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一章 二話 「絡まれて、言い過ぎて」

筋トレに目覚めました。

#華奢男子 な凪白です。


前話あらすじ

テスト返ってきた。クラスメイト(男子)に熱い視線を送られた。



注意:後半がちょっと文字量多めです。

「……」

(おい、どうした)


 無言で視線の理由を考える僕に、ひそひそと陸翔が話しかけてくる。


(今泉君、こっち見てる)

(えまじ?)


 陸翔が今泉君の方を見ようとするので慌てて止めた。


(なんでだろ……なんかしたっけ)

(ほぼ確定で天原さん関連だな)

(天原さん?)


 なぜ彼女が今泉君の視線の理由になり得るのだろうか?

 今泉君は兎も角天原さんは、特段他の男子と違う対応をしているようには見えないし、二人は付き合っている訳でもなかったはず。



(……お前そういうとこ割と鈍感だよな)

(?)

 鈍感と言うとこの場合は恋愛的な話のはず。

 仮に今泉君が天原さんに気があるとしても、僕は天原さんと深く関わっている訳では無いのだから、嫉妬ではないだろう。

 関係と言っても、強いて言えばナンパを止めたこと、家に来たこと、そして一昨日の勉強会くらいである。


(だからそれは違うと思う)

(男心が解らない男子がいるとは……)


 なぜか呆れられてしまった。



 ◇ ◇ ◇

(陸翔視点)


 陸翔は自分の親友に呆れ、溜め息でも付きたい気分だった。


 頭が良く、家事も万能で、気遣いもでき、大抵の運動なら楽々こなせるというのに、雪哉はそれを執拗に隠そうとしている。

 隠し切れていない部分も多々あるが、人の気に止まらないように立ち回っているので、この高校にそれに気付いている人間は殆どいないはずだ。


 いつも日の当たらないところに隠れ、裏の雑用を人知れずこなしながら、どこか達観したような瞳で物を見ている。

 また基本的に二言三言で会話を済ませて、人と深く関わろうとはしない。


 その理由を本人に聞いても、表情を殆ど変えずに「目立ちたくないから」と短く答えただけだった。


 そんな性格だから、初めて出会った時も仲良くなる以前に会話を成立させるのすら大変で……。


(まあ、ほっとけなかったしな)


