リンルージュ・オンライン
その日の晩、俺は夢を見た。
「ここは何処だ?」
ベッドに入って寝たと思ったら、知らない場所に立っていたのだ。
そこは地面も空も真っ白な何もない空間だった。
「だ、誰か! 誰かいませんか!」
不安になって叫んでみると、突然周りから声が聞こえてきた。
『リンルージュ・オンラインへようこそ。』
「うおっ! ビックリした……だ、誰かいるのか?」
『キャラクター作成を行います。
パラメーターの設定をしてください。』
「無視すんなよ! それにキャラクター? パラメーター? さっきの何とかオンラインとかもそうだし、いったい何のことだ?」
俺が唖然としていると、すると目の前に半透明な板が現れた。
「なっ! 何だこれは!!」
今まで見たことも無い板だった。これはいったい何なのだろう。
恐る恐るその板を覗いてみると、そこにはこう書かれいた。
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名前:ケイン
職業:未取得
LV1
HP:5/5
MP:5/5
STR:1 -/+
VIT:1 -/+
INT:1 -/+
AGI:1 -/+
DEX:1 -/+
LUK:1 -/+
POINT:5
スキル:未取得
******************************
「俺の名前が書いてあるけど、なんなんだよこれ?」
叫んでみたが、今度は何も答えてはくれなかった。
仕方がないのでじっくりと板を眺めてみたが、さっぱり意味が分からない。
後、ところどころおかしい部分も見受けられた。
「俺って農民じゃなかったっけ? 何で未取得なんだろう……
それに、スキルも『MMORPG』ってのを貰ったハズなのに書いて無いし、いったい何なんだよ!」
俺は座り込んで考えてみるが、結局は何も分からなかった。
目の前にある板以外は何も変化は無いし、声も聞こえない。正にお手上げだった。
「可能性が有るとすればこの板だけど、どうしたら良いんだろう。」
俺は板を触ってみた。
スカッ!
俺の手は空中を彷徨った。どうやら触れないみたいだ。
念のためもう一度確認をしてみる。今度は文字の書かれている部分だ。
俺は自分の名前のところを触ってみた。
『キャラクター名を変更しますか? はい/いいえ』
別の板が現れてそう書かれていた。
「うおっ! な何だ!? 俺の名前のところに触ったら出てきたってことは……変えると俺の名前も変わっちゃう?
父さんと母さんが付けてくれた名前なんだ、変えてたまるか!」
俺は『いいえ』を押した。するとその画面は消えてしまった。
「ほっ……とりあえず大丈夫そうだな。
じゃあ次はこっちだ。」
俺は職業を押してみた。
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就いた職業により使える武器、スキルが変わりますので、自分に合った職業を選んでください。
一度選んだら、転職クエストを受けるまで変更出来ませんので、よく考えて選んでください。
・剣士
・魔法使い
・聖職者
・弓士
・シーフ
・商人
・鍛冶師
・薬師
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「剣士!」
夢にまで見た憧れの剣士の職業が書いてあったのを見た俺は、何も考えずに剣士を押してしまった。
『職業を剣士に設定しますか? はい/いいえ』
「はい!」
俺は続けて『はい』を押してしまった。
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名前:ケイン
職業:剣士
LV1
HP:5/5
MP:5/5
STR:1 -/+
VIT:1 -/+
INT:1 -/+
AGI:1 -/+
DEX:1 -/+
LUK:1 -/+
POINT:5
スキル:未取得
******************************
「おぉ! 剣士になった。やった~!!」
俺は嬉しさのあまり飛び上がって喜んだ。
よし、次だ次。俺はLV1を押してみる。
『キャラクターのレベル。』
「キャラクターのレベルって何だ? さっきのことでキャラクターが俺のことをさしているのは分かったけど、レベルって何だろう?」
考えても分からないので諦めることにした。次はHPを押してみた。
『体力、これが0になると死亡し、セーブ拠点へと転送されます。』
「死!?」
俺は死と言う恐怖を感じ、ブルりと震えるのだった。
「でも逆に考えれば、これが残っていれば死なないってことになるのか? 気を付けよう。」
