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壊されたモノ修復します  作者: 高瀬あずみ
第三章 北都パリアント(前)

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 神官長であるラクサとの話し合いが終わると、呼ばれたシロエスに案内されてミリアは神殿内の見学をすることになった。まずは今いる居住区である地下からだ。


 大きく分けて、『執務・研究・修行』のゾーンに、『私室・客室』のゾーン、そして『共有』のゾーンに分かれている。

 通路はどこも白い石壁で、両側に扉のない部屋が続く。ミリアがこれから使用する頻度が高い『共有』のゾーンにまず連れて行かれた。


 一部の高位神官と客人を除くすべての神官が使用するための広い食堂。ずらりと並ぶ机と椅子は、時間がずれているためか、閑散としていた。奥にある厨房(既に台所という範疇を超えている)と繋がる配膳のスペースから食事を受け取って空いている席で飲食するとのことで、セルフサービスのフードコートのように感じられた。提供される食事は常に1種類で、選ぶことはできないらしい。

 大勢の食事を賄う厨房も広々とし、後片付けや次の調理の下ごしらえにと忙しく働く人たちの姿が見える。食堂も厨房も清掃が行き届いているのが好印象だ。


 ここでミリアが驚いたのが、神殿では調理も清掃も下位神官の仕事だということだ。持ち回りで順番が来るらしい。ただ、中にはどれだけ経っても向かない人もいるため、その場合は別の仕事に振り分けられるそうだ。

 シロエスの話によると、ミリアの知り合ったゼウラも、この処置が適応されたらしい。本人にやる気があっても調理関係が壊滅的で、清掃にばかり回されるので、そちらの腕が随分と上がったとか。

 現在、シロエスは調理の当番が終わり、高位神官たちの手伝いを担当しているという。その関係で使い走りもしており、神殿の入り口でミリアを見つけたのも、その帰りのことだったという。


 共有ゾーンには所謂水まわりが集中している。手洗い、浴場、洗濯場などである。崇めるグラトリア女神の恩恵により上下水道的な神聖魔術が施されているとか。

 ミリアの部屋にも手洗いはあるが、入浴はこちらでと言われた。清掃中を除けばいつ入ってもいいとのこと。丁度清掃の時間だったので、使われていない浴場を覗かせてもらう。男女別にしっかり分かれているのが嬉しい。脱衣所とそれに続く湯殿は、大多数が一度に使えるようにとかなり大きい。そして、しっかりと湯舟があるのにミリアは歓喜の声を上げる。神聖魔術で常にきれいな湯が満々とたたえられており、そのまま飛び込みたくなるほどだった。


「たっぷりのお湯、素敵! 神聖魔術羨ましいです!」

 興奮のあまり上気した顔で何度も繰り返すミリアを見守るシロエスの微笑は柔らかい。

「神聖魔術でなくとも、水をお湯にすることはできますよ。ミリアさんは魔力測定を受けてはおられないのですか?」

「魔力測定? はじめて聞きます」


 この世界の人間は大なり小なり魔力を持っている。魔道具は使用者の魔力に反応するから誰でも使えるのだという。生まれながらに強い魔力を持っている場合は周囲にも明らかだが、そうでない場合は気付かれぬままで終わる。

 そこで魔力測定である。測定は無料で、八歳になればどこの神殿でも受けられ、魔術師ギルドや冒険者ギルドでも受けられるという。何故八歳かというと、その年くらいから徒弟に入る子供たちがいるからだ。もちろん魔力の大きさで職業の選択の幅も広がる。

 測定されるのは魔力量だ。だいたい五段階であらわされる。

 

1.通常レベル 特に魔力を使って何かできるわけでもない。

2.生活レベル 日常に役立つ初級魔術を使うことができる。

3.職業レベル 中級魔術が使用でき、魔力を道具に流して付与できる。一部の職人や戦士など。

4.魔術師レベル 上級魔術が使用でき、職業として成立する。

5.大魔術師レベル 最上級魔術が使える。大規模な魔術を展開することができる。


 大多数の人間は通常か生活レベルであり、合わせて五割ほど。職業レベルだと三割。魔術師レベルで二割。残りの一割が大魔術師であるが、実際は一国で五人もみつからないらしい。

