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前世の夢

蓮とは全然違う。もっと大人の男の人だった。


棺に眠る姿に必死で声をおさえるも滂沱。

ただの友人として葬儀で号泣は、はばかられる。

胸が苦しくて捩じ切れそうだ。

肺が呼吸を拒否しているかのように息を吸えない。


何故この人なのだ。

彼に認められて人として今まで生きてきた意味を得たと思った。

長年の付き合いを経てここ数年で本当に分かりあえたと思ったのだ。


掛け替えのない人、この人を失って私はどう生きてい行けばいいのだろう。

ああ、自分のことばかり。

なんて自分勝手人間なんだ。


でも言ったじゃないか彼は

「こうやって何年経っても、それぞれ結婚して、

 お互い子どもが生まれたら、家族ごと一緒に付き合っていくんだよ。

 歳食っても昔を懐かしんだりするんだ」

未来まで夢見させてくれたじゃないか。

そんな未来はあまりにも突然奪われてしまった。


そこで目が覚めた。

歯を食いしばって号泣していた。


隣には心配そうに見つめるアンリが居た。

「ごめん。とても苦しそうだったから、起こした。嫌な夢みた?」


「……たぶん、蓮の前世。亡くなった時の夢だった」


「そう。蓮と君の前世は生まれ変わって

 もう一度会いたいと思うほど強い思いがあったのだから

 前世の君も同じように苦しかっただろうね」


「私、アンリを失ったらこんな思いするの?」


「もちろん朱里に苦しい思いなんかさせたくない。

 けれどもしも朱里が苦しむほどに 私を蓮を失いたくないと思ってくれたら、

 それを喜んでしまう。私が蓮が朱里を失わずに済むということだから。酷い男だ。」


ああ、夢と同じ、また私は自分のことばかり。


今、夢で一瞬私が体感した耐えがたい苦しみをアンリは何年もずっと抱えていた。

そして私を元の世界に返す時アンリは蓮はまた同じ絶望のままに生きていくというのだ。


こんな苦しみに一生を費やそうなんて。

それを私が生み出すなんて耐えられない。


「こんなに苦しいのが一生なんて……」

「それでも、それを盾に朱里を縛るのは、やはり違う」


身勝手な私は、自分の責任の重さのあまり言ってしまう。

「どうして、もっと縋ってくれないの」


「本当は悠がこちらへ来て色々曖昧だったことがはっきりする前は、

 何をしてでも朱里をこちらにとどめておくつもりだった。

 わからないことに眼を瞑り、知らんふりをしてでもこのままで居たかった。それほど幸せだった。」


「はっきりしたら、私が、前世の私が望んだ事だったんじゃない」


「朱里にとって、それが気づかないまま叶わないまま、蓮はあちらの世の居場所を失った。

 そして今もなお朱里の中で、そこは曖昧だ」


「でも蓮は、蓮がもう一度会いたいと願ってくれたから……」


「そう、もう一度会えた、(おれ)はね。

 そして同化したアンリも、もう二度と光を得られない絶望から救われた

 でも、朱里は会いたい人に会えたと思っている?」

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