次はMPだ。
『魔力、魔法やスキルを使用すると減ります。必要MPが足りないと使用できません。』
ふむふむ、スキルってそういう仕組みなんだ。
母さんも裁縫をするときは、このMPってのを減らしているのだろう。知らなかったので勉強になるな。
次はSTRだ。
『筋力、重い武器が持てたり、物理攻撃したときのダメージを増やすことが出来ます。』
「ほう? これを上げると畑仕事が楽になるのかもしれないな。」
次はVITだ。
『耐久値、物理ダメージを減らします。また、最大HPに加算されます。』
「何! と言うことは、これを上げると死ににくくなるってことか。」
次はINTだ。
『知力、魔法攻撃したときのダメージを増やしたり、回復魔法の回復量をふやしたり出来ます。また、最大MPに加算されます。』
「魔法? もしかして魔法も使えるようになるのか!?」
あまり頭の良くない俺は、魔法は諦めていたからな。魔法使いなんて貴族様しかなれないと思っていたしな。
「……そう言えば、さっき職業のところで『魔法使い』が有ったような……」
さっき勢い余って剣士にしてしまったっけ。後悔は無いとは言え、魔法使いになれるのならば、ちょっと勿体なかったかもしれない。
俺は名残惜しそうに、職業の場所を撫でるのだった。
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初期設定のため、何度でも職業を選びなおすことが出来ます。
・剣士
・魔法使い
・聖職者
・弓士
・シーフ
・商人
・鍛冶師
・薬師
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「って、変更できるんかい!」
良くは分からないが、今なら変えられるってことみたいだ。
よくよく読んでみると、確かに魔法使いが有るし、他にも興味深そうな職業も有るな。これは悩むな……
とりあえず保留にして次に行ってみることにする。次はAGIだ。
『素早さ、敵の攻撃を避けたり、攻撃速度を上げることが出来ます。』
ふむふむ、VITも捨てがたいが、攻撃が当たらなくなるならこっちの方が良いのかもしれない。
次はDEXだな。
『器用さ、攻撃を当てやすくなったり、アイテムを作る際の成功率を上げる。』
なるほど、これも重要だな。次はLUKだ。
『運、色々な部分で関わってくる。』
「運か……」
確かに運って表現しにくいよな。上げると何か良いことが起こりやすくなるのだろう。理解した。
次はPOINTだ。
『ポイントの数だけステータスを上昇させることが出来る。』
「ステータスって、多分だけどSTRとかVITのことだよね? ポイントが5ってことはそれを5つ上げられるってことか? どうやって上げるんだ?」
文字を適当に押していると、『+』を押したときにSTRの数値が2になった。『-』を押したら1に戻った。
「これか。」
どうやらこれでパラメータと言うものをいじれるらしい。よくよく見ると、すべての項目の後ろにこの『-/+』が有るので、間違いないだろう。
最後はスキルだ。
『スキルを習得すると、こちらに記載されます。』
どうやらスキルを習得しないとここに表示されないみたいだ。今はどうやって習得するのか分からないが、おいおい調べていくしかないな。
「さて、一通り分かったけど、どうしたら良いんだろう。」
結構難しい問題だ。STRを上げれば力が強くなるが、DEXが無いと攻撃が当たらなそうだし、VITが無いと死ぬかもしれない。
魔法が使いたければINTを上げなくちゃいけない。だけど使用できるポイントは5だ。悩ましいぜ……
長い時間迷い、結局以下の通りにすることにした。
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名前:ケイン
職業:剣士
LV1
HP:10/10
MP:10/10
STR:2
VIT:2
INT:2
AGI:2
DEX:2
LUK:1
POINT:0
スキル:未取得
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魔法に憧れは有ったが、俺の頭で魔法が覚えられるとは思えない。だったら剣士一択だ。
正直、手に職と言うことで鍛冶師と薬師にも興味が轢かれたが、当初の予定通り剣士にすることにしたのだ。
職業を選び、ポイントを使い切ったところで、新たに板が現れた。
『この設定で始めますか? はい/いいえ』
俺は『はい』を押した。
『それではリンルージュ・オンラインを開始します。』
その声と共に、俺の視界は真っ白に染まるのだった。