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序章 八話 「まさかまさかの」

誠に申し訳ございません。

遅くなりました、凪白です。


何をどうすれば“一回更新休み”が“一ヶ月以上休み”になるのか……。


前回のあらすじ

女の子のお父さんと言い合いをした。

(美陽視点)



「……どうしたものか」


 私たちが氷雨くんのお部屋にお邪魔させてもらった日の翌日の朝。

 私は自分の部屋の座布団の上で、目の前の座卓に置かれたスマホとにらめっこしていた。


 画面に映されているのは、『氷雨雪哉』の文字。

 メッセージアプリだ。


 先ほど、彼からあるメッセージがあった。

 既読はつけてしまったので、正直に言うとこの状況はあまりよろしくないかな……いやいや。

 状況が状況だ。多分仕方がないことだと思う。


 メッセージには、『ただ今お電話よろしいですか』とだけあった。


 いや社会人かっ!って突っ込みたくなるのは置いておいて。

 ……要件が思い当たらないのだ。何一つ。


 これが普通の高校生なら、特に用がなくても「なんとなく」で電話をかけてくるだろう。


 ただ、あの氷雨くんが、そんなことをするだろうか?

 時間取らせたくないし用もないならそんな面倒なことしない、とか言いそう。


 なら何か大事な用があるのだから、出なきゃだめだね。

 そう考えて私は『うん、もちろん』と返信し……こちらから電話をかけた。



「もしもし氷雨くん?」

『もしもし氷雨です。天原さん』

「うん、どうしたの?」

『あんまり時間取らせたくないし手短に言うけど』


 言った。


『昨日、天原さんのお父さんが僕にお礼を渡そうとしてた。金一封』

「ごめんね、その時はお父さんが迷惑かけて」

『あ、いや、それは問題ないんだけど』

「???」

 どういうことだろうか。


『天原さんのお父さんがその封筒を置いていったから届けにいこうと思った。今行って大丈夫?』

「……あーうん、ちょっと待ってね」


 そこまで聞いて、私は大方の事情を察した。


 そして━━━━お父さんを叱らなくてはならないだろうことを悟った。



 ◇ ◇ ◇


 場所は変わってお父さんの書斎の前。

 今日はお父さんは在宅勤務の日で、この部屋で仕事をしている。


 いつもなら仕事の邪魔をしないように入るのは控えているけど……今回ばかりは仕方がない。


 コンコンコン、とドアを三回ノックする。

 すぐにお父さんの声でいらえがあり、扉を開けて中へと入った。


「お父さん、話があるの、氷雨くんのことなんだけど」


 お父さんはテーブルの上のコーヒーカップをひっくり返した。

 いや、吹っ飛ばしたと言う方が正しいかもしれない。それくらいの勢いでカップは宙を飛んでいた。

 幸い中身は入っていなかったようで、絨毯の上に落ちたこともあり、割れることもなかった。


「な、な、な、なんだね?」


 明らかに何かを勘違いしてそうだけど……まあ別に良いか。お父さんだし。


「単刀直入に言います」

「う、うむ」


「━━━━昨日、お父さん。氷雨くんの部屋にわざと三十万円置いて帰ったでしょ?」


 我が父ながら情けなく、天原誠一郎は固まった。



『え、そうなんですか!?』

 通話は繋いだままだったので、電話の向こうの氷雨くんは凄く驚いた様子だった。


「私はただ、氷雨君にお礼をしようと思っただけなのだが……」

「断られた時点ですっぱり諦めて、他の方法を模索すべきだよ」

「それは……そうかもしれないが」

「まったくもう」


 氷雨くんが聞いていると言うのに、私たちは言い争いを続けてしまった。



『え、あ、その、大丈夫ですから。お二人とも喧嘩は……』

「喧嘩じゃなくてお父さんを叱ってるんだよ。ほんとにしょうがないんだから」

「ぐぬぬ……」


 悪いことをした父は叱り、正しい道に戻すのが娘である私の務め。


『ともかく、それはそれとして、封筒は今から届けに行きますね』

「「それは駄目!」」



 ◇ ◇ ◇

(雪哉視点)


