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失われたのは

放課後、裏庭のベンチで悠と話すのが日課になりつつあった。


「ねえなんで私とはーちゃんは元の姿のままで、蓮は違うのかな?」

「それ、本当に知りたい? 後悔しない? 聞いたら元の世界に戻ることを、躊躇うようになるから、僕は聞かせたくないな」

「でも、この前『一杯考えて』って言った。その判断に必要な事なら知りたい」


「……北条先輩はあちらの世界で、亡くなっている。だからもう身体は存在しない」


嫌な予感が当たっていた。


「では、私は? 私は死んでいないの?」

「あーちゃんは行方不明だね。死んでいない。だって肉体ごと、こちらの世界に来ちゃったんでしょ?」

「はーちゃんは?」

「たぶん、だけど、あーちゃんと一緒なんじゃないかな?」


「じゃあ、やっぱり、蓮は、この世界で生きていくしかないの?」

「北条先輩というか、そもそもが身体は、アンリ生徒会長だし」


想像はしていたけれど、実際に突き付けられると、どうしていいのか、言葉にならない。


「ほらね。だから言いたくなかった。僕にとっては先輩だしショックもかなりあったけど、そもそもあーちゃんにとってはほとんど知らない人でしょ。それなのにこちらに来たせいで絆されてる」

「もう知らない人じゃなくなっているし、アンリであり、蓮である彼を失う事とは全然違う」


悲痛に言葉を絞り出した朱里に対し、悠は淡々と事実を告げる。


「僕が生徒会だったこともあって、縁もあったから、あーちゃんが行方知れずになった後、調べたんだ」


「ちょうど、卒業間近のタイミングで、進行性の病気で亡くなったと。でも学校でも公にされてなかった。この世界のアンリと融合して、あちらの先輩の存在が希薄になったからなのか。かかわった人間みんな北条先輩に対する印象が曖昧になっていた」


「調べて自宅にお参りに行って、さすがにご両親は息子を亡くした事を認識していたけれど、何故か感情が希薄だった。先輩の家庭環境なんか知らないから、元からなのか、アンリとの融合が関係するかは分からない。でも朱里の両親の希薄さに違和感があったから、そういうことなんだと思ってる」


「この事、多分北条先輩は、覚えてない。先にあーちゃんに話したのは、先輩より先に状況を理解して、冷静に判断してもらうためだよ」


その時、鋭い口調が割り込んだ。


「毎日、毎日、朱里の帰りが遅いと思っていたけれど、お前のせいか」

「あーあ、見つかっちゃった」

「……アンリ」


「ほんとお前ろくな事しないな」

「自分の全ての行動を棚に上げて、よくそんなこと言えますね」

「門倉のおかげで、色々思い出したよ」

「そうですか」


「できれば、門倉と話をしたい。……(朱里に聞かせたくない)」

「そんなこと言ったら、あーちゃんがまた悩んじゃうでしょ」


「朱里、ごめん。少しこいつと話がしたい。先に部屋に戻っておいてくれ」


有無を言わせないアンリの雰囲気に朱里は素直に従うしかなかった。

「喧嘩しないでね? 二人とも」


「喧嘩なんてしない」

「大丈夫だよあーちゃん」

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