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一章 一話 「ちかくないですか……?」

すみません色々ありすぎて全然投稿出来ませんでした。

凪白です。


前回のあらすじ

親友がイケメンだった。

 どういう状況?

 それが、始業式の翌日である今、僕が思っていることだ。

 今日僕は、陸翔に誘われて(半強制)朝早くから学校に来ていた。

 その理由は……

「いざ!夏休み明け宿題考査対策勉強会!いぇーい!」

「ぱちぱちぱち」


 眼鏡をかけた女の子━━海野さんの気のない拍手が、僕達以外に誰もいない教室に響き渡る。

 ここの面子は、陸翔、陸翔の……ごほんごほん、クラスメイトの海野藍音さん、そして何故か緊張している風の天原さんである。

 僕は陸翔に、「ちょっと勉強教えてくれよ!」と言われて来たのだが……。

 うん、どういう状況だ。


 にしても。


「手遅れ」

「うるせえ!」


 何を隠そう、宿題考査は今日と明日だ。

 対策で勉強をするにはあまりに遅すぎる。

 一夜漬けなどでもなく最早朝漬けだ。いやむしろ文字通りの浅漬けか。

「それねー、私も思ったんだけど……。まあいいか、課題は終わらせたの?」

「ああ、昨日な!ぐふっ」


 僕のボディーブローがまともに決まり、陸翔はイケメンらしからぬ呻き声を上げる。

「……大丈夫?」

「あ、あぁ、全然、大丈夫だ」

「しっかり入ったみたいね」

 海野さんの「当然だわ」的な物言いに、陸翔は憮然とした表情をする。


「宿題は計画的に」

「借金のコマーシャルか!?」


 ナイスツッコミだ陸翔君、僕と共にお笑い界の頂点を目指そうじゃないか!

 などという阿保な掛け合いはこの辺にして。


「……ほら(さっさと教科書出して)」

「おう」

 僕がそう言うと、陸翔はサッカー部統一のリュックサックの中から数学の教科書を取り出した。


「(どこがわかんないの)?」

「あの、なんかアルファベット横向きにしたやつみたいな、あの記号」

(シグマ)?」

「そう!それそれ」

「「「……」」」


 だめだこりゃ。


 ◇ ◇ ◇


 それから暫し時が経つ。

 海野さんは自分で英語の勉強をし、陸翔には僕がテキトーに……ごほんごほん、適当に作った数学の問題を解かせている。


 そして僕は。

「氷雨くん、この問題はどう解くの?」

 真横に座った天原さんから、数学の難問の解法について尋ねられていた。


「ん」

 僕はルーズリーフに解答を書き、解説を赤いペンで書き込んだ物を見せる。

 僕は人と喋るのが得意では無いので、この方法が1番自分の考えていることを伝えやすいのだ。


「ふむふむ、ここが大事なのか……。

 でもさ、こんな解法言われてみないとわかんないよ……誘導問題からの関連だって意外すぎるし」

「そうでもないよ」

「?」


 確かにこの問題はかなり癖があるし、解法だって「そんなのありかよ!」的なやつではある。

 この問題の解答も、解き方は書かれているものの「思いつき方」の解説は一切書かれていない。


 ……まあ、それが普通の参考書なんだけど。


「ほらここ、この一文」

 僕は、問題文の一部分を指し示す。

「これが……?」


「『難問』を本当に難しいと思うのは、解答者じゃなくて問題作成者。凄く難しくするのも、凄く易しくするのも簡単だけど、それまでの学習内容のなかで思いつける解法で問題を作るのはかなり大変だ。問題文一つとっても、ヒントを与え過ぎず、かつ簡潔過ぎず、解答者が理解できるように書かなくちゃならない。ベテランの敏腕教師ならともかく、普通の教師にそんな繊細なことは難しいから、だいたい問題文に『粗』……って言うとあんま良くないけど、問題を解くのに必要な、作成者が残した『鍵』があることが多い」


