文化祭~幕間~ 朱里の暴走
ちょっと、朱里が暴走気味です。
勢いで書いてしまったので後日改定するかもしれません。
幕間なのでノリで読んでください。
この世界、あちらの歴史上の実在のお姫様や王子様の話はないのよね。
王室や皇室から離脱したお姫様や王子様とか。
王子さまと結婚して美しい王子様の母となったけれど最期は悲劇の死を遂げた元伯爵令嬢とか、
王冠を賭けて在位1年未満で退位しちゃった有名な王子様とか。
菓子職人つれてお嫁入してチョコレートを流行させたお姫様とか、
「パンがなければお菓子を……」で高名な王妃様とか。
その話は間違って伝わった説ではあるらしいし、そもそも、その頃すでにお姫様ではないけど。
まあ実在の人物の場合有名になるのは姫、王子時代でないよね。普通。
実績は王、女王とか王妃時代。
では、その王妃様の出てくる男装の麗人も出てきちゃうフィクションとかは?
というと、それもない。
あくまで世界各国で知られている御伽噺だけが演目のこの世界。
素晴らしき! 世界に誇るアニメ、漫画カルチャーなのに!
ここの世界観さん、取り入れてよ。
と思っても、誰に要求すれば良いのかわからないのどうにもしようがない。
しかし、それほど世界で知られていなそうな日本のかぐや姫は何故あるのだろう?
某有名スタジオでアニメ化されたから?
だったらお城のお姫様が出てくる、高名な泥棒さんの映画作品だってあってもいいと思うの。
他に有名どころで親指姫がないのは? サイズ感で無理があるから?
かぐや姫は居て、瓜子姫は何故いないの? とか疑問は尽きないのだけど。
この世界の無情を感じていて思わず口からこぼれた。
「シェイクスピアも無いね。
悲劇では王様が多いけどハムレットはデンマークの王子様だね。
たまには王子様主演もいいのにね。
アンリもそういうのやったら良いのに。新作、提案してみたら?」
「なぜ、急にそんな話になる」
「私、もともと趣味観劇だから。歌舞伎、能、狂言、宝塚、ブロードウェイミュージカル、新劇、小劇場も流行の2.5次元舞台も色々観てたよ」
「なんだ? 2.5次元って……」
「原作が2次元の漫画やアニメやゲームなんかをイケメンが舞台化するやつ。
有名どころだとテニ○の王子様とか。舞台でやってみる?」
「ここは姫君が主役の世界だから世界観ぶち壊すな」
「いいじゃない! たまには王子様が一杯出て大活躍!」
「話にならん」
「別に所謂、お役目の指名式じゃなくて、文化祭とかのイベントでやるとかは? あ、この学校には文化祭ある?」
「なくもないが、朱里の想像している体のものではなく研究発表の展示会的な要素が強い」
「あー、むしろうちの女子校がそれだった。所謂、漫画とかで見るイベント的要素が強い文化祭憧れで……」
「……」
「生徒会長様! 文化祭改革しちゃいましょう! 姫君修行学園と共催で!
クラス対抗演劇祭! お役目貰ったときの練習にもなるし。我ながら名提案!
よし企画書作ります。うーん他には模擬店とか?
メイド、執事、仮装喫茶! お化け屋敷とか、脱出ゲームカフェもいいな」
「無駄に前向きだな……。王子や姫君にとって、調理や接客はハードルが高くないか?」
「だからこそですよ! 普段、やらない、できないことを文化祭で体験する!
流行りのアハ体験をこの世界でプロディースするんです!」
斯くして、無駄に張り切った朱里の提案が通り、文化祭が画期的に変更された。
アンリも朱里も文化祭革命においては裏方に徹し、クラス対抗演劇祭はもちろんメイドや執事として接客することもなかった。
が、今まで役に選ばれていない生徒たちの不満解消には大いに効果があり、
また、全世界からの来客数も例年比の数倍となり、文化祭はかつてないほどの大成功を収めた。
お披露目公演以外にも、観光の可能性は数多あるのだと知らしめたのである。
クラス対抗の演劇祭のために多くの台本を執筆もし、裏方的には八面六臂の活躍をした朱里は、
これまでの『何故これがアンリの婚約者なのだ?』という類の視線や意見に煩わされる事が殆どなくなった。これは大きな副次的な効果であった。
また、王子学院長であるアンリの父からのアンリと朱里の評価値がストップ高を更新したことこそが最も大きな効果である。
朱里の書いた台本はシェークスピア作品をはじめ、漫画や小説、アニメに映画、もちろん舞台も含め、
過去に体験したものを文字に起こしただけなので
元の世界では著作権的に訴訟されるものであることにアンリは目をつぶった。
元の世界の様々な作品の中から厳選されたものは、クオリティが高く、こちらの世界で評価が高いのは自明の理であった。
そしてアンリの画策もあり、文化祭プロデュースの件もあり、朱里の王子学園滞在は有耶無耶のまま延長されていた。
明日からは、本編に戻ります。