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4 貯蔵庫へ行きます

 シアとアリアは簡単に朝食を済ませると貯蔵庫に行って食料を

運ぼうということになった。

バターも野菜も肉も足りない。

貯蔵庫は地下にある。夏も冬もあまり室温が変わらないように

調整された貯蔵庫は領主館ならではのものだ。

ブラスト村は王都に比べるとかなり標高の高い所にある。

王都の海面からの高さは30エンくらい、ブラスト村は600エンくらいだ。

夏は涼しく過ごしやすいが、冬はとても寒い。雪も深い。

領主館は村からさらに高い位置にある。

100エンほど高いだろうか。

領主館からは村が一望できる位置にある。

大きな木は少なく、草地が広がる丘の上に領主館は建っている。


サムソ女王国は島国だが高い山はある。3000エンくらいのリューリ山を主峰とする

女神の山々と呼ばれる山脈があり、ブラスト村はその裾野にある。

古くは大きな街があり都市として栄えていたその場所は、火山の噴火により

灰の中に埋もれた。500年くらい前だと伝えられているが

正確には分からない。

おばあちゃん世代が子供のころに500年前と言われていたといい

今も500年前と言われる。プラス100年くらいたってない?

なのでよくわからない昔というあいまいな認識しかない。

それほど昔の石作りの街と領主または王の城が

埋まっている。

その上に作られた村がブラスト村、そして領主館だ。


サムソが女王国になってからまだ63年しかたっていない。

現女王アイリーダの祖母が女王国宣言をして王国は女王国となった。

その前までの王は男性であったが問題を起こす王が続いた。

先々先代の王はとてもやさしい人ではあったが

政務に無関心で側近と王妃が必死になって国を支えていた。

その前は側妃を30人も持ち遊興に明け暮れていた。

もちろん政務は放置。側近と王妃が頑張っていた。


アイリーダの祖母 先々代様は16才で成人すると父王に言った。

「お父様、次代の王は私です。結婚許可年齢になって王配を迎えた時に

王位をお譲りください。今のままではサムソは滅びてしまいます。」


側妃が30人もいれば王族の子も必然増える。

父王には兄弟姉妹が18人もいた。

正妃の子であった父王を王にしたのはその王妃。

降嫁した王家の姫を母にもつ従妹であった。

「私が国を支えます。結婚しましょう」

残り17人には大小の領地を与えて、王宮から追い出したのも正妃。

国の立て直しに尽力し、王を支えた賢妃と言われる。

女性が実は国を支えていることを見ながら育った先々代様が

自ら女王宣言をしたのは当然と言えば当然だった。


18才になって結婚許可年齢になると、王配を2人迎え女王に即位した。

その後王配は7人に増えたが。

王配は伴侶様と呼ばれて多岐に渡って女王を支えた。


17人も兄弟がいれば、王位簒奪をもくろむものだっていた。

おとなしく領主を務めたものはたったの5人。

あとは王配と女王によって粛清された。

女王にとっては叔父叔母にあたる人たちが命を狙ってくる。

反逆には粛清。その妻や子供、明らかに加担した貴族や家臣。

多くの命が奪われた。

そんな中ブラスト村は作られた。


最初は罪人が送り込まれた。

死罪をまぬがれた血族や子供たち。

命令に逆らえず加担した家臣たち。

牢に閉じ込めて置くのも金がかかり過ぎるのだ。

政治から切り離した所で自活してくれれば一番いい。

貴族として何もかもを他人まかせだった優雅な生活を取り上げ

畑から作物を得て食事を自分で作る。宝飾品も豪華なドレスも

高価な美術品も家具も取り上げられ家名も剥奪。

ただ人として生きる。充分な罰だと思われた。


小さな小屋を建てる。開墾して畑を作る。果樹を植える。

幸いなことに水が豊富で温泉も湧いたので水の心配はせずにすんだ。

王配の中にブライという探査と転移の天才がいた。

この土地に街が埋まっていることはわかっていたので、探査で探りながら

使えそうな石材を地表に転移で掘り出し、かつての街の上に

村は作られた。


なのでまだ地下には膨大な量のがれきというか資源が眠っている。

崩れた建物がほとんどだったが、無事な建物もあって、そこは貯蔵庫として使われていた。

領主館の下に埋まっているのは、かつての城だったであろうことから

丈夫だったらしく貯蔵庫にする空間がたくさんあるのだ。

巨大倉庫(もとは城)の上に領主館は建っていた。


「また何もないねぇ」

シアはため息をつくと、小さな紙を取り出して書き出していった。


バター  チーズ  塩漬け肉  果物 野菜 パン


「全部でいいと思う」

アリアがメモをのぞき込んでつぶやく。

「昨日ね、使い切って明日、つまり今日ね取りに行こうと思ってたの」

「まあそうだね、テーブルの上を片付けておいて、()ばすから」

「はーい」

アリアが一人で行けば、籠を持って行きなんども運ばなければならないが

シアがいれば()ばしてくれる。

心の中で(やった)と喜ぶ。

「アリアがやるんだよ、練習させてあげるからね」

「ええっ」

アリアは魔力は多い、けれど小さい力を使うのは苦手だ。

器用ではない。シアがいつもの説教をはじめる。


「練習して小さな丸を作れるようにならないと魔法禁止を解かないよ。

アリアの魔力は多いけど不器用すぎて危険だからね。

数字で言うなら普通は1から10だとすると、たぶん僕は200くらい、

アリアはぼくより多いから

腕輪とかとっちゃったら読めないけど300は軽く超えてると思う。

300分の1の魔力を使って細かいことするのは大変なんだ。

僕もそうだったからね。

でも覚えないと、洗濯だってできない。

家事魔法は生きてく上でどうしても必要なんだ」


10才を過ぎたころから精密に力を使う訓練を繰り返している。

少しづつではあるができることが増えてきた。

腕輪に預けた魔力で明かりをつけたり、スープを温めたりは出来るようになった。

でもまだ足りない。転移の力。アリアが一番得意であり

最も大きな力を使える転移。

アリアの転移は生き物以外を丸いボールのような真円にくるみ

他所へ()ばすことだ。どのくらいの大きさの丸を作れるのか

どれほどの距離を()ばせるのかは未知数。

シアが付き添って試みを何回もしているが限界はみていない。


領主館のまわりには10個の池がある。

アリアの魔力の実験で出来た池だ。大きなものは直径50エンほどある。

大小の丸池はシアが水路で繋ぎ、魚が飼われている。

ブラスト村は地下水が豊富であちこちで水が湧くのですぐ池になった。

今は氷が張り、雪に埋もれているが。


()ぶよ。おいで」

アリアはシアに抱きついた。

「アリアの心はどこにある?」

「シアのもとに」

転移の呪文、シアとアリアだけの秘密の言葉。

シアは生き者も転移させることが出来るが意識のあるものは

転移が難しい。転移する行き先を曲げられてしまうからだ。

意思の力で()ぶので同行者がとんでもない場所を

望んでいた場合事故が起きる。


アリアはシアの望む行先を自分の行先としてすべてを

預けてくる。それでも雑念が入ることもあるので

呪文を決めた。

そのすべてをシアにゆだねた瞬間に転移する。

その為に。



1エンは1メートル 1センは1センチメートル

土木用語ですが今も使われているかは確認していません。

あまりかけ離れた設定はわかりにくくなると思いますので

読みやすく で いきたいと思います。

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