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一章 三話 「ツッパリ退治、する?」

久方ぶりですね(お前のせいだよ)

凪白です。

「本当に天原さんのことが好きなら、他人を蹴落として順番が繰り上がるのを待つより自分を磨きなよ」

 決定的なこの一言で、今泉君がブチ切れたのを感じる。


「お前……黙って聞いてりゃ偉そうに」

「それは失礼。でもいきなり人を呼び付けて交友関係に口出しする方が偉そうだとは思うけれど」

「うるせえ黙れ!」

「声が大きいのは確実に君の方だけど」

「そういう話をしてるんじゃねぇよ!」


 イライラをぶつけるように今泉君を煽ってしまう。

 自分がこんなに危ない性格だなんて知らなかった。


「お前マジで一回そのクソ生意気な性根叩き直してやらないと駄目みたいだな……」


 どうやら少し落ち着いたらしい。

 でもそのやたら良い顔で怒ってると無駄に迫力がある。


 別に怖くは、ないけれど。


「その前に自分を省みるべき。すごく情けない」

「うるせぇ!てめぇらこいつ袋にしろ!」



 やっばガチのチンピラやん。

 おっとエセ関西弁が火を吹いてしまったぜ。


 袋とか現代人で使ってる人何気に初めて見たかも。



 っとまあ兎も角、今泉君の本性は見えた。

 一応イケメンで通ってるが、陸翔のような心からのイケメンではなく見た目だけの、中身はクズ……ごほんごほん、あまりよろしくない性格である、というのが彼の本性である。


 呼び出された時からスマホで録音はしてるし、仮に何か起こっても僕が不利になることはないでしょう。



「死ねぇ!!」

 死なんよ。ていうか君も僕に死なれたら困るでしょ。

 主に世間体的な意味で。

 どんな理由があっても、仮に正当防衛であっても、この日本じゃ人を殺めてしまえば一生後ろ指をさされるのだから。


 そんなことをぼんやり考えながら、殴りかかってきた下っ端一号(仮)に対処する。


 背負っていたリュックサックを下ろし、両手を自由に動かせるようにする。

 そのまま相手の突き出された右拳を軽く払い、右腕をしっかりとホールドして……。


「せいっ」


 投げる。

 この投げ技は合気道と柔道の流れを汲んでいるらしい(・・・)

 伝聞系なのは明らかに別の武術も混じっているからである。


 合気道や柔道が、投げ技の最中に空中で当身入れたりしないでしょ。

 きっと僕の師匠がなにか大切なことを隠して伝えたはずだ。


「っ」

 下っ端一号は声にならない呻き声を上げ、意識を手放して地面に背中から転がった。

 芝生で良かった。手加減はしているが、コンクリートや石の舗装路だったら危なかった。


 頭蓋骨骨折で全治何か月とかになったら、いくら多対一とはいえ過剰防衛になるだろうし。


「次はだれ?」


 若干の威圧をこめて周囲を睥睨してみる。

 これでびびってくれたら楽なんだけど……。


「っ……ざけんな!」


 僕が連行された時からここで今泉君の周りに侍っていた上位陣の一人が、今度は激発して蹴ってきた。

 うーん、この人何かしら(格闘技)やってるな?空手かな?


