろが何かを言っていたが、俺の意識は途切れたのだった。