 いつに無い長台詞に口が乾き、僕はペットボトルを取り出して口を湿らせた。



「ここがその『鍵』になる一文。そこから段階的に思考を進めていけば……」

「これが思いつけるってことね」



 僕の言葉に続けて、天原さんは解説を、その綺麗な指でトントンと叩いた。


「テストでこれに気がつくことができれば、難問も難問じゃなくなる。満点狙えるよ」

「うん!ありがとう!ほんとに!」


 天原さんは満面の笑みを浮かべてお礼を言ってくれるが……少し、いや、かなり、近い。

 しかもいきなり顔を近づけてくるもんだから、女性特有の甘い香り?がほわっとしてきまして、僕は反射的に身を引いてしまう。


 いや自分でも思うけど焦りすぎだろ、なんだよ心の声で『してきまして』って。


 内心そうツッコミを入れる事で、僕は一定冷静さを取り戻したが、僕が身を引いたことで自分の恥ずかしい状態に気がついた天原さんは慌ててしまう。


「え、あ、その、えっと」

 一度は冷静になったものの、天原さんのそんな様子を見て僕は再び焦ってしまう。


 だからなのだろう、僕は海野さんと陸翔が顔を見合わせているのに気がつけなかった。



 ◇ ◇ ◇


「首の皮 一枚残して 繋がった

  その幸せを 噛み締めていたい」

「座りなよ」


 突発的事故で気まずい雰囲のまま終わった勉強会の二日後。

 この日はテスト返却日程のため、授業自体は無く、テスト返しと解説だけだった。

 英語に始まり、国語現代文、国語古典、地理、理科化学、理科物理、そして最後の数学。


 全ての点数が出揃い、陸翔は今の心境を一句読んでいた。


「全教科、赤点は回避ね」

「おう!雪哉のおかげだ!」

「全教科、平均は割ったね」

「おう!完全に俺のせいだ!」


 ほとんどの教科が二〇点台後半からから三〇点台後半。数学は直前の詰め込みが効いたのか、平均の七二点に惜しくも届かず二〇〇点中の七〇点。

 うちの高校は平均の半分が赤点となるのだが、平均はいつも五〇前後なので、陸翔のは首の皮一枚残して繋がったわけだ。


「前回に比べれば大進歩だけどね」

「ははははは……笑えねえ」


 二人で前回、すなわち二学期末テストの陸翔の得点を思い返す。

 赤点プラス一点が七科目中五科目なんて最早奇跡である。


「そういえば、雪哉はどうなんだよ?」

「いつもと同じ」


 陸翔の問いに僕は、そう短く答える。

 傍から見れば、陸翔には点数を言わせておきながら……となるのかもしれないが、僕は()()()()()()()()から、言わなくていい。


「またいつものあれだろー?絶対に(・・・)平均プラス五点の」

「陸翔」

 それは、言わない、約束だろう?

「すまん」


 僕は目立つのなんて御免だ。



「氷雨くん!」

 瞬間的に重くなってしまった雰囲気を打ち破るかのように、天原さんの明るい声が聞こえた。

 返ってきたばかりの数学のテストを片手に、こちらに駆け寄ってくる。


「なにか?」

「その、お礼が言いたくて、氷雨くんのお陰で凄く良い点が取れたから」


 そう言って見せてくれたテストには、「一九六」と赤字で大きく書かれていた。


「目標にしてた満点には届かなかったけど……」

「次に生かせば問題ない」

「そうだね!ほんとうに、ありがとう」

「いえいえ」


 陸翔に強制的に参加させられた勉強会で二言三言言っただけなのだから、お礼を言われても困る。


「うーい、ホームルーム始めるぞー、自分の席戻れー」

 そこで教室のドアが開き、担任が顔を出した。

 僕と陸翔は席が前後なのでそのまま喋っていたのだが、天原さんとは席が近くないので彼女は自分の席に戻っていく。


 その後ろ姿を見送りながら、僕は自分に向けられる視線に気がついた。


 目を合わせないように気を付けながらそちらをちらりと一瞥すると、そこにいたのはクラスの男子の一人。


 陸翔とは少々異なる方向に端正な顔立ちで、制服を着崩した、所謂ワイルド系なイケメンの彼が向ける視線は、僕にはあまり友好的には思えなかった。


 彼の名前を思い出そうと、僕は記憶を手繰り……

「あ、そうだ、今泉雅紀(・・)だ」

ストックゼロなので次いつになるかわかりません!

すみませぬ!

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