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序章 七話 「焦れったい言い争い?」

 最近暑いですね。

 暑いと頭が働かなくなります、凪白です。

 割とマジで呂律回らなくなったりします。

 気温28℃以上の環境は僕には生きていけません。


前回のあらすじ

 タルトをお出ししたら飴細工に驚かれた。

 (美陽視点)


「「……おいしい」」

 氷雨くんが出してくれたラズベリータルトを口にした私とお父さんは、同時に感嘆の声を発した。


 異常にハイクオリティな飴細工には驚かされたけど……食べたときの驚きの方が遥かに大きい。

 『材料』と小綺麗な字で書かれたメモ用紙を見てみても、特別な材料は一切無い。



 私も似たようなお菓子を作ったことはあるし、食べたみんなには褒めてもらったけど……ここまでの味は出せなかった。

 どこかすごいお店で買ったのかな?

 ミシュランガイドに載ってるような……あれってお菓子のお店も載ったっけ。


「……どこで買ったんだろう」


 お父さんはぼそりとそう呟く。

 私も全く同感だ。何度もリピートしたいおいしさが……


「近場のスーパーですけど」

「「!?」」


 いつの間に入ってきていたのか、後ろから氷雨くんがそう答えた。


「い、いつからいたの?」

「ついさっき」


 全く気がつかなかった……。

 私の家の前から姿を消した時のように、彼は気配を消すのが得意なのだろうか?