 それでも対話を諦めなかったのは、雪哉の目に、微かに諦観の色を見たからかもしれない。


 それまで生きてきた中で、なにかそうなってしまうような出来事があったのか。

 本人に訊いても、まず間違いなくまともな答えは返ってこないだろうが。


「はい、今日の連絡事項は終わりです、解散」


 担任の何処か気怠げな言葉で、教室は一気に騒がしくなった。

 陸翔はそこまでのぼんやりとした思考を断ち切り、勢いよく立ち上がる。


「部活?」

「おう、主将(キャプテン)が休む訳にはいかないからな」

「ん」


 雪哉は短く答えて、リュックサックを背負った。


「また明日」

「またな」


 そうして陸翔と雪哉は互いにひらひらと手を振り、別れた。


 ……のだが。


 廊下を歩く雪哉に一人の男子生徒が絡むのが、開いた教室の窓から見えた。

 雪哉は軽く流そうとしているが相手も退かないらしい。


「こりゃ何とかせんといかんな」


 あいつの親友というのも大変だ、と陸翔は内心で思った。


 ◇ ◇ ◇


「雅紀が呼んでるんでよぉ、ちょっと来てくれね?」

 拙い、面倒なのに絡まれた。

 今泉君の友達……ということになっている取り巻き、つまり腰巾着の一人で、まあ間違いなく先程の視線と関連があるのだろう。

 今泉君とは同じクラスというだけでそれ以外の接点は皆無。

 カーストトップなので無視するのも良くないが、そんなのこの際どうでもいいくらい面倒だ。


「用件は?」

「来てから言うそうだ」

「そ、じゃあ行かない」


 呼びつける側が用件も伝えないなどありえないだろう。

 こちらが付き合ってあげる義理などない。


 僕は目立ちたくないが、そのために明らかに面倒くさい臭いがプンプンしている所に首を突っ込もうなどとは思わない。

 多少目立ってしまう方がまだマシである。


「あ?来いよ」

 こいつは日本語が分からないのだろうか。

「行かないと言った」

「来いっつってんだろ」

「用がある。帰る」


 ほんと、面倒くさい。

 我慢できず、僕は横を抜けて振り切ろうとしたが……。


「待てって」

 増援部隊に阻まれた。

「用があるならさっさと言って。その上で行くか決める」

「悪ぃな、こおりあめくん。お前に決定権はねえよ」


 なにこの不条理。

 一昔前のツッパリみたい。


 結局殆ど拘束されているような状態で校舎裏まで連れていかれた。

 そこには今泉君とその上位の取り巻き数名がたむろして僕の到着を待っていた。


 今泉君に、上位陣三名、僕を連れてきた下っ端四名。

 中学の頃に少し古流武術の道場に通っていたとはいえ、相手をするには流石に厳しい人数ではある。

 このツッパリ風達は確か全員バスケ部のはず。

 椿宮高校(うち)の男子バスケ部はそこまで強豪ではなかったと記憶しているが、腐っても運動部。

 体力・筋力はしっかりあるだろうし、なにより喧嘩慣れしていそうだ。


 ああ、本当に、何故こんなことに。


「なにか?」

「そんな急ぐなって、まあ座れ」

「やだ、さっさと言って」

「あん!?てめえクソ陰キャのくせに雅紀さんに何言って……」

「落ち着けよ、佐久間」


 佐久間と呼ばれた下っ端ツッパリは急にキレるが今泉君に止められた。

 今泉君は用件を言わずに人を呼び出すような所もあるが、血の気の多い取り巻きを抑えられるように、実は良い奴なのかもしれない。


「それで、話なんだが、氷雨」

「?」

「お前……調子乗んなよ?」

 前言撤回。やっぱダメなやつかも。


「ちょっといいとこ見せたからって美陽に近づきやがって……お前みたいなやつが話していい女じゃねーんだよ」

 確定。アウトでした。

 そして陸翔の推測が正しかったことを、僕は知る。

 こいつ、彼女でもない女性の交友関係で嫉妬してる。


「根暗な陰キャの分際で、金輪際美陽に近づくな」

 あ何だかイライラしてきた。


 他人の交友関係に口を出し、勝手に怒り、束縛しようとする。

 そんな奴が僕は大嫌いだ。

 お前が誰かを好きになろうとお前の勝手だが、それを他人に押し付け行動を縛ろうとする権利は無い。


「は?」

 あぁ、口から怒りが漏れてしまった。

 直ぐに周囲が殺気立つのを感じる。


「あ?なんだよ、文句あんのか」


 大ありだ。


「君になんの権利があってそんなことを?先ず以て誰にも他人の人間関係に口を出す資格なんてない。そんなのあくまで本人の自由だ。なのに君は、彼女でもない女性が話しかける相手に嫉妬し、交友関係を不当に狭めようとしてる」


「テメェ自分が美陽と話したいからって自分のこと正当化するつもりか!?」

「正当化する?そんな必要は無い。元々正当性はこちらにある。それに僕は天原さんと関わることに、君ほど興味がある訳じゃない」


 目立つ人と関われば、否が応でも目立ってしまう。

 それで面倒なことに巻き込まれるのは御免だ。


「そもそも、天原さんの周りには僕より君のライバルに成得る人が沢山いる。僕みたいなのにかまけてる暇があるのか?単に自分が振り向いて貰えないからって、弱そうなやつを狙って寄って集って脅して。ただ自分のために天原さんを束縛して、夢が叶わない現実から逃げてるだけじゃないか」


 言い過ぎかもしれない。嫌われるかもしれない。嫌われるのは嫌だ。

 でも、こいつを放っておいて何か起こるよりは……まだましだ。

 どちらにせよ、もう後には退けないけれど。


「僕は今は、天原さんと積極的に関わる気は無い。本当に天原さんのことが好きなら他人を蹴落として順番が繰り上がるのを待つより自分を磨きなよ」


 言ってしまった。

雪哉くんが突発的に絡まれたことに関し、序章の二話を訂正してきました。

昔喧嘩が弱いという記述ですが、小学生の頃に変更します。


元々武術系はやってないことにするつもりだったのですが、この話で結構な人数に囲まれているので付け足しました。


思いつきで書いてるから……。

すみませぬ。

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