「それでは今から受けてみられますか?」

 シロエスの言葉にミリアは飛びついた。



 地上階に上がり、神殿の祈祷所の横の部屋へと入る。中は無人で、ただ中央に台座に据えられた石があった。

「これが測定石ですよ」

 シロエスはミリアにこの石に触れるよう告げた。どきどきしながらそっと石に触れると、石はふんわりと淡い黄色に染まる。

 通常レベルは白、生活レベルは黄色、職業レベルは緑、魔術師レベルは青、大魔術師レベルは赤くなると聞いた。

「生活レベルですね。希望されるならば、このまま初級魔術をお教えしましょうか?」

「お願いします!」


 神殿にも初級魔術を教える場所があるという。初級魔術でも使い方や力の込め方で危険なことになりかねないため、周辺に防御をほどこした専用の部屋を使う。

 指導するのは初級魔術の熟練者、もしくは魔術師レベルの者にしか許されない。職業レベルの場合は各職業の熟練者が、魔術師レベルも魔術師の熟練者が指導をする。

 ちなみに、ただ神官になるのであれば、魔術量は無関係である。しかし中位以上の神官になるためには魔術師レベルが望ましいらしい。

「私はまだ修行中ではありますが」

 自分が魔術師レベルだと教えてくれたシロエスは、そのままミリアを指導してくれるようだ。この指導は通常であれば有料なのだが、ミリアには何も告げられず無償で行われた。



 魔術とは、基本的な水・火・風・土の四大属性に沿うものだ。変換・発生・制御の三段階を経て使用が可能になる。これは初級魔術から最上級魔術に至るまで共通の概念だとシロエスは語る。慣れないうちは、属性の媒体を使用する。

 ミリアにシロエスは4つの小石を渡した。水色、赤、緑、オレンジと属性が一目で分かる。これらは魔術師が自らの魔力を込めて簡単に作れるそうだ。何でも、制御の練習の副産物のようなもので、市場にも安価で出回っているらしい。

 無人の部屋に案内され、言われた通り椅子に座ったミリアの前に、シロエスも腰掛ける。そうしてミリアの手を取った。


「まずは、自分の中の魔力を意識するところからです。最初は自分では分からないので指導者が魔力を流します」

 両手で包まれたミリアの手に何かが染み込んでいく。それは手から身体全体にゆっくりと広がり、それに惹かれるように自分の中から滲みだしてくるものがあった。

「分かりますか? それがミリアさんの魔力です。ゆっくりと手の方に移動させるよう意識してください」

 滲みだした魔力は身体のあちこちから集まり、ミリアはそれを手へと押しやるイメージを浮かべた。

「とても素直でよい魔力ですよ。では手から媒体に移してみましょう。まずは水からですね」

 握らされた水色の小石に魔力を注いでいく。やがてこれ以上は無理だと本能が警告した。

「はい、媒体に一杯になりました。これ以上こめると媒体が壊れますからね。では、媒体から水が出ると想像してください」

 ぱしゃん、と音をたてて、いつの間にかミリアの膝に乗せられていた皿の上に水が落ちた。水を、その次にシロエスを見上げると、「よくできました」と微笑んでくれた。


(あー、つまり媒体が変換のお手伝いしてくれてるのね。で、今、水が出たのが発生、と。ちょろっとしか出なかったのはあたしの魔力量が少ないから? それとも初めてでびくびくやってたから?)

 前世の生活で学生として学ぶことに慣れていたミリアは、シロエスの指導に疑問を抱くこともなく素直に従っただけだ。だが、こうまでスムーズにいくことは珍しいらしい。

「素晴らしく順調ですよ。魔力を流されるのに驚いたり、自分の魔力が沸き上がってもすぐに移動できない人が多いのです」

 ミリアの感覚ではシロエスは教師で、教えられることは素直にきくものだと思っている。また授業やテストなどの経験が集中力を養っていた。そしてファンタジーにつきものの魔法に馴染があったこと、既に修復という能力を使っていることなどが有利に働いたようだ。

「ではこの調子で続けていきましょう」


 その日、ミリアは水魔法を夕食の時間まで教わった。ミリアの魔力量では、やはり大量の水を発生させることは出来なかったが、小さな桶一杯くらいはなんとか貯められた。貯められた水を動かしたり、温度を上下させることも学ぶ。慣れれば凍らすことも熱湯にすることもできるようになるらしい。また多少であれば使用頻度により魔力量が増えることもあるとか。

(よし、お風呂のためにがんばるぞ!)

 シロエスは、明日は水魔術のおさらいと、火魔術の初歩を教えてくれると約束してくれた。

(火力の調整ができれば、前世の食べ物も作れるかも!?)

 ミリアの熱意は高まったまま、その日は興奮で寝付くまでに時間がかかった。

 

生活魔術を初級魔術に変更。

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