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王子さまは二重人格?

学園長に付き添われて全校生徒が窓から見守る中、隣の王子学院へと向かう。

皆様の視線が殺気立っていて痛い。


王子学院の学院長室へ入ると正面に座るのは流石元王子様の美丈夫、学院長と思しき方。

その横に立ち、優しく微笑む、金髪碧眼の美しく背の高い、いかにもな王子様。


「ようこそ王子学院へ。学院長のシャルルだ。こちらがこの度『いばら姫』の王子となったアンリ」

ああいかにも王様、王子様のお名前ね。


「姫君修行学園から参りました。学園長のアンナ・ミ○ーズです。

 本日は『いばら姫』の新しき姫、藤崎朱里をお披露目いたします」


今初めて聞いた学園長の名前! 夢が詰まったコスチュームのレストランと同じ!?

驚愕しつつ顔には出さずに挨拶をする。


「はじめまして。藤崎朱里です。よろしくお願い致します」

「はじめまして。アンリ・シャルパン○エです」

え? こちらは洋菓子店?

そもそもシャルパンティエってフランス語で大工って意味だったと思うけど由緒正しき王子様の姓が大工ってどうなのよ。家でも建てちゃう?


更に学院長はシャルル・シャルパン○エなの? シャルシャルしすぎじゃない?


神妙にアンリ王子様を見つめる。うーん見れば見るほど美形。


「これから朱里さんには一ヶ月、王子学院で過ごしていただく。寝食はアンリと共に。授業は学年が違うので該当の学年で。

 一ヶ月後にお披露目の就任式があるので放課後は練習に当てるように。就任劇はアンリと二人だけのシーンなので部屋で」


え? 聞いてないんですけど。今日挨拶に来るだけだと思っていたのにこのまま拉致ですか?

着替えも何も勉強道具も持ってきていませんよ。という心の声が届いたのか親切なアンリ王子様から回答があった。

「あなたの服は私が見立て用意してあります。お好みに合うといいのですが」

そして更に学園長、学院長(即ち彼のお父様)の居る学院室で臆すこともなく堂々と超甘甘の言葉が囁かれた。

「あなたの様な奥ゆかしい姫を許婚に出来て私は幸せ者です」

こちらが砂を吐くほど甘い口調でうっとりとした表情で見つめてくるアンリ王子様。

もう超一般人の私にはこの場に居ることすら居た堪れないのに、その言葉を向けられているのが自分だという事実に裸足で逃げ出したくなった。


どうにか「……光栄でございます」とだけ答えて目をそらす為に俯いてしまった。

いついかなる時にこの王子王子した超王子様が超一般人の私を見初めたっていうんだ。ハーレクインでも起き得ない異常事態だ。


「ではアンリ、まずは寮のお前の、いや二人の部屋でひとやすみしてから学院内を案内してあげなさい」

王様、とりあえず手始めにイチャイチャしてきて良いよ的な雰囲気出すのやめてください。

「はい」はい、王子もはにかんで嬉しそうにしないでください。見てるこっちが恥ずかしいです。

「藤崎さん頑張ってくださいね」何を頑張るの? ああ、学園長が居なくなったら完全なアウェイ。


何が待ち受けるのか部屋に着くまでハラハラドキドキ緊張しすぎて気持ち悪くなりかけた。

ところがどっこい、学院寮の王子の、もとい二人の部屋に着くなり、王子様が豹変。


「お前の秘密を知っている。俺に協力しないと婚約破棄する」

口調、声色別人なんですけど。えっとこれあれ? 二重人格? 猫かぶり王子?

 

まあいいか、さっきの頬染めた王子様とまともに話が出来るとは思えなったからこっちの方がいい。こちらも開き直るまでだ。


「どうぞどうぞ。是非なかった事にしてください。私は選ばれたくなんかなかったので学園除籍になっても別に困らないですから。むしろあなたからの閨のあれこれをこちらから拒めない状態の方が精神的、身体的苦痛を伴うと思うので」

甘甘空気の王子の対処には困り果てたが、こういった偉そうな態度には一向に動じない。

逆に助かった。刺々しく睨む王子にガッツリ視線を合わせ睨み返す。


ややあって王子がため息をついた。

「……わかった。閨が苦痛なら当分免除してやる。だから俺の言うことをきけ」

世の中はギブアンドテイクです。


私が最も恐れていた事が回避されるなら、とりあえず相手の要望を聞いてみようじゃないか。

「では、何がお望みなのですか? 何故あなたは私を特に好きでもなさそうなのにご指名くださったんですか?」


「お前」

「朱里です。お前という呼ばれ方は不愉快なので控えてもらえませんか?」

「……朱里は、この世界の人間ではないだろう?」

「……何故そう思われるのですか?」

「周囲との違和感。あと名前」

「そんな浮いてますか。頑張って目立たない様にしていたのに」

「いやむしろ目立とうとする姫たちの中でそうしているから逆に目立つ」

「はあ」

「で、気になって調べてたら色々状況証拠があったと」

「はい?」調べられてたとか穏やかじゃない。


「お前のことを話して欲しい」

「は?」

「お前はいつ、どこからここへ現れた?」

ス、スパイ容疑でもかけられてるのでしょうか? 私。


「なんの話でしょうか?」

とぼけて逃れられるとも思えないけど……回避できないか試してみよう。

「その姫君らしからぬ言動、容姿、名前、そして突然俺の前に現れた」

そ、そりゃ事実だけれど随分な言われよう。


「突然現れたも何も今日呼び出されて初めてお会いしたんですが……」

「お前はどこの国の姫だ。記録がない」

調べられているのなら私に調べがついたことは知られているのだろう。逃げようもない。


「……藤崎朱里が姫君修行学園に入学したのは13歳。天涯孤独でそれ以前のことは分からない。記憶がないの」

真実に近い嘘だ。資料を調べたら藤崎朱里が姫君修行学園に入学したのは13歳だった。本当に居たのかどうかは確かめようがない。

そして13歳以前の情報がない。更に私のここでの記憶は直近の3ヶ月しかない。


「そうか。朱里はいつからこの世界に存在していた? 俺が朱里に気がついたのは3ヶ月前だ」

不思議な一致に驚く。

「……実は記憶がないのは3ヵ月より以前。13歳に入学したのは記録による確認です」


素直に答えるとアンリは満足げに頷き唐突に話を変えた。

「お前、いや朱里、番を知ってるか?」

あ、連投できそうです。読んでいただけたら幸いです。

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