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 勇一がみゆきちゃんの彼氏になってから初めて学校に行く日に勇一は戦っていた。

 敵は『眠り』と『夢』というやっかいな奴だ。

 敵は強かった!

 勇一の弱点ばかりを攻めてくる。

『夢』は『妄嘘もうこ』という魔法攻撃を仕掛けてきた。

 ――誰かが呼んでいる。

「……くん」

「だ、誰だ?」

「ゆう、い……ちくん」

「えっ、みゆきちゃん?」

「……勇一くん、私の作ったクッキー食べてくれる?」

「もう、出来たの! 昨日の夜だよね? 『クッキー食べに来る?』って、メールくれて……」

「食べてくれないの?」

「たっ、食べる! 食べるよ!」

「はい、これ!」

 勇一はみゆきちゃんからクッキーをもらい、食べた。

「どう? おいしい?」

 勇一は思った。

(何だ? この味は!)

「どうしたの、勇一くん? おいしくない?」

「……そんなことないよ……」

「だっ、大丈夫? 勇一くん、泣いてるよ!」

「へ……平気。ただちょっと……お、いし……くて、つい、涙が……」

「本当! おししい?」

「う、うん」

 本当はとっても不味かった。腹痛になるかと思うほどだ。

 でも、勇一はみゆきちゃんにそのことを言えなかった。

「うれしい! 勇一くんだいすき~!」

 みゆきちゃんは勇一に抱き付いてきた。

「みっ、みゆきちゃん!」

「な~んてね! 私の体に気安く触んないでよっ!」

 次の瞬間、バシンっ! という音と共にみゆきちゃんの見事な平手打ちが勇一の右頬に決まった!

「うっ!」

 勇一の記憶が一瞬吹き飛んだ。

 敵の圧勝である――。

 

「ゆうにぃ~、ゆう~にぃ~! 起きてぇ~」

 勇一の体が左右に揺れた。

「ダメだよ! それじゃあ! やっぱり、こういう時はバシン! と一発……」

 亜未あみは勢い良く兄の右頬を殴った。

「うっ!」

にぃよ、起きたか?」

「……」

 勇一はうっすらと目を開けた。

「起きたならば今すぐ朝食を作れ!」

「……なんでおまえらがいるんだよ……ここはおれの部屋だ。ろ?」

 亜未はにぃのおでこに『でこピン』を食らわせた。

「いっ!」

「ここは居間だ。兄よ。兄がここにいるのは知らないが、とにかく今すぐ朝食を作れ! パパとママは仲良くまた温泉旅行に出かけた」

「あ、そう。……って今、何て言った?」

「は~、麻奈まなよ。教えて上げなさい」

「だからねっ! パパとママは『ぶらりと温泉行ってくるから後のことは勇一に頼みなさいね』って言って十分前に出掛けたの!」

「そうなのか……」

「あのね、あのね! 麻奈ね! パンが良い! パンが食べたい!」

「と、言うことだ。早く作ってよ! このままだと遅刻しちゃう! そしたら、兄よ。金をくれっ!」

「何でだよ! 勝手に行くなよな……温泉旅行なんかに」

「えっとー、『それはしょうがないの! たまたまよ! たまたま、願いが叶ったのよっ!』ってママ言ってたよ!」

「そうか……いつも通りの『お決まりコース』だな。まったく……」

 両親の愚痴を言いつつ、勇一は双子の妹に言った。

「学校の支度してくるから、待ってろ!」

 双子はハモりながら言った。

「え~! もういいよ! 私たちで作るからっ!」

「それは却下だ」

「え~!」

 勇一はハモりながら文句を言う双子の妹、亜未、麻奈を居間に残して自分の部屋に行った。

 勇一は絶対に自分の部屋に誰かを入れたりはしない。

 学校に行く時は鍵を掛けて家を出る。

 家に帰れば――秘密主義を徹底している。

 勇一は自分の部屋で制服に着替えたりと学校の支度をしていた。

 そんな中、勇一は思った。

(どうして、オレは居間で寝てたんだ?)

 勇一は考えた。

(昨日の夜はみゆきちゃんとメールして、日記書いて、それで、テンションが高くなってきて……そんな自分を落ち着かせるために何か飲もうと台所に行って……それから、う~ん? どうしたっけ? 記憶がまるでない……ということは居間で寝た?)

 そんな考え事をしていると亜未と麻奈がドアを叩いて言った。

「おなかへった~! 遅刻する~、絶対~!」

 勇一は時計を見た。

 自分もこのままだと絶対遅刻しそうな時間だった。

 勇一は大きな声で言った。

「下に行って好きなものを勝手に食え!」

 その声を聞くと亜未と麻奈は階段をドドドドっと下りて行った。

 勇一は慌てて学校の鞄を持ち、自分の部屋を後にした。

 それからは時間との勝負だった。

 勇一と双子の妹は時間の許す限り朝食を食べた。

 そして、学校へと向かうためダッシュで家を後にした。

 

 そんなこんなで学校に着き、みゆきちゃんの後ろの席に座った。

 すぐに授業が始まった。

(は~、何とか間に合った。こんなに疲れてるのにみゆきちゃんの後ろ姿とみゆきちゃんのにおいだけで元気になれるのは何でだろう? もしかして、愛の力効果?)

 勇一は学校の中で『心のオアシス』、『心の栄養剤』を見つけたと思った。

 彼女ができるだけでこんなに学校生活というものが変わるとは思っていなかった。

(なんか、漫画の世界みたいだ)

『癒し』を見つけたことをうれしく思う反面、今日の晩ご飯は何にしようかと学校が終わるまで考え込む勇一だった。

 その日の部活は昨日来なかったということだけでペナルティーが追加された。

 

 帰りが遅くなったことはもちろんのこと、亜未と麻奈に怒られたことは当り前である。

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