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かぐや姫のシャン・リンレイ

番外ヒロイン四人目です。

生まれたその瞬間にかぐや姫と定められて育ったシャン・リンレイは困り果てていた。

本来かぐや姫は物語では誰とも結ばれず月に帰る設定だ。

きまった婚約者役に身を赦すことに寛大な他の選出者と違い、相手の希望次第で閨を断れない事態は発生しないはずなのだ。


結婚を望むのならばお役ごめんになってから帝役を含む求婚者たちで争奪戦が始まる。

世間では歴代かぐや姫の物語は終演後の方が興味を持たれるのが通例だ。

各候補者がかぐや姫の本編さながらに姫の気をどうやって引くのか、そして最大の関心事項は姫が一体誰を選ぶのかである。

よって当代のかぐや姫にそれほど注目が集まって居ないのは幸いだったが。リンレイは大変に困っていた。


候補者が揃いも揃って、隙あらば関係を持とうと夜な夜な狙ってくるのだ。冗談じゃない。

せっかく相手を強要されない役だというのに何故ここまで追い回されるのだ。

彼らの言い分はこうだ「物語当時の習慣として女性のところへ男性が夜通うの定番だ。だから自分もそうするのだ」と。


ならば、かぐや姫への求婚宜しく無理難題でも言いつければ良いのかもしれないが下手に実現してしまったら逃げ場が無くなる。


帝役のフェイは言った。

「ねえリンレイ。他のお話と違って明確な相手役はあなたには存在しないけれど、私は一番あなたに近いところに居ると思っていていいですよね? 務めを終えたらあなたと一緒になるのはこの私だと。その証しに今すぐあなたが欲しいのです」

どうしてフェイ様はこんなに自信満々なの? 役柄が一番位が高いとう理由よりこれ本人の性格よね? 私は「役務め中は結論を出しません」と最初に全員の前で宣言したのに。自分を特別扱いしろというの? 信じられない。


石作役のハオは言った。

「俺を気安いと思ってるのはうれしいけどうれしくないね。気軽にこんなに近づかせて安心してるあんたの気が知れない。こうしたらあんたは身動きすら取れないし、力ずくで俺のものにすることも簡単だ。次は本当に実行するからなリンレイ」

気安くふるまってきたのはそちらでしょうに。それを急に態度を豹変させるなんて勝手な人だこと。たおやかで美しくて線が細いと思っていたのにこんなに力が強いなんて反則だわ。正直動揺しているけどそんな事悟られたくない。


車持役のウェンは言った。

「リンレイあなたは私に『真面目すぎてぎこちない勇気と自信を持て』そうおっしゃいました。私はあなたの伴侶となるために行動に出る事を決意しました。どうか拒まないでください。あなたが私をそう変えたのですから。私のものになってください」

役において考え込みすぎて悩みすぎているからそう告げただけなのに。違うそういう意味じゃないと言っても聞いてくれないのだろうウェン様は。真面目なだけに融通がきかないから困る。


阿部役のユンは言った。

「こんな不安な気持ちになどなった事がないからどうすればいいのか分からない。なんと言えばいいのか分からない。リンレイお前を他の奴に奪われのは耐えられないんだ」

言いながら、いえ言うより早く行動が先に出るから防ぎきれない。どうしていいかわからないとか言いながらがっちりと抱きしめられてるんですけど。離してほしい。ユン様は言葉というよりむしろ考えるより前に本能で動いていると思う。更に厄介だわ。


大伴役のロンは言った。

「リンレイ僕はあなたにふさわしくない。そう思っているのに浅ましい気持ちを消し去れないんです。あなたの励ましに他意はないと分かっているのにそこに何かを期待していまうんです。少しでも少しの間だけでもいいからあなたを僕のものにしたい」

どうしてロン様はこんなにネガティブなのかしら。帝役のフェイ様と足して2で割るといいのに。それで居て絶対に譲らない頑固さで卑屈なのに執拗で粘着質だから始末が悪い。


石上役のシャオは言った。

「違う。僕は他のやつらのようにそんなこと考えてない。お前の勘違いだ。いやだ絶対にそんな訳ない。どうしてここに来たかと言えばお前が呼んでいる気がしたからだ。ほらだからこうして引き寄せてしまうのもお前が望んでいるからだリンレイ」

どうして私のせいになるの。論理が破綻している。シャオ様の頭の中は一体どうなっているの? 可愛いから言い辛いけど。何故こんなに思い込みが激しいの? しかも自分の意思ではやりたくないことしてるごとき言い回し。どこから突っ込めばいいのか分からない。


本来決まりきった相手は居なく閨の強要もない筈なのに。6人もの厄介な王子様を相手にしなくてはいけないなんて理不尽すぎる。

シャン・リンレイは6人の熱烈な告白を思い返しながらため息を吐いた。


フェイは信じていた。リンレイが自分の運命の相手だと。そして彼女を娶るのは自分だと。

ハオは分かっていた。リンレイが今一番自分に心を赦して気安く思っている事を。そして豹変した自身は彼女を決し逃がさない事を。

ウェンは決意した。リンレイを手に入れるために自分を変えることを。そして絶対にそれをやり遂げることを。

ユンは感じた。自分を突き動かすのはリンレイだけだと。そして自分をとめられないと。

ロンは絶望した。リンレイにふさわしくない自分に。それでも諦めること出来ないことに。

シャオは動揺した。リンレイが自分へもたらす感情に。そしてそれが引き起こす自分の言動に。

彼らは互いに誰も譲る気はないのだった。


「聞いてください朱里様」リンレイが朱里の部屋へ逃げ込んできた。

彼女のお相手役は登場人物紹介にまだ載せてないです。複数いるので。然るべき頃に追記します。

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