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序章 六話 「破壊力抜群の飴細工」

 課題が進みません、凪白です。

 今回は区切りの都合で短めです。


 前回のあらすじ。

 女の子が親と一緒に訪ねてきた。

(美陽視点)


 氷雨くんに助けてもらった翌日。

 私はお父さんと一緒に氷雨くんのマンションを訪れていた。


 もちろん、その目的は、彼岸荘との契約だ。

 私は、帰り道に氷雨くんに勧められた直後、お父さんの手が空いたときに相談してみた。

 するとお父さんは、立て続けにどこかに電話を掛けて……暫くして、「明日、契約に行こう」と言ってくれた。 

 どこに電話していたのかはわからないけれど、多分部下の人たちにセキュリティとかを調べてもらってたんだと思う。


 そんなわけで私は、氷雨くんが言った通り、『土曜日電話して日曜日に契約に行く』という状態になった。

 大家さんがまさかの芥川賞受賞作家だということには本当に驚いたけれど。


 そこで大家さん━━寺岡さんに勧められて、私とお父さんは、そろそろ十七時になるだろうかという時間に、氷雨くんの部屋の前に立っていた。


「美陽を助けてくれた氷雨君にしっかりお礼を言わなくてはならないからね」

 そう言いながら、お父さんは『603』というプレートが付いて、ドア脇には『ひさめ』となぜか()()()で書いてある表札がある部屋のインターホンを押す。


 ピンポーン、とありきたりな音がなり、少しの後、「少し待っていてください」と返答があった。


 ガチャ、とドアを開けて顔を出したのは、濡れ髪のまま顔を出した氷雨くん。

 片手に猫を抱えているのがちょっと可愛い。


「どちらさまですか……へ……?」


 最初の挨拶は完全にいつもの無表情で応対していたけれど……なぜか強く驚いているようだ。


「あ、天原さん!?」


 あれ、最初は私がここにいることに驚いたのかと思ったのだけれど……自意識過剰だったかな、どうやら違うみたい。


「君が氷雨君だね?私は天原誠一郎(あまはらせいいちろう)。天原美陽の父親だ。

 突然申し訳ないが、昨日のお礼を言いたくてね」

「え……あ……、取り敢えず、中にどうぞ」


 突然訪ねたにも関わらず、氷雨くんは家に招き入れてくれる。


「いや、そんなことさせるわけには……」

「いえ、天原重工の社長ともあろう方をおもてなししないわけにはいきません。

 忙しい合間を縫ってお礼をいっていただく程度でわざわざ足を運んでいただいたのですから」


 氷雨くんは若干早口になりながらもそう言い、ドアを広く開けて、「どうぞ」と口にする。


「すまないね。お気遣いありがとう」

 お父さんはこれ以上言う方がかえって失礼に当たると考えたようで、素直に従うことにしたらしい。

 私も「ごめんね、ありがとう」と言いながら、お父さんの後に続く。



 氷雨くんの部屋の玄関には、硝子製の花瓶に入った水色の綺麗な花と、お洒落な傘立ての二つが置いてあった。

 ものが少ないのが、なんだか氷雨くんらしいような気がする。


「リビングはこちらです」

 先に上がっていた氷雨くんが、廊下の先のドアを指しながら言った。


 ドアからリビングの中にはいると……実に居心地の良さそうな空間が広がっていた。


 テレビの前のスペースには淡い水色のカーペットが敷かれ、その上には座卓がちょこんと置かれている。

 視線を移せば、リビングとつながったダイニングとキッチン。木製のテーブルにはなぜか椅子が四脚も置かれており、奥のキッチンには色々な調理器具が並んでいる。

 お菓子のような甘い匂いもしており、イメージしていた『男の子の部屋』とは言い難い。


「ここにどうぞ」

 氷雨くんに勧められるがままに、私とお父さんはダイニングのテーブルに着いた。


「ちょっと待っててください」


 そう言い残し、氷雨くんはキッチンへと向かい、何かの準備を始める。


「そこまで気遣っていただく必要はないのだが……」

「いえ、お客さんにはお茶とお菓子くらいは出せと母に教えられておりますので」


 なにやら茶菓子の準備をしてくれいるらしい。


 ものの数分ほどで、私たちの目の前にはソーサーに置かれた紅茶カップと……イルカの飴細工が載せられたラズベリータルトが置かれていた。

 すごく、美味しそう。


「含まれるアレルギー物質はここにかいてあるので、食べる前に確認してください」

 そんな言葉と共に差し出されたのは、小さなメモ用紙。そこには、こちらも男の子らしくはない整った文字で、『卵』、『小麦粉』などと記されていた。


 いや、それより、この飴細工のクオリティ……

 どこでこんなタルト買ったんだろう?


「先ほどお風呂からでたばかりなので、申し訳ございませんが髪の毛を乾かしてきます。

 紅茶はティーバッグですみませんが、しばらく待っていてください」


 そう言うと、氷雨くんはリビングの扉から出ていこうとして……


「リル、お相手よろしく」

「みゃー」


 振り向いて、猫にそう言った。

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