「面倒だけど━━」

 空手は打撃技主体。うちの流派の絞め技には滅法弱いタイプである。

「んぐっ……」

 蹴り出された脚を上手くいなして相手の動きを止め、その隙に一歩踏み出して首筋に腕を巻き付けて絞め落とす。


「よし」

 こっちはスムーズに気絶させることが出来た。


「思ったより腕は落ちてなかった」

 一回体に染み付いた技術は、どうやらなかなか落ちないらしい。

 しかしまぁ、この人数を、これ以上相手をするのは面倒である。

 事故って大怪我をさせてしまうかもしれないし、何より『陰キャに惨敗した』という事実が向こうに残ってしまうと後が怖いからね。


 だからこの辺で向こうから引いてくれるとありがたいんだけど……。


「ちッ。今日のところは見逃してやる!」

 いつの不良(ツッパリ)のセリフだよ!と言いたくなるような捨て台詞を残して、今泉君は引き上げることにしたらしい。

 二人の手下がなんでもないようにあしらわれたのを見て怖気付いたのか、なんにせよ僥倖だ。


『見逃してやるのはこっちだよ』という台詞を飲み込んで、僕は彼らを見送った。

 証拠は上がってるんだから、ね。



「見てたなら助けてよ、陸翔」

「気づいてたのかよ」


 当たり前だよ。古武術なめんな……というよりうちの師匠なめんな。あの人バケモノだから。

 こっちだってかなり鍛えてるのに、一切気づかせずに背後にたってたりするからね。

 とても九十歳超えのおじいさんには見えない。


 まあそれは置いといて、だ。

 僕が声をかけると、校舎の陰から人━━もとい陸翔が、顔を出してきた。

 その手にはスマホが握られている。どうやら動画を撮影していてくれたらしい。


「取り敢えず撮っといたから。友達連中にそれとなく言って動きにくくしとくよ」

「ありがと」


 陸翔派はかなりデカい。

 強豪であるサッカー部はほとんどが陸翔派だ。

 それに実績もしっかりと出しているから、教師からのウケもいい。


 対する今泉君は、バスケ部が主な味方だがバスケ部自体は実績があまりなく発言権は大きくはない。

 本人たちが校地外にいることが多いことも相まって、今泉君自身の人気に比べて、派閥としてはそこまでの規模ではない。


 トップ(陸翔と今泉君)の人気は互角だけれど、味方の数は大きな差がある。

 バレてはいなかったけど、今泉君の本性がその辺に関係してるのかな?


「なんならもっと直接的に動こうか?」

 陸翔がそう提案してくれる。だが━━

「ありがとう。でも大丈夫」

 僕はその提案を断った。


 正直ありがたい。

 撮ってくれた動画や、そうでなくとも口コミなどが流出すれば、今泉君はほぼ確実に職員室に呼び出しをくらう。

 そうすれば教師も彼の動きに注目し、彼は動きにくくなるだろう。


 だがそこで、恐らく彼の怒りの矛先が僕に向く。

 報復として大人数連れてきて袋叩きにしようとするかもしれない。

 それに対応できるかはともかくとして、問題になるのは必至。

 非常に面倒な事態になることは明らかだ。


 加えて、何より、天原さんに危害が及ばないとも限らない。

 ここは脅しの意味も含めて沈黙しておくべきだ。



「天原さんには言っとくか?」

「……やめとこう」

 僕が今泉君に偉そうに言ったように、他者の交友を不当に狭めることになりかねない。

 まあどちらにせよ、

「僕には関係の無いことだから」


 一瞬、陸翔が呆れたような目をしたような気がした。

「じゃ、俺部活戻るわ」

「ん、ありがと。バイト行ってくる」


 うわ、今思い出した。今日ホール担当だ。


「なんで今嫌そうな顔した」

「今日のバイトの担当を思い出したから」

「ホールか」

「なぜバレた」


 お互い、しばし苦笑した。

部活動紹介 運動部編


サッカー部

 超強豪。全国制覇経験あり。ただ今は凄いのが陸翔くんだけなので普通の強豪校。

 寮生活してる人は大体サッカー部員。


バスケットボール部

 女子はそこそこ強いが男子は正直弱い。具体的に言うと女子は地方大会トップクラス。男子は都道府県大会中堅クラス。まあボスがあれじゃね。


バレー部

 男女ともにけっこうつよい。男子は軍隊みたいにめちゃくちゃ統率されてる。女子は海野藍音をリーダーに頑張ってる。全国中堅~上位クラス。


その他水泳、テニス、バドミントン、ラグビー、アルティメット、ボート、ヨットが部として、しっぽとりが同好会として、存在する。

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