「そ、それにしてもだ氷雨君。近場のスーパーとはどういうことかな?」

「うん、そうだよ。スーパーでこんなにおいしいタルト売ってるの?」


 この辺りに住んでいる友達はいないこともないので、そんなスーパー(あるなら最早スーパーじゃないけど)があったら確実に教えてくれているはず。


「?」

 なのに氷雨くんはきょとんとした顔をするのみ。


「タルトは買ってないよ?」

「え?ちょ、どういうこと?」


 加えてそんなことを言うものだから、なにがなんだがわからなくなってしまう。


「卵とか小麦粉なら……普通のスーパーで売ってるでしょ?」

「!?」


 氷雨くんはそう言うけれど……まさか、そんなこと……でも、そうとしか……


「もしかしてこれ、手作り?」

「うん」


 氷雨くんは至極当然な顔で頷き……


「……」


 ……私とお父さんは絶句した。


「こんなにおいしいお菓子作れる人が身近にいたなんて……」

「氷雨君、もし良ければレシピを……いや、うちに作りに来てくれ!」


 あまりのおいしさにお父さんが勧誘を始めた。

 氷雨くんがたじろいでるからやめてあげて。


「っ、ごほんごほん、すまない、私としたことが取り乱しかけてしまったようだ」

「いえ、お褒めに預かり光栄です」


 いつになく氷雨くんの敬語が固かった。

 内心かなり動揺してそうな感じがにじみ出ている。


 そんな様子で、氷雨くんは私たちの向かい側の席に着く。

 すると同時に、大人しく待っていた猫が氷雨くんの頭に跳び乗って……氷雨くんの体幹は小揺るぎもしなかった。

 すごい。


 完全に話が逸れてしまっているので、私はお父さんに目的を思い出させることにした。


「お父さん、本題に」

「うむ、そうだな」


 お父さんはそこで一呼吸入れてから、次の言葉を繋ぐ。


「この度は、娘を助けてくれて、本当にありがとう。

 とても感謝しているよ」


 その言葉に氷雨くんは……


「いえ、当然のことをしたまでですので」


 と、淡白に返した。

 くどい愛想だとか、表面上の謙遜だとか、そう言ったものは一切見られなくて……

 本当に『当然のこと』だと思って言っているのが、なんだかとても氷雨くんらしい気がする。


「そんなことはないさ。助ける過程で男に殴られたとも聞いているが、大丈夫かな?」

「日頃から少しですが鍛えておりますので、問題ないです。お気遣い痛み入ります」

「そうか、ならよかった」


 お父さんの気遣いにも、いっそのこと話し半分に聞いているように思えるほど淡白に返答する。

 これを失礼だと受けとる人もいるのかもしれないけれど……

 私も、お父さんも、そんなことは一切思わなかった。


「話は少し変わるが、私から君に頼みたいことがある」


 だからお父さんは、彼のことを信頼して、次の話に移る。


「次の木曜日から、美陽がここに越してくることになった」

 氷雨くんは驚いた様子で微妙に眉を上げるけれど、それ以上の反応はしなかった。

 予想はしていてあまり驚かなかったと言えばそうなのだろうけど、話の腰を折らないようにと気遣ったのだと思う。


「話は聞いたと思うが、美陽に独り暮らしの経験を積むために家に近いところで独り暮しを始めることにした。

 君のお陰で条件に見事に合致するマンションを手に入れられたし、場は整った。

 だが、如何せん経験がない分、有事の際は勿論のこと、日常生活のなかでも問題が起きたとき、美陽では対応できないかもしれない。

 そこで、非常に言いにくいのだが……」


 お父さんはそこで言い淀んでしまう。

 氷雨くんにこんな身勝手な頼みごとをするのは申し訳ないと思っているのかもしれない。


 けれど……

「……天原さんがお困りのとき、()()()()()、お助けすればよろしいですね?」

「「!?」」


 氷雨くんはその頼みを完全に看破していた。

 『隣人』というその部分まで。


「別に大したことではありませんよ。

 さきほど、誰も住んでいない、空いているはずの隣の部屋から微かに物音が聞こえてきましたし

 頼みの前置きや、わざわざここに足を運んだことと合わせればすぐにわかることです」

「いや、大したことだと思うけれどな……」

「……頭の回転が速いな……」


 何でもないことのように、いつになく長台詞を話す氷雨くん。


「身勝手な願いだというのは承知している。けれど、娘が心配でね……

 本当にどうしようもないときで良いから、助けてやってはくれないだろうか。

 勿論相応のお礼は出すつもりだ」


 お父さんはそう言う。

 でも絶対、氷雨くんは納得しないだろう。


「お礼なんて要りません。人として、自分が助けることが出来る困っている人を放っておくなんてあり得ない行為ですから」


 ()()という、その言葉に。


「君は本当に誠実な人なんだね……」

「いえ、そんなことは一切」


 彼は他人に無関心なように見えて、(実際無関心ではあるけれど)、報酬に吊られたり、困っている人を見過ごせるような人ではない、と思う。

 あまり深くを知っているわけではないけれど、本気でそう思えるほどの人柄が、今まで接した間に滲み出ていた。


「そんな君に、渡したいものがある」


 お父さんがそう言って取り出したのは……かなりの厚みの、茶封筒。


「お、お父さん!?」

「三十万円が入っている。娘を、身を呈して助けてくれたお礼で……」

「頂けません」


 人の言葉に自分の言葉を被せる所など見たことがない氷雨くんが、食い気味に断った。


「必要ありませんし、それだけの働きをした訳ではありませんので。それに何より、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「だが……」

「僕が口を出すことではないのかもしれませんが。そのお金は、天原さんに護衛かボディーガードをつけるのに使ってあげたらどうですか?」


 氷雨くんは少し、怒っているように見えた。


「しかし……」

「頂いても、お宅に届けに行きますよ?」


 ……まさかとは思うけれど、氷雨くんならやりかねない。


「お父さん」

「天原氏」

「……わかった。すまない。君の気持ちを無駄にするような行為をしてしまうところだった」


 お父さんも無理に渡すようなことはしないでくれて良かった。


「突然ごめんね、氷雨くん」

「大丈夫だよ」

「おいしいタルトをありがとう」

「また作ったら届けに行きましょうか?」

「その時はまたお伺いさせてもらうよ」


 そんな挨拶をしながら、私たちは席を立った。



「それでは、お気をつけてお帰りください。天原さん、天原氏」

 マンションのエントランスで 、(猫ちゃんを頭にのせたまま)見送ってもらう。

 ……わざわざ申し訳ない。


「本当にありがとう」

「じゃあまた木曜日!」

「うん」


 そこで、氷雨くんは、今日始めての微笑を浮かべて……




 手を、振ってくれた。

 僕はまだ世間知らずな身分でございますので、作中では色々現実ではあり得ないことが起こったりする(している)と思います。

 直近だと『タルトそんな短時間じゃ作れない』とか、『マンション契約そんな秒で終わるわけない』とかですね。

 突っ込みどころが多く、読んでいて「ん?」と思われる箇所も多いと思います。

 一重に僕の人生経験の無さと文章力の無さが引き起こしている事態です。

 申し訳ございません。

 そんな本作ですが、何卒、よろしくお願い致します。

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