 結局押し切られてしまった。


 僕は、バイトへと向かう道すがら、そんなことを思っていた。


 金一封事件は、後日引っ越し来る天原さんに封筒を返すことで三者合意の末解決した。

 天原さんがお隣でもあまり関わる気はなかったのだけど……仕方がないか。


 というのも、僕は今、自惚れではなく、確かにクラス(のグループトーク)のなかで注目を集めている。


 無論、あのナンパ事件が発端だ。

 天原さんはクラス一、いや、学年一の美少女である。

 そして女性の多くは、生来ゴシップや噂話というものが好きなのである。


 ここまで言えば分かるだろう。

 今僕は、天原さんと()()()()()()なのではないか、という疑いがかかっている。


 そんな状況で、隣の部屋に住んで、かつ親しげにしていたら、確実にもっと酷い事態になるだろう。


 僕は高校で特に人と関わるつもりはないので影響は少ない……とも言えないが、まだ許容範囲。


 問題は天原さんだ。

 このままだと、天原さんが恋愛をしようと思ったときに、本当はなにもないのに、僕の存在が足枷になりかねない。というか、確実になる。


 

 ゆえに、僕はこれまで通りの関係━━関係がない、という関係を、続けていくつもりだ。



 そこまでを思考した僕は、いったん考えるのをやめた。

 もう考えるべきこともないし、これからバイトに行くのに、仕事中に思い出して仕事が疎かになってもいけない。


 そこで、ふと顔をあげ、前を見ると━━


 ━━いつぞやの茶髪男が、向こうから歩いてきた。


 ……やばい。



 待て落ち着け、あいつはきっと僕のことなんて覚えて……るけど多分大丈夫だ。向こうは僕を殴ったという点で僕に対して一つ負い目(?)とも言えるものを背負ってる。警察沙汰になればダメージを負うのはあちらなのだからここでことを大きくするようなことはしないはず。だからきっと大丈夫だ!



 ……我ながら慌ててるのが情けないな。

 まあ、ひとしきり慌て終わったので、少し落ち着いた。

 今なら冷静に対応できる。



 ……あ、気付いた。


 終わった?



「お、おい、アンタ!?」


 キャアオボエテラッシャルワドウシマショ。


「……、……だ……なに?」

「いや今一回気付かないふりしようとしたよな?

 しかもそのあと誰?って言いかけたよな?」


「そんなことはない」

「いや、ある。ぜっっったい、ある」


 ぐぬぬ、もはや言い逃れは出来やしない。

 こいつが僕を殴るというのならこちらにも相応の用意がある!


 僕は、ポケットの中のスマホを操作し、手探りで録音アプリを入れた。

 周囲には防犯カメラがないため、本当は動画を撮っておきたかったが、この際仕方あるまい。


 ここであったが百年目。

 天原さんを怖がらせた罪とついでに僕を殴った罪を、償うがいい!


「……アンタに、一つ、言いたいこと……いや、言わなくちゃならないことがある」

「?」


 なに?


 ◇ ◇ ◇


 いや焦った。


 バイトの帰り道、僕はそんなことを思っていた。

 幸運なことに、茶髪男とは()()()()話をつけることが出来た。

 バイトにも無事間に合ったので、なんの憂慮もなく終われる。


 いやー本当によかったよ。

 いくら受けても特にダメージはないとはいえ、痛いことにはかわりない。

 僕は痛いのは嫌いなので、殴り合いにならないまま終わらせることが出来て、万々歳だ。


「こっちは片付いたから……」



 あとは、あっち(学校)だね。

 始業まであと一週間か。

cos20°を計算したら値が三つ出てきました。

しかも実数のはずなのに、三つ全てに虚数が出てきます。

わけわかめ。



追記

 「茶髪男」の読み方は「ちゃぱつおとこ」ではなく

「ちゃ・ぱつお」です。雪哉が人名っぽく読んでます。アメリカで言うジョン・スミスみたいな仮の名前です。

茶が名字で、髪男が名前。

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