アンリの番(つがい)とは
悩みましたが今回は、客観視点です。
アンリは、悠の出現により、蓮が融合した時の記憶を、朧気ながら思い出した。そして、それを朱里に伝える決意をした。しかし、何から伝えて良いのか、自分でもまとまらぬままに、口をついて出た言葉だった。
「朱里が居てくれる事で、私は生きている意味があるんだ」
「それは蓮が、そう想うからで、アンリの気持ちじゃないでしょう? 本当に分からないの。私の何に『蓮』が捕らわれたのかも。もし今のアンリに分かるなら教えて?」
「言葉にするのは難しいかな」
朱里には、アンリのその想いは、自分に向けられたものと感じられなかった。
アンリには、朱里が蓮とアンリを別人と考える思考が、理解出来なかった。
アンリは、それを伝えたくて発言した。
「私の中で、蓮とアンリの別々の個別意思は存在しないよ?」
「けれど、アンリに元々好きな人が居たら、アンリと蓮は、別の意思になるじゃない?」
「私に、別の好きな人が居たら、蓮と私は融合しなかっただろう。私は愛する存在を欲していた。
蓮は愛する存在を愛し続けたかった。なるべくしてこうなった」
「でも、アンリに本当の番が別に居たら?」
「……居ない」
「出会ってないだけで居るかもしれない」
「……いいや、もう居ない。居たけれど、出会う前に失った」
「え?」
「強い絆の番は、出会う前にその気配を感じ取れる。私には番が居た。それを知っていたが、出会うことなく2年前に亡くした」
「そんな……」
「いつ出会えるだろうと、その存在を感じるだけで幸せだった」
儚く微笑んだ後、アンリの美しい顔が悲痛に歪む。朱里は堪らず、その頬に右手を伸ばした。
アンリは、僅かに左に首を傾け、その手に軽く頬を預けた。
「気配が突如途絶えた時から、私の世界は太陽を無くし、暗闇となり、何にも心が動かなくなった。蓮と融合する日まで……心を失っていた」
そこまで畳み掛けるように、一息に吐き出したアンリは、朱里の右手に自分の頭を任せた。
不意に重くなったそれに、朱里は左手も伸ばし、アンリの頭ごと胸に抱えた。
朱里の胸に抱かれたアンリは、安堵のため息をつきながら続けた。
「私は朱里をずっと愛してきて、それを途絶えさせたくない蓮であり、朱里に生きる意味を見出したアンリでもあり、どちらも同じくらい、朱里を失っては生きていけないんだ。だから融合してしまった。 朱里が感じる様な、二人の個別差は、私の中に存在しない……」
「蓮がアンリに融合した様に、アンリの番の心が、私に融合出来たら良かったのに……」
その発言をした朱里が、アンリの番でありたいと願った様に感じて、アンリには強烈な歓喜の気持ちが沸き起こった。
即興力と表現力に課題を感じます。書ける限り終わりまで書くつもりです。
終わりは決まっているのですが、途中決まっていないところもあるので。
頑張ります。