個人創作(物語の断片)鏡大作戦:あなたの姿はどんなもの?
「先生、あの人は何に怯えて死んだのでしょうか?」
「彼女は鏡に映る自分をみたのではないかしら」
「自分の姿ですか?」
「あの鏡はね、人の心の中の邪悪なものを映し出すといわれているの…そこに映し出されたものを自分だと思ったのかはどうかまではわからないけれども」
「先生があの鏡を贈ったのですか」
「あなたは私があの人を殺したと思うの?」
「…いえ、先生はやさしくありません。生きたままに地獄に突き落とすのが先生です。殺して終わり、なんてことはしません」
「あなたには私はどう映っているのかしら」
「もちろん、素敵な女性ですよ…自分にも他人にも厳しく、それゆえに恐ろしい人です」
「では私は無罪かしら」
「もしもあの鏡が本当にその人の邪悪なものを写して、それを見て死んだのなら先生に罪はありません…ただ」
「ただ?」
「あの鏡が本物だと知っていて贈ったのなら話はべつです」
「あなたは神秘的なことを信じるの?」
「信じません…それにたとえ本物だとしてもそれを見て死ぬかはどうか、命を落とすほど恐ろしいかはそれこそ確率の犯罪です」
「では、あなたの判決は?」
「僕は裁くつもりはありませんしまたその資格はありません…それに裁かれるべきはあの人の方でしよう」
「ねえ、あの鏡はまた私のもとに戻ってきたけれど、私はあの鏡にどんな姿で映ると思う?それにあなたは?」
「それはわかりませんし、知ろうとも思いません」
「ねえ、あの鏡はまた私のもとに戻ってきているのだけどいるかしら」
「いいえ、いりません。あの鏡はその価値に関わらず処分すべきだと思います」
「あの鏡に何か仕掛けがあるかもしれないのに?」
「それでもです」
先生と僕が、先生の愛した人と子供の墓にたどり着いたのは間もなくのことだった。
長くオリジナルを書いていないことからリハビリ的な意味合いをこめた物語。
本来はここに肉付けしてもう少し長いものにするのですが、とりあえず今回は短い物語を完成させることを優先させました。
少しでも楽しんでいただけると幸いです。