普通に苦痛
「貴方が『もう一度会いたい』と言ったから」
私たちはこの世界でもう一度出会った。
これは姫君修行学園と王子学院を舞台に
超一般人なのに分不相応な、いばら姫役に選ばれた朱里が
相手役兼婚約者の表は完璧王子で二重人格なアンリ王子と
他の姫君や王子様と繰り広げる異世界学園ラブコメ? です。たぶん
物語の姫君たちが代々受け継がれていくなんて知らなかった。
そもそも私は姫君でもその候補でも何でもない。ただの女子高生。
異様に厳しい校則の学校に通っていたから
姫君たちが不平不満の修行の厳しさは然程苦にはならないけれど。
品格、家柄とかそんなものは持ち合わせない
ごくごく一般中流階級育ちなのでお姫様たちの思考は謎に満ちていてついていけない。
ここは姫君修行学園。
兎に角、気が付いたたらここに通っていたけれど何故こうなったのかは、よく分からない。
夢にしては私が思いつくには手が込み過ぎている。
漫画やラノベやネット小説で流行の異世界転生かとも思ったけれど死んだ覚えは無い。
因みに全寮制。
世界観はヨーロッパ的なのに私も周りも日本語を話している。
お隣には王子様養成所的な王子学院がある。
お姫様たちが彼らに対して割とキャーキャー騒がしいのも意外。
お姫様ってこう、もっと奥ゆかしいものじゃないの?
女子校に通っていたので近隣の男子校や芸能人に
キャーキャー言う友達は居たけれど
自身は非リア充だったものであまり共感も出来ず。
辛うじて腐っては居ないけれどどちらかというと
二次元逃避型だったので異性への興味は皆無。
相手が王子様だろうが関係ない。
男子なんて異世界の生き物。
あ、そもそもここ異世界だった。
姫君修行学園は
3歳の保育園的なところから始まり、
成人に当る15歳を超えて、
更に進学する人は大学へ行くみたいに18歳まで学べる。
一貫教育の学校で入学も卒業も好きな歳に出来る。
私は13歳で入学したらしい。資料を調べた結果判明した。
でも私自身は現在15歳、この世界の記憶は直近3ヶ月しかない。
身内は居ない。
学費とかどうなってるの?
私の入学の経緯は調べても判明しなかった。
そうそう話を戻そう。
姫君修行学園は有名な童話に出てくるお姫様たちが
この世界ではその歳になると役として選ばれる。世襲でなく。
通常はこの学園の姫君から。
三大人気は白雪姫、シンデレラ、眠り姫こといばら姫。
シンデレラは名シーンが一杯でドラマティックにハイライトが楽しいので公演はいつも大盛況。
白雪姫は長年見守るから世の中で長期的に人気。連続テレビ小説みたいなお茶の間の話題。
眠り姫は名誉職的扱いらしい。
いばらが開き城が現れる場面は豪華なセットで美しく名シーンだそうだ。
そもそも私はこの世界の住人じゃないし、どのお姫様にも選ばれたいと思わない。
目立たなく無難に元の世界に帰れる日を願って暮らすしかない。
そして聞き役に徹し、目立たない様に控え目に振舞っていた。
王子たちに対しキャーキャー言わないからみんな完全に私の存在をライバルだと思っていなかった。
が、本日付で発表された新『いばら姫』役が私という何かの冗談みたいな話。
担任から朝、告げられた時はクラス中騒然。
あ、いばら姫の物語は本来お姫様生まれた時から始まるけれどここでの配役選考は眠りにつく歳なのだそう。
この時点でいばら姫役について右も左もわからなかった私は、まずは状況説明を受けるために学園長室に呼び出された。
「藤崎朱里さん。あなたはこの度『いばら姫』の主人公の姫役として選出され
ました。大変名誉なことです。気を引き締めて役を全うしてください。いば
ら姫の在任は1年と少し程です。くれぐれもお相手の王子以外の男性とは接触
しないように。王子との顔合わせは本日午後に行います」
そう、私の名前は藤崎朱里。これは前の世界のまま。
こんなぶっ飛んだ世界にいきなり存在したのに名前も年も容姿もそのまま。
違和感の塊。
周りのお姫様たちは外国風のお姫様らしい名前で金髪碧眼や、翡翠の瞳やらの大盤振る舞いなのに。
やや茶色がかった髪と瞳の純日本人、藤崎朱里がいばら姫役、なんの冗談?
心の中でぼやいてると重要情報が告げられた。
「最後に、あなたが今回いばら姫に選出された最大の理由。相手の王子役の
たっての希望があってです。もともとあなたは候補の10人にも入って居な
かったのですが……」
「え? 王子の希望一つで相手が決まるのですか?」
「普段はそのようなことはありえません。が、今回の王子は隣国ラグラン国王
で学院長のご子息、王太子です。学院長もいばら姫の王子を務め、ご母堂は
元いばら姫なのです。よって今回は異例中の異例です。更に余談ながら彼は
現生徒会長です」
そのようなプレミアムな王子が何故、私を指名なのかはさっぱりわからない。
あと、王子学院にも生徒会が普通にあるのか。
しかし、役付きは世襲じゃないって言ってたのにどうなってるの。
「ご指名の理由に心当たりがないので、辞退させて頂き……」
「滅相もない!」
悲鳴のような声で遮られて最後まで言わせて貰えなかった。
結局王子に選ばれた理由もわからないまま、王子様に午後、ご対面となった。
初めて投稿します。投稿のシステムもちょっとわかっていないので連日投稿したいと思っていますが、ちょっとうまくできなかったらすみません。うまくできたら三話くらい連投する予定です。誤字脱字などご指摘いただきましたらありがたいです。